ゾウも人間のように互いに「名前」を付け、相手を呼ぶ時に使うという研究結果が出た。イルカやオウムが他の個体の音を真似て互いを呼ぶのは観察されたことがあるが、独特の鳴き声を名前のように使うのは人間以外の動物の中でゾウが初めて。
英ガーディアンなど海外メディアは10日(現地時間)、米コロラド州立大学のマイケル・パルド博士と研究チームが、ケニアの国立公園で録音された36年分のアフリカゾウの鳴き声を人工知能(AI)アルゴリズムで分析した結果、ゾウたちが名前のような個別の鳴き声で呼び合っていることを発見したと報道した。今回の研究結果が書かれた論文は国際学術誌「ネイチャー生態学および進化(Nature Ecology & Evolution)」に掲載された。
報道によると、研究チームはゾウの群れの間でのコミュニケーション方法を調べるため、ケニアのサンブル国立保護区とアンボセリ国立公園で1986年から2022年まで録音されたアフリカゾウの鳴き声を分析した。今回の論文の共同著者であり、ゾウの鳴き声のデータを提供したゾウ研究団体「エレファントボイス」(Elephant Voices)のジョイス・プール博士は「数年前からゾウ一頭がシグナルを送ると、群れの中の他の一頭が頭を上げて答えることを発見したが、答えたゾウ以外はその音を無視しているように見えた」とし、「私たちはその呼びかけが特定の個体に向けたものなのか気になった」と、科学雑誌「ニューサイエンティスト」に語った。
ゾウは鼻を使った大きな鳴き声から、うなる音、人の耳には聞こえないほど低い鳴き声まで、多様な音を出すことができる。エレファントボイスがコロラド州立大学に提供した600本以上の録音ファイルには、ゾウが互いに遠く離れている時の鳴き声、あるゾウが同僚に近づく時に聞こえる挨拶の声など、様々な鳴き声が含まれていた。
研究チームは録音データで計469個の独特な泣き声を識別し、AI・機械学習(大量のデータを利用してパターンを分析し、状況を予測する技術)を通じて鳴き声の発信者と受信者を特定することができた。こうして得たデータで17頭のゾウに自分の名前に当たる鳴き声を聞かせると、ゾウたちは自分を呼ぶ音により強く反応した。名前を聞いたゾウたちは、スピーカーにより早く近づき、応答の声を出すなど、より多くの反応を示した。しかし、同じゾウに他のゾウの名前に該当する鳴き声を聞かせた時は反応がはるかに少なかった。
ところが、ゾウがいつも呼ぶ音を使うわけではなかった。主に大人のゾウが遠い距離にある幼いゾウを呼ぶ時や、大人のゾウが互いを呼ぶ時に使われた。これについて研究チームは、名前を呼ぶのも数年間の学習が必要なためだと推測した。論文の主著者であるパルド博士は「今回の研究はゾウが個体ごとに特定の発声を使うだけでなく、他のゾウを呼ぶ音と自身を呼ぶ音を区別することを示している」とガーディアンに説明した。
ただし、複数のゾウが特定の個体に対して同じ名前を使用するかどうかは明らかになっていない。ゾウごとに相手を呼ぶ名前がそれぞれ違うこともありうるということだ。プール博士は「ゾウごとに互いを呼ぶ独特のニックネームがあるかもしれない」とし、「まださらに多くの研究が必要だ」と述べた。