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「今日の夕食何にする?」ゾウも好みで「メニュー」選ぶ

登録:2023-07-07 03:43 修正:2023-07-07 05:10
[アニマルピープル] 
雨季には草、乾季には木を求めるが 
群れの中では地位や好みによって餌に違い
ケニアの国立保護区に住むゾウの2つの群れの食事を分析した結果、食事を共にした家族の間でも、食べる物は個体間で差があることが分かった=ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 パンダは笹を食べる。コアラはユーカリの葉を主食とする。ではゾウは?

 ゾウが草食動物であることはよく知られている事実だが、正確にどんな植物を食べるのかを明らかにすることは、これまで容易ではなかった。野生のゾウは木の葉、実、枝などの様々な形態の植物を食べるが、近くで観察するのが難しいだけでなく、主に夜に、あるいは茂みで食べるからだ。

 米国のブラウン大学は5日(現地時間)、タイラー・カチネル教授(生態学科)をはじめとする国際研究チームが、これまでは観察の難しかったゾウの食習慣を詳しく分析し、群れ内の個体がどのような植物を食べるのかを突き止めたと発表した。研究者たちは、同じ群れのゾウでも異なる植物を食べることを発見した。

 同大学は、今回の研究はゾウの食習慣と餌探しの行動パターンを明らかにすることで、絶滅の危機に瀕するゾウの保護に役立つと語った。論文は英国王立協会の「Royal Society Open Science」に掲載された。

 研究者たちは、ケニアのサンブル国立保護区とバッファロースプリングス国立保護区に住む2つのグループのゾウを研究対象にした。それぞれ「王族」と「芸術家たち」と名付けられた2つのグループは、ケニアの「エワソンギロ川」を挟んで生息している。両グループはそれぞれ4~5頭のおとなのメスを主軸とする家族だ。研究者たちは食事と採集履歴を各グループごとに、また同じグループ内の構成員ごとに比較してみた。

 彼らはゾウが正確に何を食べているのかを調べるために、最先端の遺伝子技法でゾウの糞や体毛を分析したほか、GPSで移動経路などを調べた。今回の研究のために、ゾウの糞と毛から抽出した餌のDNAと既存の植物データベースを対照する「DNAメタバーコーディング」という新技術も開発した。

 分析の結果、ゾウが好んで食べた植物はシソ科、マメ科、アカシア属、キク科、木本植物、ユリ科、アオイ科などだった。これらの植物は王族と芸術家の両グループで70%以上を占めた。

 ところが、夕食を共にしていても「献立」は各ゾウごとに大きな違いを示した。糞を分析したところ、ゾウはそれぞれ平均で60~70種の植物を摂取しており、137種を食べた個体もいた。研究者たちは、群れ内の社会的地位や妊娠しているかなどによって食べる植物に違いがあったと明らかにした。

 研究者たちは20年あまり前にも、非営利のゾウ保護団体「セーブ・ジ・エレファント(Save the Elephant)」との協力で得られたゾウの糞と毛を分析し、ゾウたちが雨季には草を食べ、乾季には木を食べていることを明らかにしている。今回の研究では、このような季節的パターンは同じだったが、乾季より生物多様性が際立つ雨季の方が、ゾウごとの献立の違いが顕著だった。

ゾウたちは乾季には木に接近し、雨季には主に草を食べるという季節的パターンを示したが、各個体の食べる植物の種類は多様だった=ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 カチネル教授は「今回の研究では、資源が限られる中で野生動物がどのように社会的関係を結び、群れを形成するのかを説明できる」と語った。そして「ゾウはみな同じ植物を食べているように見えるが、実際には個々の好みと生理的必要に応じて様々な餌を取っていた。これは群れの中で餌をめぐって争うために押し合ったり独立的に競争したりする必要がないということを示している」と説明した。

 研究者たちは、今回の研究はゾウの保護にも役立ちうると語った。カチネル教授は「動物は必要な餌が十分に得られなければ、生存はできたとしても繁栄は難しい。ゾウが群れで食事しながらも互いの好みが異なるということは、各個体が何を食べているのかについての理解を深め、ゾウ、サイ、スイギュウのような大型の草食動物をよりうまく管理し、持続可能なやり方で保護する助けとなるだろう」と話した。

キム・ジスク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/animalpeople/wild_animal/1099021.html韓国語原文入力:2023-07-06 16:13
訳D.K

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