長期的な人口の流れを予測するのに主要に利用する指標として合計特殊出産率がある。女性が可妊期(15~49歳)の間に産むと期待される子ども数を意味するものだ。
現在の人口水準を維持するためには、合計特殊出生率が2.1人にならなければならない。そのため、人口置換水準(replacement-level fertility)とも呼ばれる。合計特殊出生率がこれより高ければ人口が増加し、低ければ減少する。
世界で合計特殊出生率が最も低い韓国は2023年末現在0.72人で、人口置換水準の3分の1に過ぎない。時間が経つほど急激な人口減少を予告する数値だ。
現在、世界平均合計特殊出生率は人口置換水準を少し上回るレベルだ。しかし、各国の出生率が予想より速く低下しており、2030年には世界の平均合計特殊出産率が人口置換水準の2.1人以下に下がるという見通しが出た。これは、20世紀以降、急激に増加してきた世界人口の流れが変わる転換点が、わずか6年後に迫っていることを意味する。
米国ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)は1950~2021年、世界204カ国の人口統計資料を分析した結果、2021年基準で2.23人である世界の平均合計特殊出生率が、2030年から人口維持水準(2.1人)を下回り始め、2050年1.83人、2100年1.59人まで低下すると予測されたと、医学分野の国際学術誌「ランセット」に発表した。
韓国、世紀末までに合計特殊出生率1人未満になる見通し
今回の予測は、国連人口部が2022年の人口報告書で示した2056年、今年初めにオーストリアのウィトゲンシュタインセンターが予測した2040年より、はるかに早い。研究陣は、国連が定めた持続可能な開発目標(SDG)に合わせて適切な教育と避妊政策を施行し出産奨励政策を施行しても、合計特殊出産率は2050年に1.65、2100年には1.62人で、人口置換水準にはるかに及ばないと見通した。
研究陣は今回の予測のため、これまでの学歴、避妊薬の接近性の他に、居住地の人口密度、5歳未満死亡率などの変数を加え新たなモデルを作った。
研究を率いたクリストファー・マレー所長は「年が経つにつれ出産率が予想より速く低下していることが明らかになっている」とし、今回の予測さえも慎重なものかもしれないと語った。最近、インドに世界人口1位の座を明け渡した中国の場合、予想より10年早い2022年初に人口減少事態を迎えた。
研究陣は、合計特殊出生率が人口置換水準を上回る国は、2021年現在94カ国から2050年に49カ国に減り、2100年にはサハラ以南の途上国3カ国を含め、6カ国に急激に減少すると予測した。
研究陣が示した韓国の合計特殊出生率の見通しは、実に衝撃的だ。2050年はもちろん、2100年にも合計特殊出生率が0.82人で、世界最低出生率の国から抜け出せないと見通した。最も楽観的なシナリオでも2100年に0.95人で、世紀末まで合計特殊出生率が1.0人を越えない唯一の国になると予想した。調査当時の2021年に26万9千人だった出生児数は2050年に18万人、2100年には6万人台に下がると予測された。2023年の韓国の出生児数は23万人だ。
少子化と多子化がもたらすリスクとは
もちろん、合計特殊出生率が人口維持水準を下回るからといって、直ちに人口が減少するわけではない。低下した出生率が反映されるためには、人口再生産期間、すなわち30年の時間がさらに必要だ。
国連人口部の人口推定および見通し部門の責任者、パトリック・ゲラン氏は急激な出生率の低下の問題点として「このような傾向が世界を若者人口が減る少子化国と急増する高齢者人口を扶養する多子化国に二分している」という点を強調した。
同氏は、高齢者の扶養負担が急増する多子化国が主にサハラ砂漠以南の貧しいアフリカ諸国だという点を挙げ、「これらの国の人口増加は国家発展の障害になりかねない」と指摘した
研究に参加していないドレクセル大学のアレックス・エゼ教授(保健学)は「転換点がいつ来ても出生率の格差が開けば、他の格差も拡大する可能性がある」と懸念した。例えば、出生率が人口置換水準以下に低下するのは、高所得少子化国の場合、労働力不足と医療システム、社会保障プログラムを圧迫する。一方、出生率の高い低所得国は、増える人口を支える健康、福祉、教育投資財源が不足し、世界経済の舞台でさらに遅れを取る恐れがあると、懸念を示した。
*論文情報
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(24)00550-6
Global fertility in 204 countries and territories, 1950-2021, with forecasts to 2100: a comprehensive demographic analysis for the Global Burden of Disease Study 2021.