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韓国型ロケット「ヌリ号」2回目打ち上げ、1回目と何が変わるのか

登録:2022-06-13 06:22 修正:2022-06-13 07:25
15日午後4時、打ち上げ予定…14日の天候が変数 
3段目のヘリウムタンクを確実に固定し、マンホールのふたを補強 
今回は性能検証衛星と小型衛星を搭載して飛行
6日、全羅南道高興郡峰来面の羅老宇宙センターの衛星準備棟で、研究スタッフが性能検証衛星をヌリ号に搭載するために移動している=韓国航空宇宙研究院提供//ハンギョレ新聞社

 昨年10月に未完に終わった韓国型ロケット「ヌリ号」が、15日午後4時、全羅南道高興郡峰来面(コフングン・ポンレミョン)の羅老(ナロ)宇宙センターから2回目の打ち上げが行われる予定だ。2回目のロケットは、1回目に比べ構造の変更や部品の補強などにより重量が9キログラムほど増え、実際に作動する人工衛星を搭載して飛行することになる。ただし、天候が変数となりうる。

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1回目の失敗の対策で重量が9キロ増

 12日の韓国航空宇宙研究院(航宇研)の説明を総合すると、今回の2回目の打ち上げ時には、昨年10月21日にヌリ号が「異常飛行」をした原因の対策が講じられている。ヌリ号の目的は、1.5トンの衛星を低軌道(600~800キロメートル)に投入可能なロケットの技術を確保することだ。ヌリ号の1回目の打ち上げの際の成功目標は、衛星を高度700キロメートルに秒速7.5キロメートルで投入することだった。

 しかし、ヌリ号は、1段目の分離とペアリング分離、2段目の分離までは正常に進行したが、3段目の7トン級エンジンが目標である521秒のあいだ燃焼できず、46秒不足の475秒で終了した。そのため、衛星の速度が秒速6.8キロメートルしか出ず、落下してしまった。

 科学技術情報通信部(科技情通部)と航宇研は、「ヌリ号発射調査委員会」を構成し、合計2600個ほどのテレメトリー(遠隔資料伝送装置)のデータを分析して解析した結果、ヌリ号の飛行中の振動と浮力によってヘリウムタンクに加えられる液体酸素の浮力が上昇したことにより、下部の固定装置が外れ、ヘリウムタンクが離脱したことが一次原因だと推定した。この離脱したヘリウムタンクが動き続け、タンクの配管を変形させ、ヘリウムが漏洩し、さらに酸化剤のタンク上段と衝突して亀裂が生じ、酸化剤も漏洩して3段目のエンジンに注入される酸化剤の量が減り、エンジンが早く消えたということだ。

 航宇研の韓国型飛翔体開発事業本部のコ・ジョンファン本部長は、「状況を分析するためにはデータが足りず、映像もない状態だったため、事故を再構成するには困難があった」と述べた。航宇研は、データ分析と想像力を動員して把握した原因の分析の妥当性を検証するため、地上で再現実験を行った。極低温ヘリウムタンクを液体窒素に浸して離脱する状況を再現した結果、非常に低い浮力でも離脱が発生することを確認した。

 航宇研は、調査結果をもとに、ヘリウムタンク下部の支持部の固定装置が強化されるよう設計を変更して補強し、マンホールのふたの厚さを増やすなどの補強作業を4月に完了した。ロケット体系開発部のチャン・ヨンスン部長は、「構造の変更と部品の補強により、9キロ程度重量が増えたが、ロケット設計時に想定していた性能のマージン(余裕)は超過していない」と説明した。

ヌリ号の2回目の打ち上げ時に搭載される性能検証衛星の搭載機器と小型衛星=韓国航空宇宙研究院提供//ハンギョレ新聞社

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5つの搭載機器と4基の小型衛星を搭載し飛行

 ヌリ号の2回目の打ち上げと1回目の打ち上げで最も大きく変わる点は、モデル衛星だけでなく、実際に作動する人工衛星を搭載して飛行するという点だ。今回のヌリ号には、性能検証衛星と大学で製作した小型衛星4基が搭載される。

 ヌリ号の1回目の打ち上げの際には、1.5トンのモデル衛星だけが搭載されて発射された。今回は、モデル衛星とともに、168キログラムの性能検証衛星と4基の小型衛星が搭載される。その代わり、モデル衛星の重量は設計重量に合わせるために1.3トンに減らした。

 モデル衛星の上端に設置される性能検証衛星は、衛星製造企業のAP衛星が開発した。性能検証衛星の任務は、ロケット投入性能の検証、小型衛星の射出、宇宙核心技術である搭載機器の検証テストなどだ。搭載機器には、韓国原子力研究院が開発した発熱電池(ETG)、ベンチャー企業ジャステックが開発した制御モーメントジャイロ(CMG)、アンテナ企業のEMWが開発したSバンドアンテナなどとともに、小型衛星発射管や小型衛星射出の映像撮影装置(VCS)など5つが装着される。発熱電池は今後、2030年頃に予定される月着陸船に適用可能な技術で、他の搭載機器も重要な宇宙技術を開発するための装置だ。

 性能検証衛星には、朝鮮大学、ソウル大学、延世大学、韓国科学技術院(KAIST)で製作された4基の小型衛星が装着される。合計3U~6U程度の小型衛星で、重さが10キログラム以下の「ミニ衛星」だ。1U小型衛星は、横、縦、高さが10センチメートル、重さ1.33キログラムの超小型の人工衛星を指す。小型衛星の寿命は6カ月から1年だ。

 ヌリ号が打ち上げられ、3段目が目標軌道(700キロメートル)に到達すると、まず性能検証衛星が分離する。それから70秒後にモデル衛星が離れる。分離した性能検証衛星の太陽電池パネルが太陽を向くなどして想定の場所につくと、それから2日間隔で小型衛星の分離が行われる。15日に予定通りヌリ号が打ち上げられると、23日に朝鮮大学製、25日にKAIST製、27日にソウル大学製、29日に延世大学製の順で小型衛星が分離する。性能検証衛星には、小型衛星のモデル衛星も搭載されるが、それも射出されれば、性能検証衛星は7月頃から搭載機器の検証テストなど2年間の本格的な任務遂行に入る。

 衛星宇宙探査体系設計部のアン・サンイル責任研究員は、「小型衛星を射出する際、性能検証衛星の体勢に影響を与えるため、元の位置に戻るための十分な時間を確保するよう、2日間隔で射出する」と説明した。

8~9日の2日間、ヌリ号の1段目、2段目、3段目の最終結合作業が羅老宇宙センターロケット組立棟で行われた=韓国航空宇宙研究院提供//ハンギョレ新聞社

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15日の打ち上げの可否は14日の天候が変数

 韓国型ロケット開発事業は、2010年3月に始まり、来年6月まで行われる。総事業費が2兆ウォン(約2100億円)に達する長期大型事業だ。韓国型ロケット「ヌリ号」は3段で構成されており、これまでに、1段目と2段目に使われる75トン級液体エンジンと7トン級液体エンジンを純国産技術で開発した。2018年に75トン級エンジン1基で構成された試験ロケットを打ち上げ、エンジン性能を検証し、昨年10月に3段で構成されたヌリ号の1回目の打ち上げを行ったが、正常軌道への投入に失敗した。

 現時点では、ヌリ号は15日午後4時に打ち上げが予定されている。打ち上げ日は13日午後に開かれる「飛行試験委員会」で最終決定がなされ、正確な打ち上げ時刻は当日午後に最終発表される。しかし、多くの変数を点検しなければならず、小さな故障や間違いもあってはならないため、打ち上げの日付と時刻は常に変更される可能性があると航宇研は説明した。

 天候は2回目の打ち上げの最大の変数に挙げられる。気象庁は12日、14日午前に高興郡峰来面に雨は降らないと予報した。ヌリ号は、打ち上げ前日の14日午前7時20分から1時間ほどかけてロケットの総合組立棟から移動車両(トランスポーター)に載せられ発射場まで移送される予定だ。チャン・ヨンシン部長は「ヌリ号を打ち上げる際には雨水などが侵入しないよう密閉されており、問題にならない。しかし、ロケットを発射場に移す際、路上がぬれて坂道に転がることもありえるため、安全問題が発生する可能性がある」と述べた。

 気象庁のパク・ジョンミン報道官は「現地の気象状況を綿密に分析している。状況の変化が生じた場合、関係機関に随時気象情報を提供し、メディアを通じても発表する予定」だと述べた。

イ・グニョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1046626.html韓国語原文入力:2022-06-12 13:55
訳M.S

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