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韓国初の月探査船「タヌリ号」…アポロ11号では3日の道を4カ月かけて行く理由

登録:2022-06-07 10:10 修正:2022-06-07 10:58
[一問一答で解くタヌリ号の謎] 
米国に移送して打ち上げる韓国初の月探査機「タヌリ号」公開 
12月31日、月の軌道に進入
8月に打ち上げを控えた韓国初の月探査船「タヌリ号」が最終点検を受けている=韓国航空宇宙研究院提供//ハンギョレ新聞社

 韓国初の月探査船「タヌリ号」が移送前の仕上げ作業を終え、3日にマスコミに公開された。

 タヌリ号は特殊製作されたコンテナに載せられ、7月5日に米フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地に移送され、8月3日午前8時20分に宇宙へと打ち上げられる予定。4カ月半後の12月31日、月の高度100キロメートル軌道に進入し、6つの搭載物を利用して1年のあいだ科学研究の任務を遂行する。国内初の月探査機であるタヌリ号について、一問一答で解説する。

-約50年前に月に着陸したアポロ11号は3日で月に到着しました。タヌリ号が月の軌道に到着するのに4カ月以上かかるそうですが、 なぜそのように長くかかるのでしょうか。

「月へ行く経路は大きく3つあります。月まで『直進』する直接遷移軌道、地球の軌道を回りながら高度を徐々に高めて月の軌道に進入する位相遷移軌道、そしてBLT軌道です。今回タヌリ号が選んだ経路は3つ目のBLT軌道です。この軌道は、地球や太陽などの天体の重力を利用し、エネルギーを最小化します。いわば、天体の引き寄せる力を利用して回るのです。タヌリ号は地球の重力を利用して回り、月の軌道を過ぎて最大156万キロメートル地点まで行き、再び月の軌道に戻る予定です。ちょうどリボン状にぐるぐる回っていきます。それで4カ月半かかるのです。直接遷移軌道、位相遷移軌道より飛行時間が最大で2カ月以上かかりますが、燃料の消耗は25%ほど節約できます」

-あえてこの方式を選んだ理由は?

「もともとはよく使われる位相遷移軌道で行こうとしていました。ところが、米航空宇宙局(NASA)が「シャドーカム」という陰影カメラをタヌリ号に搭載したいと要請してきました。ところがこれがちょっと重いんです。シャドーカムを搭載したことで全体の重量が550キロから678キロに変更になりました。それで少々回り道をすることにしたのです。シャドーカムは、太陽の光が届かず私たちがこれまで見ることのできなかった月の『永久影』を撮影できると期待されています」

韓国初の月探査機は燃料の消耗を最小化するため、天体の重力を利用して月まで遠回りしていく経路を選んだ=韓国航空宇宙研究院提供//ハンギョレ新聞社

-米国の装備を搭載したために回り道だなんて、少々惜しくないですか。

「必ずしもそうではありません。NASAは、私たちにタヌリ号と交信する衛星データを提供します。しかもシャドーカムはかなり大きな科学的成果をもたらすことができます。韓国航空宇宙研究院の関係者は、3日のタヌリ号のメディア公開の場で「韓国と先進国の技術の差を解消する最も良い方法は協力だ」とし「NASAとの協力を通じて、深宇宙の探査へと乗り出す契機となるだろう」と述べました。深宇宙は月の外のはるかな宇宙のこと。今回、韓国としては一番遠い宇宙に行くことになるんです」

-発射体は何を使うのですか。

「イーロン・マスク氏の民間宇宙企業『スペースX』が作った『ファルコン9』に搭載され宇宙へと旅立ちます。ファルコン9は再使用可能ロケットとして有名ですね。すでに5回も人工衛星などを打ち上げて戻ってきており、今回6回目の任務としてタヌリ号の打ち上げを担います。合計15回ほど使用可能というので、まだ古くはありません」

-BTS(防弾少年団)の曲を載せるという報道がありました。

「まだ決まったわけではありません。4月に記者団との質疑応答で明らかにしたアイディアですが、担当機関である韓国電子通信研究院が、BTSの企画会社側と音源著作権や受諾の可否などについて協議しなければなりません。音源を持っていく理由は、宇宙インターネットサービスを研究するためです。タヌリ号にはDTN(遅延耐性ネットワーク)装備が搭載されたため、宇宙から地球に音楽を伝送する実験をする予定です」

-映画で見ると、NASAの中央管制センターがありますね。タヌリ号にもそのような管制センターはあるんですか。

「韓国航空宇宙研究院の『任務運営センター』がその役割を果たします。バックアップ要員を含め60人が働き、タヌリ号の軌跡修正の起動、軌道進入の起動など、タヌリ号の『運航』を担当することになります」

米国の月探査「アルテミス計画」で月着陸船として使用される予定のスペースXの「スターシップ」構想も。再使用が可能な月探査宇宙船だ=米航空宇宙局(NASA)提供//ハンギョレ新聞社

-米国の有人宇宙船アポロ11号が月に着陸して50年がたった今になって、なぜ月探査に取り組んだのでしょうか。

「今回韓国が成功すれば、韓国は月に到着した7番目の国になります。最近、米国をはじめ中国、インド、日本などが月探査に熱を上げています。2013年、中国は米国と旧ソ連に続いて月着陸に成功して以来、月探査に邁進しています。米国は超大型月探査プロジェクト「アルテミス計画」を進めています。このように月探査を行うのは、まず月にはヘリウム3とウランなどの資源が埋蔵されているから。次に月探査が深宇宙探査のために通るべき道だと考えるからです。火星に行くなら、月には軽く行き来するようにならなければ」

-任務を終えたらタヌリ号はどうなるのでしょうか。

「月の軌道に進入したタヌリ号は高度100キロメートルで月を回りながら、6つの搭載物で科学任務を遂行します。月を一周するのに約2時間ほどかかると予想しています(月に着陸するのではありません)。このように1日12回にわたり月を回って、1年間任務を遂行するのですが、燃料が残れば追加の任務を遂行することもあり得るそうです」

ナム・ジョンヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/science/technology/1045858.html韓国語原文入力:2022-06-06 16:53
訳C.M

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