[監督やプロデューサーらが語る俳優ユン・ヨジョンの魅力]
『女優たち』のイ・ジェヨン監督「年輪から醸し出されるユーモアが魅力的」
『浮気な家族』のイム・サンス監督「年齢を超えてつねに挑戦」
『勝手にしやがれ』のプロデューサー「対応が柔軟で相手役を生かす演技」
『チャンス商会』のカン・ジェギュ監督「後輩を叱っても後腐れはない」
『チャンシルさんには…』のキム・チョヒ監督「映画を諦めないように導いてくれた」
ユン・ヨジョン「在米韓国人2世の映画に参加し、やりがいを感じた…すべてに感謝」
「マネージャーは泣いたけど、私は(頭がぼうっとして)涙が出なかった。(自主隔離で)マネージャーと二人だけで(ノミネートを)祝うつもりだが、マネージャーはお酒が飲めないから私一人で飲まなきゃ。マネージャーは私がお酒を飲むのをただ見ているだけ」
ユン・ヨジョンらしく率直で愉快な感想だ。彼女はオンライン動画サービス(OTT)アップルTVプラスのドラマ『パチンコ』の撮影のために訪れたカナダから今月15日に帰国した1時間後に、アカデミー助演女優賞にノミネートされたというニュースを聞いた。そしてこのような感想を残したと、AP通信が報じた。
ユン・ヨジョンは感情を表には出さない。その代わり、ウィットに長けた言葉をぽんぽん投げかけ、相手の緊張をほぐし、笑わせる。以前は多少近寄りがたく、都会的なイメージが強かったが、ナ・ヨンソク・プロデューサーのバラエティ番組「花より姉さん」や「ユン食堂」、「ユンステイ」などで、情感あふれるユーモラスな姿が知られるようになり、若者にも親しまれるようになった。
このような彼女の魅力を早くから見抜いていたのは映画監督たちだ。イ・ジェヨン監督は2008年、ユン・ヨジョンに初めて会った。イ監督は「個人的にはファンだったが、実際会ってみると、自分を含め多くの人が彼女についてあまりにも知らなかったことに気づいた」と語った。「歳月と年輪から醸し出されるユーモアが興味深かった。こういう魅力を人々に知らせたいと思って企画した映画が『女優たち』(2009)でした」。世代の違う女性俳優6人が集まり、台本なしで即興演技を繰り広げるフェイク・ドキュメンタリーは、ユン・ヨジョンにとっても挑戦であり、冒険だった。しかし、出演を快諾し、撮影を楽しんだという。
ユン・ヨジョンのチャレンジ精神は早くから発揮されていた。イム・サンス監督は映画『浮気な家族』(2003)の浮気性の義母役にユン・ヨジョンをキャスティングした。「ほかの俳優たちは『(役の)キャラクターが強すぎる』と断ったが、ユンさんは『面白そう』と承諾しました。その後、『ハウスメイド』や『蜜の味 テイストオブマネー』など型破りな作品にも快く出演してくださいました。私は彼女を“若い”と表現したいです。年齢と関係なく、新しいこと、やったことのないこと、よく知らなくても監督を信じてやってみる冒険精神の持ち主ですから」
撮影現場でも彼女は相手を配慮し、ユーモアを忘れない。ドラマ「勝手にしやがれ」(2002)などを演出したパク・ソンス元文化放送プロデューサーは「相手の演技に沿って柔軟にリアクションすることで、相手役の俳優(の演技を)を生かせてくれる」と話した。映画『チャンス商会 初恋を探して』(2015)を演出したカン・ジェギュ監督も「大先輩なので私やスタッフたちも緊張していたが、冗談も飛ばし、食べものを配ったりして、気さくに振る舞ってくれた。後輩の俳優が遅れたり、ミスをしたときは厳しく叱ることもあったが、後腐れのない人」だと伝えた。
1980年代半ばに歌手チョ・ヨンナムと離婚した後、生活のために再び演技を始めたユン・ヨジョンは後日、インタビューで「食べていくために命をかけて演じた。子どもを育てなければならなかったから、とんでもない死に方をする役や到底理解できないストーリー展開のドラマも引き受けた」と、当時を振り返った。しかし、子育てから解放された60歳以後は、好きな人たちとやりたい作品だけを選んで出演している。イム・サンスやイ・ジェヨン、ホン・サンスなど、一度縁を結んだ監督らとの仕事を続ける傾向がある。
イ・ジェヨン監督の映画『バッカス・レディ』(2016)で高齢者を相手に売春を行う「バッカスおばあさん」を演じたのもそのためだ。イ監督は普段からユン・ヨジョンと話し合いながら、老いと死についてじっくり考えたうえで映画を構想した。型破りのテーマであるうえ、低予算だったため、出演をためらってもおかしくない映画だったが、ユン・ヨジョンはイ監督を信じてもう一度挑戦に出た。その結果、国内外の映画祭で主演女優賞を受賞する成果を成し遂げた。
「60歳を過ぎてからは笑って生きることにした。以前は生計型俳優だったので、作品を選べなかったが、今は好きな人たちの映画にはお金をもらえなくても出演している。好きな作品を選べるのが私にとっては贅沢だよ」。ユン・ヨジョン『チャンシルさんには福が多いね』(2020)のキム・チョヒ監督に聞かせてくれたという話だ。ホン・サンス監督の映画プロデューサーとしてユン・ヨジョンに会ったキム監督は、「最初はよそよそしかったが、ユンさんを手作りの食事でもてなしたことをきっかけに親しくなった。私が映画をやめようとした時も諦めないように導いてくださった」と話した。ユン・ヨジョンはキム監督の短編『山菜娘』(2016)に続き、長編デビュー作『チャンシルさんには福が多いね』にもノーギャラで出演した。
ユン・ヨジョンのこのような態度は『ミナリ』でも現れた。普段から親しいイ・イナ・プロデューサーの紹介でシナリオを読み、監督の真心を感じ取り、劣悪な環境であることを知りながらも快く出演を決めたのだ。その結果、予想もしなかったアカデミー賞にノミネートされた。ユン・ヨジョンは16日、所属事務所を通じてこのような感想を伝えた。「在米韓国人2世たちが作る小さな映画に、大変だったけど、やりがいを感じながらかかわることができたと思っていましたが、このような嬉しい瞬間を迎えることになりました。映画のシナリオを私に渡し、監督を紹介し、その責任感で今日まで共にしてくれる友達のイ・イナ・プロデューサーに感謝します。心に余裕が生まれたら、感謝の気持ちが芽生えるようです。余裕がない時には恨みばかり抱くようになりますけどね。私にも余裕が生まれたみたいです。これまでのすべてに感謝します」