中国、フランス、米国、日本に支配された歴史を持つベトナムと、日本の統治を受けた韓国。韓国の西海からベトナムの東海につながる東シナ海を間に置いた両国は、妙に似ていた。植民地解放後、イデオロギーの対立による南北分断と戦争を体験し、革命と戦争の時期に体験した苦痛は、世代を越えても深く根をおろした。
東学農民軍を扱った長編小説『椿』(2014)を通じて、歴史を記録し振り返る文学を見せてくれた作家のチョン・ジヌ氏は、新作『あなたの川』で似ている点の多い両国の話を、縄を結うかのようにより合わせ、苦痛の歴史を見せる。合計22章で構成された小説は、偶数章では韓国、奇数章ではベトナムの話が、交差して繰り広げられる。
1946年にフランス軍がハノイを再侵攻した時、戦争で末息子のクァンを失った地主のオ・ディン・ミンは、外勢も革命政府も信じられない。「愛国地主」という評判は、ある時は“得”であり、ある時は“毒”だった。フランス統治下では教師であり、米国の庇護を受けた時は米軍の通訳将校として時代に合わせ生きた長男のラム、ベトナム戦争に派遣された韓国の軍人を愛し捨てられるラムの娘のトゥイの話が淡々と書かれる。
もう一つの軸では、小作農の息子であり郵便局職員であるパク・ヨンミンが、親日巡査出身の警察に復讐しようとパルチザンになる話が展開される。地主の息子だがヨンミンと兄弟のような仲であるパク・ミョンドは、朝鮮戦争で腕を失ったまま除隊し、ヨンミンが守れなかった妻と息子のドンスを受け入れるが、真の家族にはなれない。
それぞれの物語が流れていた二つの国の話は、ついに南ベトナムに派兵されたヨンミンの息子ドンスの話で合流する。被害者であり加害者となり、絡み合う両国。歴史の結び目は、どのようにしてほどくべきなのだろうか。