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[コラム]米国製・日本製を追い抜いたK-POP…文化は水のように流れる

登録:2020-10-17 09:11 修正:2020-10-17 12:53
イ・ジェイクの『歌で見る世界』
近藤真彦『ギンギラギンにさりげなく』のジャケット//ハンギョレ新聞社

 時事番組を司会進行する際に「金は水のように流れる」という表現をよく使う。0.1%でも傾きが変われば無情に流れる水のように、ただ利潤だけを追求して流れる金の流れを人為的に変えるには、中途半端な介入を自制し、最大限冷静に経済政策を設計しなければならない、というのが筆者の主張だ。そこにこんな言葉を付け加えたい。金だけが水のように流れるのではない、文化も水のように流れる。

 他のコラムでも指摘したように、韓国は工業製品や食べ物、映画、文学とは違って、歌だけは徹底して日本産を排撃した。軍部政権、民主政権、保守・進歩を問わず、日本の歌はいつも「放送不可」だった。それでも筆者が幼い頃、つまり1980年代を経て1990年代初めまでは、日本の歌はあちこちで実にたくさん聴いた。いちばん古い記憶は「ギンギラギンにさりげなく」というタイトルのダンス曲。1980年代、日本で最高の人気を博した美男子スター、近藤真彦の歌だ。韓国でも人気が高く、一度も放送に出ることもなかったのに海辺で暮らす子どもたちが口ずさむほどだった。

 その後も同じだ。X JapanやLOUDNESSのようなロックグループをはじめ、桑田佳祐、チューブ、安全地帯、少女隊など、日本の歌手らが口コミで韓国で人気を集めた。日本の歌をそのまま放送に流せない点を利用してカバー曲も並んだが、日本の歌とは知らずに聴いたりもした。カントリーココの「オーマイジュリア」、チョン・ジェウクの「シーズン・イン・ザ・サン」、ファヨビの「あなたのキスを数えましょう」、パク・ヒョシンの「雪の華」、CANの「私の人生に春の日は」など、かなり多い。それでもまともにカバーしたものはまだましだが、日本の歌を盗作したという話はあまりにも多く、筆者が放送局に入社した頃には「日本の歌をコピーしなかった歌なんかあるのか」という不満もあった。

 このような雰囲気はすっかり消えた。いまやユーチューブをはじめ、ストリーミングプラットフォームでほぼ無制限に聴くことができるのに、日本の歌は徹底してマニア文化にとどまっている。聴くな、という時代には必死に「ギンギラギンに」を歌っていたのに、どうして思う存分聞ける今は聴かないのだろうか? 文化は水のように流れるからだ。日本の歌手が韓国で得る人気やお金が多いだろうか、それとも逆に、韓国の歌手が日本で上げる収益の方が多いだろうか。調べる必要もない。韓流スターが日本のオリコンチャートを総なめにし、超大型ステージを完売させたというニュースはあまりにも多く目新しいことでもないが、日本の歌手が韓国の音楽チャートで1位になったとか、オリンピック競技場の公演チケットが売り切れたという話を聞いた人がいるだろうか。

 数年前までは、例えばPSYの「江南(カンナム)スタイル」が世界的な人気を博した時も、一時的な現象だと思っていた。あるいは今が頂点だろうと思っていた。しかし、K-POPと呼ばれる韓国の歌謡曲は、毎年最高実績新記録を更新中だ。今週はその頂点を極めた。このコラムを書いている今も、ビルボードのシングルチャート1・2位の両方にBTS(防弾少年団)の名前が入っている。100年を超える米ポップ音楽史上、ビルボード1・2位を同時に獲得したアーティストはなんとビートルズやビージーズなど4組しかいない。すでにBTSが1位を占めたビルボード200チャートには、BLACKPINKが2位にまで上がってきている。韓国の女性歌手としては最高記録だが、1位にならないとも限らない。

 筆者をはじめ40~50代は、韓国が白衣民族、あるいは製造業国家だと思って育った。しばらくすると「輸出大国だけが我々の生きる道」という軍部政権のスローガンが飛び交った。「金塔産業勲章」だの「輸出の担い手」だのという表現を子どもの頃はよく耳にしたが、今や韓国は内外的にそのような宣伝・扇動をする必要もない位置にきた。貿易量はもちろん、品質においても韓国製品は外国製品に引けをとらず、「米国製」「日本製」という言葉は全く優越した感じを与えない。半導体、家電、自動車、携帯電話、船舶… そこに文化という目玉品目が追加された。

 その昔の「ギンギラギンに」は、すぐにやってくる長期不況を夢にも思わぬままバブル経済の絶頂を誇示した80年代の日本の雰囲気をそのまま表している。この歌のリフレインはこのように繰り返される。「ギンギラギンにさりげなく、そいつが俺のやり方…」本当にそうだった。あの時代、全盛期を謳歌した日本のギラギラとした華やかな大衆文化は、韓国政府がいくら止めようとしても大韓民国の八道江山に流れ込んだ。しかし、歳月が過ぎた今は…? K-POPの波が華やかに世界中に流れている。莫大な外貨を稼ぎ、国家ブランドを築き上げながら。

 スリリングであると同時に怖くもある。香港映画や日本の大衆文化がそうであったように、韓流も思い出として消滅してしまうのでは、と思うと。永遠なものは絶対ないというが、どうか韓国文化の水路は末永く乾かず流れてほしい。エコ、高付加価値、新技術の応用性など、未来学者たちが今後有望な産業の条件として挙げる項目をすべて満足させる大衆文化コンテンツこそ、最も理想的な未来の食い扶持ではないか。発展途上国時代に製造業輸出国へと成長するために韓国政府が投じた様々な支援策の10%、いや5%だけでも、文化輸出国の未来のために投資してくれないだろうか。例えば…いや、詳しい説明は省く。

//ハンギョレ新聞社

イ・ジェイク|SBSラジオPD・「時事特攻隊」司会者

https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/966090.html韓国語原文入力:2020-10-17 02:34
訳C.M

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