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『半導体少女 シーズン2』サムスン、半導体、非正規職「隠された」労働、芝居で告発

登録:2019-11-27 02:20 修正:2019-11-27 07:13
2010年初演のシーズン1に続き 
チョン・テイル財団の支援受け 
 
労働問題意識、国際的に広げる 
チェ・チョル演出「ハンギョレの記事が役立った」 
 
多少重いテーマも緊張ほぐし笑いも加味 
映画『スト前夜』の俳優キム・ドンボムさんも出演 
「世代に合わせた多様な労働劇作るべき」
文化創作集団ナル提供//ハンギョレ新聞社

 6月、サムスン電子の主要生産基地であるアジア地域の労働者たちの不都合な現実を暴いたハンギョレの報道の影響は大きかった。インドのノイダ工場では携帯電話を13秒に1台ずつ、12時間も組み立て続けなければならず、ベトナムのタイグエンでは22歳の女性が働きはじめてから4カ月後に倒れて死亡した。発ガン性のある揮発性有機化合物に週当たり60~70時間もさらされた可能性…。世界各地を駆け巡る電子製品は、労働者の命と交換したものかもしれない。

 記事で接したこの不都合な真実は舞台で再び暴かれ、私たちの胸をえぐる。ベトナムのサムスン工場の労働者を描いた演劇『半導体少女 シーズン2』。来月1日まで、ソウル鍾路区の「美しい青年チョン・テイル記念館」で無料公演中だ。この作品の初演は2010年。初演では、サムスン半導体工場の白血病被害者である故ファン・ユミさんの話をモチーフに、非正規労働者の姿を描いた。2014年の再演を経て、今年発表されたシーズン2では「サムスン」「半導体」「非正規労働者」などのキーワードはそのままに、内容を変えた。文化創作集団ナルの演出家チェ・チョルさんは、「サムスンは多国籍企業であり工場が外注化されているということで、ベトナム工場を中心に描いた。労働問題は国際的な話題と考え、問題意識を広げた」と述べた。彼は「ハンギョレの記事が作品を準備するのに役立った」と語った。

 芝居は親戚同士が同居する家族にベトナムから1通の手紙が届くところから始まる。その手紙を届けに来た郵便局員をはじめ、宅配労働者、配達員、看護師、非常勤講師などの劣悪な環境で働く非正規労働者の現実も、シーズン1より扱いが大きくなっている。労働者の象徴であるチョン・テイル記念館で公演し、サムスンを象徴的に扱っているということで、現実を告発する重い作品のように思われるかもしれないが、この作品は比較的気軽に見られるように緊張感をほぐしてある。序盤、ベトナム工場労働者の話は形象化して見せ、非正規労働者の話には笑いも加味した。チェ・チョルさんは「テーマが重いため、観客が抵抗感を感じ、難しく考えるかもしれないので、気軽に受け入れられるよう気を使った」と語る。

韓国初の労働映画『スト前夜』に続き、労働を題材にした芝居に出演した俳優のキム・ドンボムさん=文化創作集団ナル提供//ハンギョレ新聞社

 緊張をほぐすという演出意図とは違い、「労働」というテーマだけで重くなってしまうのはどうしようもない。2010年初演の作品が9年後の現在でも、むしろ広がった問題意識が込められて再上演されるということは、変わらない労働の現実を示していれるからだ。この作品には1990年に公開された韓国初の労働映画である『スト前夜』で主役を演じた俳優のキム・ドンボムさんも出演している。『スト前夜』は「労働環境が変わることを願う気持ちで出演した」というが、30年が過ぎた今も労働の現実を赤裸々に照らし出す作品が作られ続けているということに複雑な感情を抱いてはいないのだろうか。彼は「労働者の時間と努力が十分に立派な結果を生み出しても、資本の価値に比べると、その対価を十分に認めてもらえていないというのが残念だ。本当に変わるのか懐疑的な気さえする」と語った。チェ・チョルさんは「今の労働環境は良くなったのではなく、さらに隠され、知能化されている」と指摘する。

 今回はチョン・テイル財団の支援を受けたが、労働劇の制作環境も現実の労働者のように劣悪だ。問題意識には共感しながらも、関心は低い。映画『スト前夜』も、5月に30年ぶりの正式劇場公開のニュースが話題を集めたが、観覧客は2000人ほどにとどまった。にもかかわらず、芸術が社会を変えるという考えから「労働の素顔」を照らし出す作品が地道に製作されていることには拍手を送るべきだ。キム・ドンボムさんは「最近は労働がマスメディアの素材になる流れができている。今の世代の文化的趣向に合った研究と開発が行われ、多様な労働劇が作られるべきだ」と語った。

ナム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/918575.html韓国語原文入力:2019-11-26 17:20
訳D.K

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