話題の論文「世代、階級…」の拡張版
権力独占の副作用をデータで指摘
年功賃金制・正規職労働組合の問題を指摘
「階級と世代が一致する韓国
強力な賃金ピーク制の導入が必須
労働市場の改革は進歩がすること
他の世代と連帯し解決すべき」
「人々が大っぴらにはできず酒の席だけでした話をデータを根拠に見せたので、反応が熱かったようだ。多くの386世代のリーダーは、この論文や論文を扱った記事を読んだようだった」
西江大学社会学科のイ・チョルスン教授(48)が最近出版した『不平等の世代』は、去年話題になった論文「世代、階級、序列-386世代の執権と不平等の拡大」を拡張して書いた本で、出版前から期待を集めた。イ教授は20年間米国で研究し、シカゴ大学社会学科で終身教授として働いたが、すべて整理して2017年に韓国に帰って来た。
イ教授は、386世代が政治・経済・市民社会の権力を掌握し、この世代が独占した結果として若者世代の雇用不足と女性の労働市場からの脱落などの問題が発生した現実を、多様なデータを根拠に示した。論文を出してから多くの反論が出たが、「世代間格差より世代内階級がさらに重要な問題」という階級論の視点での反論が代表的だ。今月10日、研究室でハンギョレのインタービューを受けたイ教授は、「階級論は、世代、女性、地域など他の亀裂構造を、『核となる矛盾』を覆う虚偽意識だとみなす。しかし、最近の若者の失業は、階級だけではうまく説明できない。韓国では独特な序列構造により、階級と世代がほとんど一致した状況にある。それでこの本は386世代批判が目的ではなく、世代という観点で韓国の序列構造を批判することが目的」だと話した。
彼はこの日のインタビューで、労働市場の不平等を集中して取り上げた。「私たちの社会の最大の問題は、東アジア的序列に基盤を置く強力な年功賃金制度だ。経済協力開発機構(OECD)加盟国は、平均初任給を100とすると30年後には170まで行くが、日本は240、韓国は350まで行く。韓国は世界最強の年功給制国家だ」。これにより深刻な労働市場の二重化が発生したということだ。「資本は労働費用の圧迫が生じると、すぐに二つの方法で対処した。強力な労働組合を組織した386世代の正規職とは闘って勝つことができないので、代わりに新入社員の採用を減らし、社内下請・派遣職・非正規職を拡大した。今、私たちの社会は、正規職労働組合と資本が連帯して下請と非正規職を搾取する構造だ。1%対99%ではなく20%が80%を、または50%が50%を搾取する社会だ」
彼は、他の世代と非正規職を考慮せずに賃上げと定年延長に没頭する正規職労働組合の問題を指摘した。「スウェーデンやドイツのような西欧国家の労働組合は、自発的に賃上げを抑える。インフレーションが生じると、非正規職、パートタイム労働者に否定的な影響を及ぼすからだ。韓国の正規職労働組合は絶対にそうしない。現代自動車労組の最優先目標は65歳定年延長だ。逆三角形人口時代が、年功給と世代ネットワークと結合すれば、正規職と非正規職の差別は身分制のようになる。私は正規職の特権を縮小すること以外に他の手段を知らない。この話を韓国の進歩勢力が率直に打ち明けなければならない時が来た」
イ教授が正規職問題に触れない文在寅(ムン・ジェイン)政権の所得主導成長の限界が明確であると考える理由だ。「正規職に触れない所得主導成長は、意図せず外部者が参入する雇用を減らす傾向がある。所得主導成長よりも雇用主導成長を行うことが正しい。社民主義国家の労働組合の目標は完全雇用だ。それで賃上げを自制する。完全雇用状態において労働を最もよく保護できるからだ」。現政権が386世代の長期政権を強化する65歳定年延長のために火を焚きつけている状況を、彼は憂慮する。
彼は現在、序列構造が企業の競争力にも深刻な負担を与えていると言う。『不平等の世代』で初めて公開した、50、60代が過大に代表する企業ほど資本収益率がよくないことを示すグラフを、重要なデータとして挙げた。「国内100大企業を見てみると、経営陣のうち50~60代の高年齢者の割合が80~100%に及ぶ企業は、実績がよくなかった。ウリ銀行、大宇造船海洋のように政府が筆頭株主となっている企業だ。オーナーがいない企業で、一世代が連帯して分けて食べているのだ。このような労働者の利益集団化と非効率の増大は、南米または南欧方式だが、私たちの社会全体がこの方向に進んでいると思う」。1970年代生まれが20~40%まで経営陣に含まれる会社、ネイバー、コーウェイ、アモーレパシフィック、NCSOFTなどは、資本収益率が10~30%で先頭グループを形成した。イ教授は「新しいアイデアとエネルギーで充電された若者と女性を組織の最上層に引き上げて『虹のリーダーシップ』を構成すれば、硬直した組織文化と長期政権による生産力の低下を克服できる」と語った。
彼は若者世代の雇用問題に関連した最も直接的な解決策として、強力な賃金ピーク制の導入を挙げた。大企業、公共部門、専門職などで施行した賃金ピーク制により節約した人件費で、企業が若者を雇うようにする雇用協約を結ぼうということである。同時に給与を職務に応じて与える職務給制と成果に応じて与える年俸制を、弱い水準の年功給制とともに施行しようというのが、イ教授の考えである。彼はこれとともに、寛大な失業補助金の支給と再訓練システム、国家管理の就業斡旋機関など、欧州よりさらに強力な雇用と訓練のセーフティネットワークシステムを構築しようと提案した。
これには386世代の譲歩が必要だ。「386世代は皆退けというのではない。自制しようということだ。どのみち386世代を追い出す組織力がある他の世代はない。権力を持った386世代が子の世代を考え、自ら解決しなければならないということだ。労働市場の改革は、右派が行えば労働組合が賛成しがたいので、むしろ進歩が行わなければならない。386世代の中にも世代バランスを考える人々がいる。そのような人々が他の世代と連帯して、この問題を解決しなければならない。今、この問題を解決せずに、このまま就職率と出産率が低下すれば、後に386世代自身の子どもが途方もなく多くの高齢者人口の面倒をみなければならない苦痛を背負うことになる」