ブラックリスト工作を呼び起こした“鶏の頭”ははがされた。鶏の頭の下に隠されたカカシの顔がそのまま露わになった。自身を操縦する金淇春(キム・ギチュン)、朴正煕(パク・チョンヒ)の顔とともに腕をつかまれた朴槿恵(パク・クネ)の顔のあちこちにべたべたビニールとテープが貼られていた。
横の長さ12メートルを超える洪成潭(ホン・ソンダム)作家の大作「セウォルオウォル(世越五月)」は、このようにこの4年間の風霜を表した。20日、ソウル寛勲洞(クァンフンドン)の仁寺アートセンターでカナ文化財団の主催で開幕する作家の個展『セウォルオウォルとろうそく』に行けば、1階の入口で一番最初に観客を迎える代表作だ。
「セウォルオウォル」は2014年、光州(クァンジュ)ビエンナーレ特別展『甘い露』に出品しようとしたが、朴槿恵前大統領をカカシに風刺した内容が問題になった。それで朴前大統領の顔の上に鶏の頭の図像を貼りつけたが、大統領府の圧力でついに展示は取り消された。朴槿恵大横領時代の大統領府が文化芸術界のブラックリスト工作を本格的に推進したという事実もブラックリスト真相調査委の調査で明らかになり、この作品は美術史を超えて韓国の歴史を動かした作品として残ることになった。
洪成潭作家は韓国民衆美術の代表作家の一人だが、社会の積弊に対する鋭い批判で美術界では辺境のアウトサイダーだった。ソウル画廊街での展示も、2004年の学古斎での個人展以来14年ぶりだ。カナアートセンターのイ・ホジェ会長が意外にも展示を急に提案して行われた場だが、セウォル号事件とろうそく抗争以降、彼が何を考えて苦悶してきたのかを込めた近作を一目瞭然に見ることができるという点が歓迎すべきところだ。
展示はセンターの地下1階の展示場から地上3階までの計4つの展示場を、社会政治的イシューによって小テーマ別に分けた構造を見せる。地下1階の展示場はセウォル号事件を扱った「セウォル号、4年の待ち」、1階の本展示場は「セウォルオウォルとろうそく」、2階の展示場は日本軍「慰安婦」被害者問題を取り上げた「鳳仙花」、そして3階の展示場は朴正煕政権の社会政治的抑圧を告発した「韓国靖国-高速道路」そして「生と死の歴史」で組まれた。
「セウォルオウォル」やセウォル号の惨状を盛り込んだ真に迫る群像画とともに注目を集めた大作は、新作「統一大願図」だ。4月の南北首脳の板門店(パンムンジョム)徒歩橋会談の情景を、鳥たちが宿った民話風図像と民衆の喜びを表現した80年代木版画の図像に合わせて描いた。両首脳のコップにくちばしを突っ込んで水を飲む鶴のおどけた姿と、会談場の外郭で分断の悲しみと統一の喜びを表現する民衆を太い輪郭線で表現した図像は、形式的法古創新(古きを模範にし新しきを創造する)の境地を模索していく作家の変化を如実に表している。ろうそくデモ当時、光化門(クァンファムン)広場の李舜臣将軍像を中心に大統領府を囲んだろうそくの行列を、李舜臣の鶴翼の陣(鶴の羽を広げるように囲む陣形)戦法に形状を当て、躍動的な構図で描いた『火種、鶴翼の陣』連作3点は、ろうそく抗争の時代的な意味と光化門広場の空間性を絶妙に統合した秀作と言える。
作家は「過去どの時よりもあのろうそくデモはろうそくが水のようにあちこちに流れるのが特徴だったが、攻撃的な感じが際立っていた。それをどのように形象化するか自信がなく、3点を一緒に置いて悩みながら描いた」と話す。展示場には彼が2000年代初期から力を入れた「靖国の迷妄」連作と鳳仙花の連作など、国家暴力の実状を敏感に捉えたさまざまな作品もともに展示された。8月19日まで。82-2-720-1020。