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再び巻き起こる「盧武鉉ブーム」、その理由とは?

登録:2017-06-05 04:09 修正:2017-06-07 16:27
『盧武鉉です』ドキュメンタリー最短期で100万突破 
「大義」守りながら苦難-克服-勝利、英雄叙事と類似 
支持者「涙を流し、追悼して負債意識振り払い」 
歴代1位『あなた…』480万人の記録越えるかに注目集まる 
「英雄叙事の第2幕が必要…冷徹な分析・反省盛むべき」
『盧武鉉です』のポスター//ハンギョレ新聞社

 「“政治家盧武鉉(ノ・ムヒョン)”は支持しないが、“人間盧武鉉”に感動した」

 「若い保守」を自称する観客ホ・ギウクさん(42)の感想だ。彼は2002年はもちろん、2007年、2012年の大統領選挙でも保守候補に投票した。しかし、妻の手に引かれて『盧武鉉です』を見てから、“人間盧武鉉”について思い直すようになったと話した。両親と共にもう一度映画を見る計画だ。

 ドキュメンタリー『盧武鉉です』が封切りから10日目の3日、100万観客を突破した。ドキュメンタリー映画史上、最短期間で100万の記録だ。どうして観客たちは今“人間盧武鉉”を取り上げた映画にこんなに熱狂するのだろうか。

■非支持者まで虜にした「盧武鉉コンテンツの力」

 専門家らはまず、盧武鉉コンテンツの持つ力をその理由として挙げている。盧元大統領の挑戦と挫折、克服と成功の一代記が“英雄叙事”と類似しており、「原初的なカタルシス」を感じさせるということだ。

 映画は、盧元大統領が2002年、新千年民主党の大統領候補党内選挙に挑戦し、「盧武鉉を愛する人々の会」(ノサモ)の献身的な活動に支えられ、大逆転を繰り返しながら、国民予備選挙で勝利する過程を主に取り上げている。大衆文化評論家のファン・ジンミ氏は「2%台の支持率が物語るように、自らが選んだ苦難の道(3度の落選と釜山市長挑戦の失敗)を歩みながらも、『東西和合』『地域主義打破』という大義名分を捨てずに、これに感化された支持勢力に支えられて勝利をおさめるプロット自体が、一種の英雄叙事」だとし、「時期尚早な死にもかかわらず、“盧武鉉精神”だけは再び生きて“復活”するという点までも(英雄叙事と)相通じるものがある」と分析した。ファン氏は「劇映画『弁護人』(約1137万人)とドキュメンタリー『武鉉、二都物語』(約19万3千人)の興行もこの敍事の力を示している」と付け加えた。

 映画の中の人間臭い面貌がホさんのように彼を支持しなかった人の心まで掴んだためという分析もある。映画には文在寅(ムン・ジェイン)大統領、安煕正(アン・ヒジョン)忠清南道知事など、盧元大統領の側近だけでなく、運転手、請願警察、彼を担当した元国家情報院職員ら39人のインタビューが党内選挙の過程と交差編集されている。彼らはいずれも盧元大統領の“人間臭い姿”を証言している。

 キム・オンヒさん(41)は「自ら運転して運転手を新婚旅行地に連れていったエピソードや、立派な人柄で国情院の職員まで感服させた逸話などに感動した」とし、「見ている間ずっと泣いていた」と話した。映画を作ったイ・チャンジェ監督は「政治家盧武鉉は排除し、人間盧武鉉の姿を撮るのに集中した」とし、「盧武鉉という人をめぐる良い空気が支持如何にかかわらず、大きく心に響いたからではないかと思う」と自評した。

■支持者にとっては哀悼と追悼の機会

 上映館ではどこでもすすり泣く声でいっぱいだった。盧元大統領支持者にとってこの作品を見ることは、飲み込んできた涙を流し、心に積もっていた「心理的負債感」とその後保守政権で感じてきたもどかしさを振り払う、追悼の儀式として共有される側面もある。

 イ・ソルヒョンさん(48)は「盧元大統領を空しく(あの世に)送ってしまったことについて、悲痛さと申し訳ない思いでいっぱいだったが、映画をみて思いっきり涙を流して追悼することができた」とし、「彼の遺志を次の世代にも伝えなければならないという義務感から、16歳の息子と14歳の娘と共に観覧した」と語った。

 朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾と繰り上げられた大統領選挙、文在寅政権の誕生なども、興行を後押しした。映画評論家のチョン・ジウク氏は「弾劾を経て、真のリーダーシップに対する渇望が多くなり、それが盧武鉉というコンテンツに対する訴求力を作り出した」と解釈した。チョン評論家は「CGVアートハウスが配給に参加し、700個以上のスクリーンを確保したのも無視できない影響を与えた」と付け加えた。ドキュメンタリー映画の最大興行作『あなた、その川を渡らないで』もCGVアートハウスが配給を担当したが、『あなた…』が約180のスクリーンから始まり、最大800カ所まで増えたことに比べて、『盧武鉉です』は、当初から580を超えるスクリーンで上映を開始した。政権交代で政治・社会的雰囲気が急変した点も興行成績に影響を及ぼしたものと見られる。

■興行好調どこまで?…そして残った課題

 『盧武鉉です』は公開初日から歴代ドキュメンタリー映画の記録を塗り替えた。7万8千人というオープニングスコアは過去の最高興行作である『あなた…』(8907人)の8倍に上る。記録は継続して更新されるものとみられる。初頭から地道に平日5万~7万人、週末には15万~20万人以上が見ているからだ。歴代ドキュメンタリー興行2位の『カウベル』(293万人)はもちろん、『あなた…』の480万人を超えられるかに注目が集まっている。

 一方では「盧武鉉コンテンツ」の補完すべき課題を提言する声もあがってる。評論家のファン・ジンミ氏は「英雄叙事構造からすると、『盧武鉉です』は第1幕に当たる。第2幕も必ず必要だ」とし、「大統領になった後、支持者たちとどのような緊張と拮抗の関係に陥るようになったのか、その理由は何かを取り挙げるコンテンツが出てこそ、盧武鉉政権から何を継承し、何を反省すべきなのかに対する冷徹な分析が可能になるだろう」と指摘した。

 イ・チャンジェ監督は「陣営論理を離れ、盧武鉉という人について心を開くきっかけを作るために企画された映画」だとし、「映画をみて他の解釈が必要だと思う多くの製作者・監督が出てきて、彼を取り上げる様々な映画が作られることを期待する」と明らかにした。

ユ・ソンヒ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/movie/797416.html 韓国語原文入力:2017-06-04 22:26
訳H.J(2722字)

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