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「韓国の経験から世界を説明する一般理論を作らなければ」

登録:2015-04-16 22:17 修正:2015-04-17 07:11
キム・ドンチュン聖公会大教授
キム・ドンチュン聖公会大教授は、15年の“浮気”を終え本業である社会科学研究に立ち戻ると話した。『戦争と社会』(2000)の出版に前後して、現代史側の研究に「足をとられた」として、今後は「汎社会学的なアプローチを試みる」と話した 資料写真//ハンギョレ新聞社

 「大韓民国という国の今日を、解放70年の時点で改めて振り返ってみる本だ。しかし歴史の本ではない。現在の韓国をどのように見るか、ということを学生も読める大衆的な内容で書こうと考えている」。キム・ドンチュン聖公会大社会科学部教授(56)は、現在執筆中の本の題名を『解放70年、大韓民国はどんな国か』(仮題)とひとまず決めたと話した。 今年の8・15前に出版する予定のこの本は、キム教授が最初から単行本用に企画して書いた大衆書としては最初の本だ。

 「韓国社会の実質文盲率は非常に高いという話がある。大学進学率が世界最高水準という学歴を自慢しているが、実質的に韓国社会を理解し判断できる能力は顕著に劣っているという話だ。それは結局のところ入試準備中心の教育のせいだが、人々に韓国の社会問題を考えさせる方策の一つが良い本を書いて読ませることではないかと考えた」。 光復(解放)70年、事実上は分断70年に、韓日協定締結50年になる今年を最初から念頭に置いて書いたわけではないという。 「かなり以前から考えてきたことだが、たまさか時期がそれと合致した」。この本も例外ではないが、韓国学術研究分野第3世代の先頭走者として評価されてきたキム・ドンチュン教授の永遠のテーマは、暴力的で外勢依存的な韓国の支配体制・階級のアイデンティティ究明と、より良い世の中に向けた変革主体の形成の実践的摸索だ。 「今回の本はこれまで書いてきた論文や学術的な文、本の内容を集大成した側面がある。 そこに研究者がほとんど書かなかった1945年以前のこと、旧韓末と植民地時代の話を冒頭に新たにちょっと付けた」

大韓民国は南へ越境した人々が作った国
自生的近代と人間解放の挫折
移植された西欧的近代の支配
その結果としての“中途半端国家”
“社会科学輸入国から輸出国へ”

 労働分野の研究で始まった彼の関心事が朝鮮戦争に拡張され、さらに近代側に再拡張したわけだ。

 「1890年代、独立と開化という大きな二つのテーマが結合に失敗し、二つの勢力が分かれ植民地となって、開化主導勢力、結局は親日派が主導した近代の道を歩むことになった。1945年、解放後に再びこれらを結合しようとする試みがあったが、またしても失敗した。 独立をあきらめた代価として開化追求(親米)勢力が再び権力をにぎった。 結局は分断だが、今度は日本ではなくアメリカの政治軍事的従属下に置かれることになった。もう一つは、黄海道の信川(シンチョン)虐殺をして今日の大韓民国を眺めることだ。キリスト教と共産主義、ファン・ソギョン作家が述べた二人の客人の対立が虐殺につながった。 これは以前の日帝時代に独立運動の方向を巡るキリスト教勢力と社会主義系列の軋轢が信川虐殺で爆発したと見ることができる。その爆発後、キリスト教反共勢力が南に降りてきた。 ある意味では、大韓民国は北から南へ越境した人々が作った国だ。 そして、下からの自生的近代と人間解放の挫折、移植された西欧的近代の支配。 その結果であるこの“中途半端国家”を、これら三つの観点から説明することができる」

 キム教授はいかなる理論であれ、植民地と分断を体験した国としての特性を深く掘り下げずには韓国社会の分析はできないと語る。「朴槿恵(パク・クネ)政権、李明博政権登場以後の韓国の社会現象を、西欧民主主義政党論などでは解明できない」

  彼が準備しているもう一冊の本は『反共国家』だ。 問題意識は基本的に今書いている本と変わらないが、「ただ、もう少し学術的な本」と話した。 本来は『戦争と社会』続編を書くつもりだったが、もう“浮気”はできなかった。『反共国家』がまさにその2冊目であるわけだ。 2年後には出すつもりだ。 先月出版したドイツ・韓国の学者との共著『反共の時代』も新しい作業と関係がありそうだ。

 「韓国の反共体制は、世界的冷戦体制に徹底的に応じた冷戦の内在化、韓国化と言える。そのような内容と虐殺問題、そしてこれを行った特別捜査機関、例えば日帝時代の特別高等警察(特高)、李承晩時代の特務隊、朴正煕時代の中央情報部。 国家の上の国家であり、法の上の国家としてのこれらの存在を浮き彫りにしようと思う。 これを民主主義政治理論で説明するよりは、国家形成論的観点で、より深層的に接近してみたい」。キム教授は「西欧社会科学の一方的輸入国」である韓国の現実が常に苦々しく残念だったとし、「対等な、さらには社会科学の輸出国になることを」希望した。「それは我ら自らの経験をどのように普遍化するかに掛かっている。韓国の経験を通じて世界の問題を説明できる一般理論を作ることだ」

 彼は、学問の自己化・普遍化が人文学側ではある程度なされているが、社会科学側では「全くできていない」と話した」。「概念を掌握する人が世界を掌握する」とクォン・ハニク英国ケンブリッジ大トリニティカレッジ客員教授も言ったが、イデオロギーや西欧偏向や傾斜を正すのは、国を変えることと同じくらい重要でまた難しい。 それが教育、学問、生活など全てのものと連結されている」。 だが、この国にはいまだに自ら作った社会科学辞典、経済学辞典、まともな教科書一つない。 「韓国の歴史上、自分のものをまともに作り出した人は元暁(ウォニョ)がほとんど唯一ではないだろうか。 そこに茶山と退渓くらいを加えることができるだろうか。この自己化という面で日本と比較すれば韓国は相手にならない。 韓国では問題意識すらないということが一層深刻な問題だ」

ハン・スンドン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/687196.html 韓国語原文入力:2015-04-16 19:18
訳J.S(2595字)

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