本文に移動
全体  > 文化

[書評] 問題は中国でなく日本

登録:2015-04-02 23:30 修正:2015-04-03 08:07
『疾走する中国』(邦題『中国の大問題』)丹羽宇一郎著・イ・ヨンビン訳
『中国の大問題』丹羽宇一郎著 //ハンギョレ新聞社

 2013年、ワシントンの非営利機関ピュー・リサーチセンターが39の国および地域で米国と中国に対する好感度を調査した。 各国の調査対象者に対する中国を「味方」と考えるか「敵」と考えるかを問う項目で、味方と考える日本人は5%しかいなかった。 “嫌中派”が95%にもなるということだ。 米国とヨーロッパでは40~50%、南米とアフリカでは60~80%が中国を味方と答えたのとは対照的だ。

 これを引用した『疾走する中国』(ハンウル刊/2015年)の著者・丹羽宇一郎(76)は、韓国との関係も同様だとしてこう続ける。「日本がまず認識しなくてはならないのは、日本人が当然のように思う『嫌中』『憎韓』傾向が国際的には極めて異様であるという事実だ。 国際社会で日本が特殊な位置にあるということを知らなければならない」。 当時、尖閣諸島(釣魚島)問題で大きくなった中日間の領土紛争が調査に影響を及ぼしたのだろう。 その頃、中国駐在日本大使だった丹羽氏は石原慎太郎東京都知事の尖閣購入計画発言に関連した英紙フィイナンシャル・タイムズとのインタビューで「計画が実行されれば、中日関係に非常に深刻な危機が生まれるだろう」と答えバッシングにあった。突然「親中派」にされ「売国奴」という罵りまで浴びせられた。 中国傾倒派、媚中派、弱腰外交などという単語も動員された。 丹羽氏はこれに対し「日本の知的衰退」と嘆き、自身は「愛国親中」だと主張した。

 丹羽氏は大企業の伊藤忠商事会長まで務めた商社マンで、30年以上中国と取引してきた中国通であり、2010年6月から2012年末まで駐中日本大使だった。 彼は2009年8月の総選挙で圧勝し政権交替に成功した民主党政権の対中国政策ブレーンであり現場総指揮者であったが、2012年末に安倍政権の再登場と共に退いた人だ。

 民主党の実力者らは当時、米国一極体制と新自由主義を批判して中国と韓国との関係強化をはじめとするアジア重視政策を展開した。 これに驚いた米国が露骨に牽制し、沖縄米海兵隊基地移転問題を口実に鳩山由紀夫を圧迫した。 鳩山は首相職を1年も満たせずに退き、以後民主党政権は急速に傾き始めた。

 『疾走する中国』は米国鷹派および彼らと手を握った日本右派などの伝統的既得権勢力の談合の前に挫折した民主党政権、アジア重視派の見解を代表すると言える。

 この本の元のタイトルは『中国の大問題』だが、今中国が抱いている経済と人口、都市地方格差、少数民族問題、中日関係などを長い体験とノウハウを持った専門家の視角で探っている。

 日本が中国には40年、韓国には20年先んじているという自負心を表明した丹羽氏は、中国は問題が多いが日本が今のまま進めばそんな中国に遠からず敗北すると心配する。

ハン・スンドン文化部先任記者//ハンギョレ新聞社

 最終章「日本という問題」に、彼が本当に言いたいことが記されている。そこで丹羽氏は量的には巨大な中国や韓国などの新興国が勝負できないソフト パワーを育て、質的な競争優位を確保することが日本の生きる道であることを力説する。 それと共に、教育後進国になりつつある日本、35%に及ぶ非正規雇用の増加、特定秘密保護法制定のような統制装置強化などが日本国家の質を下げると警告する。韓国にとっても他人事ではない。

ハン・スンドン文化部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://hani.co.kr/arti/culture/book/685237.html 韓国語原文入力:2015-04-02 20:00
訳J.S(1559字)

関連記事