日帝の韓国文化財流出経路追跡
植民時代文化財返還問題の“助言者”
朝鮮王室儀軌返還承認に寄与
古宮博物館が招請 特講のために訪問
未来指向の共存・協力関係 発展が目的
韓日協定合意に従って返還問題解決すべき
「来年は韓国と日本の国交正常化50周年の年です。1965年の条約当時、両国政府が文化財協定を結び、多くの文化財が韓国に返還されました。その時の交渉を記録した議事録を見ると、民間分野でできるだけ多くの文化財を返還するよう日本政府が立ち上がって奨励することにしました。 それに倣って今でも多くの文化財が返還されることができると考えます」
八十路の日本の元老学者は常に“共存”を念頭に置いて文化財返還の解決法を考えるよう助言した。「韓国と日本は絶対に戦争をしてはいけない間柄」と力説する荒井信一 駿河台大学名誉教授(88・写真)の論理はよどみなかった。 18日午後、ソウル古宮博物館で「文化財返還、植民主義を越えて」という主題で特講を行うために訪韓した彼は、これに先立って開かれた記者懇談会で「共存と協力関係の発展を考えて返還問題を解決しなければならない」と繰り返し強調した。
荒井教授は近代以来の主要韓国文化財の日本への流出経緯を長期間追跡し、最近では在日同胞や日本人が一緒に設けた韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議の代表も引き受けている。 彼は文化財の返還問題と関連して、最も考えが深い“助言者”に選ばれる専門家だ。
「日本で公式に確認された6万7千点以上の流出文化財を返してもらわなければならないという世論が韓国にはあります。日本政府も昨年韓国人の窃盗犯が犯した対馬の仏像盗難事件の後、仏像を返してほしいと要求しています。 自分たちのものだから、無条件に返して欲しいという返還要求は無責任なものだと考えます。 一部の韓国人は、6万7千件余りの文化財が盗難に遭い日本に行ったと言うけれど、全部が盗難に遭ったものではありません。 あるものは意図的に搬出したものもあります。 どんな理由で、どんな方式で日本に行ったのかを深く調査する必要があります」
荒井教授は「韓国と日本は絶対に平和的に互いに共存し、未来指向的発展をしなければならないというのが政治的見解」として「文化財返還もこのような観点で未来指向的で協力的な関係を発展させつつ行われなければならないという考えを持っている」と話した。 「韓国と日本の人々が政治を関与させずに、それぞれ異なる文化に対して幅広く関心を持つことが最も重要だ」という持論だった。
東京出身の彼は、太平洋戦争当時学徒兵として参戦したことを契機に、ヨーロッパのホロコースト問題、日本の戦争犯罪と責任の問題に関心を持ち、生涯をかけてこの分野を深く掘り下げてきた。 特に20世紀初頭の近代期に日本が韓国と中国で行った文化財略奪問題に深い関心を持ち、当時の状況を研究してきた。
2005年に東京で開かれた1905年乙巳保護条約を主題にしたシンポジウムで、彼は勒約 (乙巳条約)は国際法上無効であることを立証する新たな史料を出し反響を呼び起こした。 2010年に朝鮮王室儀軌など日本の宮内庁が所蔵していた図書の韓国返還を議論した衆議院外務委員会に参考人として立ち「文化財は生まれた場所にある時にもっとも価値が見出せる」と力説して、議会が返還承認を決める際に大きな影響を及ぼした。 宮内庁所蔵図書返還後に執筆した『略奪文化財は誰のものか』(原題『コロニアリズムと文化財』)は加害国日本の知識人がかつて韓国と中国で行った文化財略奪の転末と問題点、返還のための代案などを省察した結果だ。 今年韓国内でも翻訳出版され、新たに関心を触発した。
「対馬の仏像盗難事件が報道されたが、日本国民の大多数は文化財返還にこれと言った関心がありません。日本政府が現地に流出した韓国文化財の具体的な現況をこっそり把握したという話も聞きましたが、私が知る限りではまともに調査したことはありません。 それよりは、未来指向的観点で可能な関心と協力を引き出さなければなりません。 例えば、韓日両国にまたがる通信使遺跡を世界遺産次元でどのように扱うかを議論できるでしょう。 韓日協定50周年を迎える来年に、東京国立博物館が所蔵している朝鮮半島文化財である小倉コレクションを返還するならば、韓日関係がもう少し良くなるのではないでしょうか?」