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≪編集局から≫ 義務給食、認識の転換

原文入力:2011-01-12午後09:21:50 (1866字)
←チョン・ジェグォン社会部門編集長

無償給食の代表的反対論者であるオ・セフン ソウル市長にぜひ読んで欲しいと思う文がある。 イ・ジュング ソウル大経済学科教授が昨年自身のブログにあげた文だ。イ教授の論旨の骨組みはこうだ。
「無償給食に社会福祉の次元から接近するのは正しくない。 無償給食が社会福祉と関連するのは事実だが、政府がこの問題に介入しなければならない当為性は別のところにある。

現代の政府が遂行する多様な経済的役割のうち国防・警察サービスのような公共財を生産・供給することは重要だ。 小さい政府を好む人でも公共財と関連した政府介入の当為性は否定しない。 そして公共財とともに政府の介入が必要なもう一つの商品がすなわち価値財(merit goods)だ。

価値財は公共財と混同されもするが、厳然たる別の概念だ。 価値財はすべての国民に少なくとも一定水準以上の恩恵が渡らなければならないという観点から政府が直接生産・供給する商品を意味する。 医療、住宅、教育サービスが良い例だ。 義務教育は教育が価値財の性格を持つゆえに政府が介入する代表的事例である。

無料給食を社会福祉政策として見れば、富裕層に無料給食の恩恵を与えるのは不当だ。 政府は助けが必要な人にだけ恩恵を与えなければならないからだ。 しかし無料給食が価値財であるため政府が介入しなければならないものと見れば、結論は180度変わる。 公共財や価値財の性格を持つ商品は無償配分が原則だ。」

イ教授の価値財という概念は新しい接近法を提示する。 すべての国民が共同体の基本価値を体得して一定水準の知的能力を持てるようにと初等・中等9年間の教育を義務化したように、子供たちが差別を感じないで栄養状態を維持することができるように公平な食事を提供しようということだ。 無償給食よりは「義務給食」という表現の方がより適切だという趣旨だ。 保有株式価値が9兆ウォンを越えるイ・ゴニ三星電子会長の孫が義務教育を受けても、誰も問題視しないではないか。

もちろんこういう認識の転換が無償給食をすぐ実現してくれるわけではない。 何より「お金が空から落ちてくるのか」という批判は最も大きな障害物だ。

しかし、「選挙戦で有権者にお金を撒くような行為」だとか「亡国的左派ポピュリズム」云々と無償給食を盲目的に非難するのではなく、政策優先順位と財源調達方法などを冷静に検討する姿勢さえ備えるならば、道は見えてくる。

まず、いい加減に使われている予算を減らせばいい。4大河川に堰を設けて水路を作るのに使われる天文学的な額の予算にまで手をつけなくても、とりあえず4大河川の堤の上に1728kmの自転車道路を作る予算2000億ウォンを削ってみよう。そんな道路ができたってこの厳冬に誰が自転車でそのセメントの道を走るというのか。

「金持ち減税」と批判されている所得法人税の減免を止めればさらにいい。政府の計画通りなら2012年からこの税金減免により年に3兆~4兆ウォンの税収が減る。このくらいあれば義務給食をしても残る。その上富裕層がより多く出した税金で富裕層の子弟まで義務給食を受けるなら、公平性の問題も出ないだろうから、一挙両得だ。

「可能な範囲で漸進的に」無償給食を進める方法もある。民主党が最近出した統計を見れば、この3月から全国229の市・郡・区の79%(181ヶ所)が初等学校の無償給食を実施する。インチョン、オンジン郡のように幼稚園から初・中・高まで全面実施するところがあるかと思えば、ある自治体は幼稚園から初・中まで、また別の自治体は初・中で全面あるいは部分無償給食を実施する。どこも大体ソウル市より財政自立度は低いが、与えられた条件に応じて「賢明な」一歩を踏み出しているのだ。

オ市長が住民投票という賭けにまで出たのだから、給食論争はいっそう熱くなる見込みだ。すでに争点になった以上、無償給食のイシューを社会的弱者に対する配慮の次元でなく「すべての国民に一定水準以上のサービスが提供されなければならない」という価値財の次元に一段階高めたらいいと思う。今必要なのは、認識の転換だ。

チョン・ジェグォン社会部門編集長 jjk@hani.co.kr

原文: https://www.hani.co.kr/arti/SERIES/54/458462.html 訳A.K