世界の人工知能(AI)市場を牽引する先頭企業の新種の金融取引のやり方が、AIバブル論に再び火をつけている。チャットGPT(ChatGPT)を開発した企業である米国のオープンAIや、AIチップ開発会社のエヌビディア(NVIDIA)、AMDなどの「循環取引」の構造が、外形上の売上と企業価値を膨らませているのではないかということだ。国際機関の首長もAIバブルを警告している。
9日の業界の話によると、このような議論の中心にあるのはオープンAIだ。同社は6日(以下現地時間)、AMDと戦略的パートナーシップ契約を結んだ。AMDはエヌビディアに次ぐAI演算用チップ(GPU)分野2位の半導体設計会社だ。
この契約によりオープンAIは、AMDが来年下半期に発売予定のAIチップ(AIアクセラレータ「MI450」)を数千億ドル分購入することにした。その見返りとして、AMDは自社の株価が1株あたり600ドルを超えたら、普通株最大1億6000万株(持株の約10%)を1株当り0.01ドルで買える新株の取得権をオープンAIに提供することにした。
AMDの現在の株価は今月8日の終値基準で1株当たり235.56ドル。オープンAIの大規模なチップ購入がAMDの売上および株価向上に貢献することから、会社の株式を安値で渡し、オープンAIの投資の負担を減らすという構造だ。AMDのリサ・スー最高経営責任者(CEO)は「AIのエコシステム発展に向けたまっとうなウィンウィン戦略」だと自評した。
AI企業の大規模な循環取引は今回が初めてではない。エヌビディアも先月23日、オープンAIに最大1千億ドルを投資すると発表した。この投資金はオープンAIがエヌビディアのAIチップを賃借(リース)するのに使う計画だ。エヌビディアは、AIインフラサービス企業である米国のコアウィーブなどの新生企業にも投資などを大幅に拡大している。この投資金も同様に、新生企業各社の「エヌビディアのチップ購入」へと再びつながっている。
このような取引構造は、表向きは双方にとって「一石二鳥」に見える。オープンAIは天文学的なAIインフラ投資資金を調達し、チップ供給会社も「大手」の取引先を先取りして収益を上げることができるからだ。
しかし、市場の疑問は少なくない。循環取引の構造の中心にいるオープンAIが、AIサービスを通じての収益が下がった場合、バブルが一気にはじけることもありうるためだ。
ブルームバーグ通信は8日、「ますます複雑になり相互に連結された取引構造が数兆ドル規模のAIブームを人為的に支えているとの憂慮が広がっている」と指摘した。1990年代後半のドットコムバブル当時、ルーセント・テクノロジーなど通信の装備メーカーが通信の事業者に巨額を融資し、自社の装備を買わせた「ベンダー・ファイナンス」(供給者金融)と類似していいるという話だ。これは当時、ドットコムバブルを拡大させた原因として指摘された。オープンAIの今年上半期の売上高は43億ドル、営業赤字は78億ドルにのぼる。
当事者らはこれを一蹴している。オープンAIのサム・アルトマンCEOはこれに先立つ6日、開発者カンファレンスの直後に「いまは一種のバブルと考える部分がある」としながらも、「これは単に新しい技術の革命が進められているかたち」だと強調した。エヌビディアのジェンスン・ファンCEOも8日、CNBCのインタビューで「(オープンAIとAMDの取引構造は)想像力が傑出し、独特で驚くべきものだ」と評価した。
一方この日、国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は米国のワシントンで開かれた行事で「現在の企業価値評価は25年前のドットコムバブルの水準に向かっている」として「(株価急落時)世界経済の成長率が下落し、脆弱性があらわになる可能性がある」と警告した。