米国が9月30日(現地時間)、北朝鮮と「前提条件をつけずに」対話できるという意思を明らかにしたことで、しばらく止まっていた朝米間対話に向けた動きが再開される可能性が高まった。状況の変化によっては今月末、慶州(キョンジュ)アジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に出席するため訪韓するドナルド・トランプ米国大統領の動線に合わせ、6年前のような板門店での「サプライズ会合」が開かれる可能性も排除できない。韓国政府は朝米対話を導き、凍りついた北朝鮮と対話の扉を開くという「ペースメーカー」論を掲げてきた。新たな対話の流れを先導するペースメーカーの役割をうまく遂行できるよう、米国はもちろん中国とも「戦略的意思疎通」を強化し、徹底的に備えなければならない。
ホワイトハウス当局者はこの日、「トランプ政権は核問題に言及せず、北朝鮮と対話することに開かれているのか」というメディアの質問に対し、「米国の対北朝鮮政策には変わりがない」としつつも、「トランプ大統領は金正恩(キム・ジョンウン)委員長といかなる前提条件もつけずに対話することに依然として開かれている」と答えた。先週、ホワイトハウスは同じ趣旨の質問に対し、「トランプ大統領は、北朝鮮の完全な非核化を達成するための方策として、対話に依然として開かれている」と答えた。「北朝鮮の完全な非核化」が抜けて「前提条件を付けずに」という内容が新しく加わった点が目を引く。朝米対話の再開を希望するトランプ大統領の意向を反映し、ホワイトハウスが対話の敷居を下げたものとみられる。
こうなれば、北朝鮮の金正恩委員長が先月21日に掲げた対話再開の要求条件である「非核化への執着」の放棄を米国がある程度満たしたことになる。ノーベル平和賞の受賞を狙うトランプ大統領が(朝米対話を)切実に望んでおり、金委員長も前向きな立場を示したことで、すぐに朝米対話が再開されてもおかしくない状況になった。
だが、冷静に状況を見回すと、韓国の戦略的地位は「朝鮮半島平和プロセス」が稼動を止めた2019年下半期に比べて大幅に弱まっている。当時は南北関係改善が朝米対話を導いたため、韓国の「仲裁者」の地位が比較的盤石で、金委員長も「朝鮮半島の完全な非核化」を前提とした対話に応じていた。
韓国政府の第1目標は、朝米対話を通じて北朝鮮の核能力が大きくなることをひとまず「中断」(凍結)させることだ。韓国を対話から排除しようとする北朝鮮の「露骨な抵抗」と対話自体を快く思わない日本の「執拗な牽制」が予想される。韓米間の緊密な疎通を通じてこれらを乗り越えなければならない。