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韓国外交「複合危機」克服のための3つの道【寄稿】

登録:2025-10-02 07:58 修正:2025-10-02 08:26
李在明大統領が今年8月25日(現地時間)、ホワイトハウスのオーバルオフィスでトランプ大統領と韓米首脳会談をおこなっている/聯合ニュース

 韓国は今、複合的かつ重層的な危機に直面している。生存と繁栄の基盤となってきた米国は衰退傾向を示しており、別の国になりつつある。それに起因する衝撃を吸収する過程で、国の進路をめぐって米国のリーダーシップは揺らぎ、対立と混乱は全世界へと広がっている。米国第一主義への方向転換は、韓国の成長と発展に大きく寄与してきたグローバル化の退潮という副作用を生んでいる。米国は、グローバル化の最も重要な象徴の一つである世界貿易機関(WTO)体制の終えんを宣言している。米国中心の同盟と協力体制にも亀裂が生じている。韓国は北朝鮮核危機などの安保不安、経済と社会の二極化、超少子化・超高齢化と産業の空洞化による地方消滅、未来を担う先端科学技術の発展の停滞に加え、主要製造業が崩壊した米国から関税・投資で圧力もかけられている。弱り目にたたり目で、違憲で違法な12・3非常戒厳は韓国社会内部の奥深くで沸騰していた対立と不信のマグマを噴出させ、「韓国」という共同体を根本から揺さぶっている。

 共同体の統合は生存と繁栄のための前提条件であり結果だ。生存の問題に直結する経済は、国防と福祉の基礎でもある。共同体の統合のためには経済、国防、福祉の問題を多くの国民が同意する方向で解決しなければならない。再編されつつあるグローバル市場で韓国が生き残っていくためには、今まで存在しなかった次元の異なる産業戦略が必要だ。人工知能(AI)、量子コンピュータ、新概念半導体、ヒューマノイド、空飛ぶクルマなど、軍需用に転換できる超格差産業を育成しなければならない。そのためには、何よりもエネルギーが安定的に供給されなければならない。再生可能エネルギー、原子力、核融合技術の開発を含め、AIの発展など韓国の産業と安全保障の現実を総合的に考慮した遠大なエネルギー戦略を立てる必要がある。人的資源の質を高めるための教育システム改革(教師の専門性の向上、学生の選抜と教育のあり方の改善、国と企業による支援の拡大)も緊要だ。

 変質してしまった米国は、もはや確実な安全を保障してはくれない。韓国に米国の対外政策の方向性を変える力はない。北朝鮮の核問題に加え、近隣諸国の軍備拡張は、安全保障の環境をより不安定にさせている。中国やロシアなどのライバルには融和的で、韓国や日本などの同盟国には強迫さえいとわない米国ばかりについていくのは危険だ。生存を確保し繁栄を持続するためには、外部勢力の侵略に備えた独自の防衛体制と、作戦遂行能力を備えた国防体制を構築しなければならない。そのためには、戦時作戦統制権の返還を綿密に検討する必要がある。韓国政府は、ソ連崩壊で滅亡の危機に直面していた北朝鮮の指導者、金日成(キム・イルソン)が1992年1月に特使キム・ヨンスンを通じて米国政府に提案した米朝平和協定の締結と国交樹立、ワシントンと平壌(ピョンヤン)への外交公館の相互設置、朝鮮半島内の米軍駐留を認めることなどの提案をはねつけた。北朝鮮はまもなく崩壊するだろうという誤った判断を下したからだ。北朝鮮を中国の勢力圏から切り離し、ほぼ永久に安定した南北関係を構築する絶好の機会を、自ら放り投げてしまったのだ。覆水盆に返らずだ。独自の作戦企画と遂行が可能な国防体制の構築に最も必要なことの一つは、高性能の軍事衛星の確保などの独自の情報システムの構築だ。独自の情報システムの確保などの強力な軍事力の基礎は、先端科学技術によって担保される製造業の継続的な成長と発展だ。製造業なくして防衛産業も国防もない。

 内部分裂は韓国社会を不安定にし、活力をむしばみ、経済成長と発展を停滞させる。分裂は経済・社会的二極化を養分にして成長する。階層、世代、性別、出身地域によって分裂した国民を一つにまとめる最良の方法は、何よりも経済と福祉の面での明確なビジョンの提示だ。そのためには、すべての階層、すべての世代のための経済・社会システムの改革が必要だ。雇用不安の解消、労働生産性の向上、正規労働者と非正規労働者、元請けと下請けなどの様々な差別問題の解決に向けた労働改革、世代統合型の福祉制度の設計などを通じて、すべての階層と世代に安定と希望を提供しなければならない。若い世代には希望を、既成世代には安定を提供してこそ社会全体の活力はよみがえる。韓国は今、自らに問い、答えなければならない。どのような産業政策でどのように未来を先導するのか、どのような国防政策でどのように外部勢力の脅威に立ち向かうのか、どのような福祉政策でどのように分裂を克服するのか。国民とともに答えを探らなければならない。対立と分裂を乗り越えて共同体を統合する政策を企画・実行していった時、ようやく韓国は危機のトンネルから脱することができるだろう。

//ハンギョレ新聞社

ペク・ポムフム|京畿大学政治専門大学院教授、元フランクフルト総領事 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1221864.html韓国語原文入力:2025-10-01 19:41
訳D.K

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