李在明(イ・ジェミョン)大統領が日本と米国への歴訪を通じて韓米日3カ国協力を強化するやいなや、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長も6年ぶりに訪中を決定し、中国との関係強化に乗り出した。金委員長の北京訪問には、韓米日協力に対抗して朝中ロ連帯を強めるという目的があるのは否定しがたい。急変する国際情勢の中で韓国が国益を守り、朝鮮半島情勢を望む方向へと導いていくには、米国との関係だけでなく、中ロとの戦略的な意思疎通も切実に求められる。「安米経中」(安全保障は米国、経済は中国)が容易でなくなった時代においては、韓中関係を安定させつつ「外交的選択肢」を広げる不断の努力が必要だ。
金委員長は3日に出席する中国の戦勝節80周年祝賀行事で、中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領と並び立つ予定になっている。ロシアのウシャコフ大統領補佐官(外交政策)は先月30日、「軍事パレードの間、プーチン大統領は中国の習近平国家主席の右に、北朝鮮の指導者は彼の左にいるだろう」と述べた。習主席が米国のトランプ大統領の傍若無人な「米国第一主義」政策に抗し、朝中ロ3カ国協力を強化しようという明確な意図を抱いていることが分かる。ただ、3カ国の首脳会議が行われるかはまだ確認されていない。
視野を広げれば、金委員長の訪中の持つ戦略的意味がよりはっきりと把握できる。習主席は1日に天津で開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議での演説で、自分たちが「公平と正義を堅持」しつつ「世界貿易機関(WTO)を核とする多国間貿易体制を支持する」と表明した。前日には米国の「中国包囲戦略」の要となるパートナーであるインドのモディ首相と会談し、アジアの2つの大国は「龍と象の舞」を実現すべきだと強調した。中国が自らを「トランプ大統領が破壊しようとしている自由貿易体制の守護者」と位置づけつつ、「グローバルサウス」を糾合して米国に対抗する巨大な戦線を構築しようとしていることが分かる。中国にとって金委員長の6年ぶりの訪中は、この青写真において一種の「画竜点睛」となりうる。
チョ・ヒョン外相は31日、金委員長の訪中で「北朝鮮が中ロとの協力をさらに強めることになれば、懸念せざるを得ない」と述べた。北朝鮮の戦略的地位が強まれば、韓国が望む朝鮮半島の堅固な平和と完全な非核化はますます遠のくことになる。米日中心の「半分の外交」ではそれを止めることはできない。真の外交はこれからだ。