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[寄稿]韓国陸軍士官学校の恥ずかしいルーツ探し

登録:2023-09-12 06:29 修正:2023-09-12 08:35
海軍士官学校は2011年8月31日、校内の孫元一館前で、海軍創設の主役として「海軍の父」と呼ばれる孫元一提督の胸像を除幕した。孫提督の夫人ホン・ウネ女史と海軍指揮官などが高さ90センチ、幅70センチの青銅で製作された胸像を除幕している/聯合ニュース

 私は海軍士官学校(海士)を卒業した。陸軍士官学校(陸士)とは異なり、慶尚南道鎮海(チンヘ)に位置する海軍士官学校はその位置のため、大学として教育施設とインフラが集中した首都圏の利点を享受するのが難しい。海士の学生たちがソウルの有名大学と単位交流のような恩恵を受けられる陸士を羨ましく思っていたのもそのためだった。単独の敷地を持ち、雄大さを誇る陸士の施設に比べ、鎮海の海軍基地内の片隅に位置し、古い建物を改造して使っていた我が校がみすぼらしく思えた。

 しかし、海士の学生には陸士がいくら努力しても絶対に持てない自負心の根源がある。海軍と海士創設の主役である孫元一(ソン・ウォ二ル)提督の存在だ。孫提督は臨時政府の議院議長を務めた独立運動家の孫貞道(ソン・ジョンド)牧師の息子で、自身も中国吉林で独立運動に身を投じ、朝鮮海軍を創設するため中国海軍部に入って訓練を受けたのち、1934年に臨時政府の軍資金調達と武装闘争のため平壌(ピョンヤン)に潜入したが、逮捕され収監された。孫提督は光復(植民地解)にともなって帰国し、大韓民国海軍の前身である解放兵団を創設し、1946年、海軍士官学校の前身である海軍兵学校を設立して初代校長を務めた。

 海士では海軍創設と孫元一提督について詳しく教育し記念する。海軍がどこから始まり、どのような価値を志向すべきかを学生たちに叩き込むためだ。学業と品行が優秀な学生には「孫元一賞」が授与される。潜水艦「孫元一」は「張保皐2」事業を通じて建造された潜水艦の先導艦となり、この潜水艦の型には「安重根(アン・ジュングン)」、「金佐鎮(キム・ジャジン)」、「李範錫(イ・ボムソク)」、「柳寛順(ユ・グァンスン)」、そして「洪範図(ホン・ボムド)」が含まれている。海軍の発展と地位を代表する潜水艦に独立英雄の名前を付けることで、海軍のルーツが抗日独立闘争にあるというプライドを心に刻むためだ。

 一方、1946年に創設された国防警備士官学校を前身とする陸士の「ルーツ探し」は、2017年、文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の指示によって行われた。陸士は同年12月「独立軍・光復軍の独立運動と陸軍の歴史」という特別学術大会開催を通じて、新興武官学校と陸士の直接的な継承関係が存在すると主張した。当時、陸士のパク・イルソン教授は学術大会で「新興武官学校などの武官学校が独立戦争の土台を作ったことから、陸士の精神的正統性の淵源とみなすべきだ」と語った。

 しかし、この流れは尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権発足後、「韓米同盟に基づいた国軍のルーツを変えるための計画的な措置」とみなされ始めた。8月31日の「中央日報」の報道によると、現政権の胸像移転計画は、前政権が南北関係を考慮して緻密に軍のアイデンティティを変えようとした状況を正すための正常化措置だという。新興武官学校と独立軍活動のどこを親北朝鮮的だと解釈でき、抗日武装闘争がなぜ韓米同盟の価値に反するのかは理解できない。もしかして、韓米日軍事協力が強化される状況で、「抗日」という価値が邪魔になると考えたのだろうか。

 過ぎ去った歴史に対して意義を見出し守ることは後世の役割だ。名前を除いては家族も財産も残せず祖国もなかったが誰よりも抗日武装闘争の先頭に立ち、戦闘で輝く功績を立てた独立闘士よりも、赤狩りに邁進したのと同じくらい同胞狩りにも没頭した親日附逆軍人の集団が、陸士と陸軍にとって適切なルーツだと判断したならば、それを貫けばいい。結局、政権の指示でそのルーツたるものが揺さぶられるというのは、陸軍の根幹と建軍理念に対して陸軍も恥ずべきところがあり、それをアキレス腱として認識していることを意味する。

 潜水艦「洪範図」の名称を変更するよう首相と長官が圧力をかけている中、海軍はまだ断固として持ちこたえている。名称が最終的に変更されたとしても、海軍にはこれに反対した歴史が残る。ルーツというのはこのような力を持つ。陸士もこの際、揺さぶられないようしっかりと根を下ろしてほしい。その根っこがどんな力を与えるのか、今度は恥ずかしい思いをせずにいられるかは分からないが。

//ハンギョレ新聞社
パン・ヘリン | 元軍人権センター活動家・予備役大尉(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1108089.html韓国語原文入力:2023-09-12 02:36
訳H.J

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