韓国政府は強制動員問題の「第三者弁済」解決策を受け入れない被害者と遺族を標的として、判決金を裁判所に供託する手続きを踏んでいる。供託すれば債務者の債務が免除されるため、日本の戦犯企業の債務を免除し、強制動員被害者の債権を消滅させることが目的だとみられる。韓国の国民である被害者は日本企業の直接賠償を要求しており、最高裁(大法院)判決も日本企業に賠償を命じているが、肝心の政府は日本企業の法的責任を免じることに躍起になっているようだ。一体どこの国の政府なのか。
政府が推し進めている判決金の供託は法理的に問題が多い。政府は、ヤン・クムドクさんら4人の原告が日帝強制動員被害者支援財団の肩代わりをする判決金を受領しなかったため、「すでに政府から弁済金を受領した11人の被害者との公平性などを考慮して」供託を行うことになったと主張する。最近まで被害者の説得を優先する態度を示していた政府は、判決金の受領を拒否する被害者が少数になったことで態度を変えたのだ。だが、「第三者」による供託は債権者が同意しなければ効力が認められないというのが多数説だ。さらに、被告である日本企業は強制動員被害者に対する債務の存在そのものを最初から認めていない。「1965年の韓日請求権協定ですでに解決済み」というのが彼らの一貫した立場だ。したがって、政府の供託は債務者である日本企業の意思にも反するものだ。韓国の民法(469条)では「利害関係のない第三者は債務者の意思に反して弁済することはできない」となっている。
政府が申請したヤン・クムドクさんの訴訟に関係する供託を光州(クァンジュ)地方裁判所が4日に不受理としたのは、このような事情を考慮した当然の決定だ。外交部は憲法上保障された「裁判官から裁判を受ける権利」を侵害するものだとして「類例のないこと」と反発したが、日本の戦犯企業のために自国民の権利を消滅させようとする行為こそ前例のないものだ。
政府の「供託強行」に市民は募金運動で対応している。判決金の受領を拒否した被害者と遺族のための募金運動をはじめた日帝強制動員市民の会によれば、募金開始から2日後の4日現在、募金額は1億ウォン(約1110万円)を超えている。特に政府の判決金供託が報じられてからは、募金参加件数が200件あまりから1日で1400件あまりに急増したという。市民は強制動員被害者の名誉を守るために自費を投じて参加している。しかし政府は強制動員被害者の正当な権利すら侵害している。あきれるばかりの状況だ。