本文に移動
全体  > 経済

ウォン安ドル高で韓国企業「収益防衛」急ぐ

登録:2022-09-15 02:55 修正:2022-09-24 10:25
クリップアートコリア//ハンギョレ新聞社

 ウォン安ドル高が1400ウォンに迫ったことで、韓国の産業界も非常事態となっている。一部の輸出企業はウォン安で価格競争力を確保できるが、ドルで原材料を購入して製品を作るほとんどの企業は収益性の悪化が避けられない。世界の主要国の通貨がいずれもドルに対して弱含みであるため、ウォン安による輸出価格競争力を完全に期待するのは難しいという点も悪材料となっている。

 最も心配なのは航空業界だ。燃料費やリース料などをドルで支払う航空会社は、ドルが上がれば上がるほどコストが増えざるをえない構造だ。ウォン安ドル高が10ウォン進むたびに大韓航空は350億ウォン(約35億9000万円)、アシアナ航空は284億ウォン(約29億1000万円)の為替差損が発生する。すでにウォン安の余波で第2四半期に大手航空会社の為替差損益は損失に転じているが、ウォン安ドル高がさらに進めば損失は拡大せざるを得ない。大韓航空は、ウォンの固定金利の借入をさらに増やすとともに、借入通貨を円などへも多角化し、ドルによる借入の割合を減らしている。また、貨物事業の好調と外貨収益の増加で為替差損を一定程度は補えると期待している。

 旅行業界はコストの増加より、まさに正常化しつつある海外旅行心理が再び凍りつくことを懸念している。旅行会社「ベリーグッドツアー」の関係者は「旅行経費の半分以上を占める航空料はウォンで決済し、30%程度が宿泊費などの地上でかかるコストだ。数万ウォン程度の上昇要因なので影響は大きくはない。欧州商品が40%程度だが、ユーロも同じく弱含みで、大きな打撃はない」と述べた。

14日のソウル外国為替市場では、米国発の物価ショックの影響で取引中に1ドル=1395.5ウォンまでウォン安ドル高が進んだ。終値は前日よりウォン安ドル高が17.3ウォン進んだ1390.9ウォン=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 自動車業界は、完成車メーカーと部品メーカーとではウォン安ドル高の影響が異なる。輸出の割合の高い完成車業界はウォン安で価格競争力が高まるが、原材料を輸入しなければならない部品メーカーはドルが上がれば上がるほど損害が大きくなる構造であるため懸念される。原材料購入コストの上昇分を直ちに納品単価に反映することは難しいのが現実だからだ。大林大学のキム・ピルス教授(未来自動車学部)は、「完成車メーカーはウォン安ドル高で大きな利益を得ているが、海外から原材料を調達する部品メーカーは非常に厳しい。完成車メーカーは上昇したコストを補填してくれない。業界レベルでウォン安ドル高効果にともなう利益を共有する必要がある」と述べた。

 普段から外貨で輸出入決済を行っている鉄鋼メーカーなどの企業は、為替変動性にともなう影響が比較的小さい。為替レートの変動による輸入コストの増加分を輸出での収益増加分が相殺するためだ。国内の鉄鋼業界は年間1億トン以上の鉄鉱石と原料炭を輸入するが、同時に輸出量も世界4位だ。ポスコの関係者は「シナリオごとに見通しを立てて為替レートの変動性の拡大が経営活動に及ぼす否定的な影響を最小化している。普段から鉄鋼製品を輸出して稼いだ外貨で有煙炭や鉄鉱石などの主な原料を購入するという常時的な『ナチュラル・ヘッジ』で対応している」と語った。

 海外での売上の割合が高い国内のゲームメーカーは「ウォン安ドル高による恩恵」を期待する。第2四半期の国外での売上の割合が85%を占めるネットマーブルは、北米での売上が50%に迫っており、為替差益を得る可能性が高い。クラフトンやパールアビスなども国外での売上比率が80%を超えるため、為替差益を期待している。逆に知的財産権(IP)使用料の支払いなどの海外事業コストが増えるのは負担になる。ネットマーブルの関係者は「マーベル・フューチャーファイトのように海外の知的財産権コストをドルで支払ったり、海外企業の買収の際に借り入れた債務の利子支払い過程で為替差損が発生する恐れがある」と語った。

 大韓商工会議所の関係者は「ドル債務が多い企業は利子と返済の負担が増加するし、大規模海外投資の財務的リスクも高まる。ウォン安ドル高が長期化すれば、大企業も来年の経営計画を立てる際に投資計画を再調整せざるを得ないだろう」と語った。

キム・フェスン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/1058588.html韓国語原文入力:2022-09-14 16:48
訳D.K

関連記事