電気自動車、ディスプレイ、半導体などの領域で中国関連業務を行ってきた現場の専門家が書いた『チャイナショック、韓国の選択』は、このような期待に応えて中国問題を総合的に分析しようと試みた本だ。最近論争を起こした『チャンケ主義の誕生』が、「新冷戦」や「チャイナリスク」などは保守主義の企画が作り出した虚像だと主張したのとは正反対に、著者は「韓国にとって中国という国は実体的な脅威かつ巨大なリスクであり、この国の山積した問題が積み重なって形成された『チャイナショック』がますます韓国社会に深刻な影響をもたらすだろう」とみている。
歴史的に中国は長い間、朝鮮半島に存在する脅威だったが、近代以降の冷戦時代を経て、韓国と中国は国交正常化から20年以上お互いに役立つ「黄金期」を送ることができた。しかし、中国に対して友好的だった韓国内の感情は、2015年以後たった7年で「反中」に変わった。これに対して著者は「数年間で韓国人が突然人種主義者になったという説明よりも、韓国人の中国に対する認識を変える大きな変化が中国で発生したとみる方が説得力がある」と述べている。中国の実質的な変化とは何であるかを直視しなければならないということだ。
変化の中心には、改革開放以前の30年と以後の30年を自身のやりかたで統合しようという野望を持った習近平政権がある。著者によれば、習近平は「毛沢東時代の肯定的な遺産を継承し、鄧小平時代の副作用と否定的な面を克服しようとする、一種の新毛沢東主義者であり、同時に米国と西欧の没落と中国の浮上を既成事実と信じる反西欧的伝統保守主義者」だ。改革開放は「社会主義市場経済」という一見矛盾した志向点を掲げたが、中国は集団指導体制を基盤に、米国が主導する世界経済の下で急速に成長することができた。しかし、2012年に政権についた習近平は、改革開放の間に蓄積された政治・経済・社会的矛盾に大々的にメスを入れる一方、「中国夢」を前面に押し出し、米国主導の世界秩序に挑戦状を突きつけるなど大々的な方向転換をする。著者は、2008年の米国発金融危機問題が中国に与えた自信、2012年の薄煕来政変危機の結果廃棄された集団指導体制などがその背景にあると分析する。
「習近平と新毛沢東主義と反西欧的伝統保守主義は、中国内部に向けては社会的反動を、中国外部に向けては覇権的な外交戦略を呼び起こすことになる」。 いわゆる「中国脅威論」は中国の勃興自体を問題視するが、著者は「衰退する中国」がむしろより大きな問題である可能性もあるとし、中国内部の構造的問題点、すなわち「見えない中国」に注目する。極端に広がった都市・農村格差とこの問題の解決を遮る「戸口(戸籍)」制度、あまりにも早く訪れた人口絶壁、雪だるま式に積もった負債、一時は「現能主義」と呼ばれ経済成長の中心動力に挙げられたが、今はその弊害がますます膨らんだ独特の政治構造など、著者はほぼすべての「チャイナリスク」を一つひとつ追及する。
どんな方向であれ「ショック」を避けられない不確実な状況の下、私たちは何をしなければならないのか。著者は中国という帝国の帰還が呼び起こした「新冷戦」時代を冷静に見通す一方、気後れするのではなく自信をもって周辺の大国に対応していく必要性を強調する。反中に巻き込まれるのではなく、「国益の最大化の観点から中国を積極的に活用する」ための「用中」は基本であり、半導体産業で中国との「超格差」を維持する一方、中国に対する経済的・産業的依存度を「漸進的」に縮小していかなければならないと説く。東アジア内の勢力均衡のために、日本を戦略的パートナーとする必要性も提起する。