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尹次期大統領側が掲げた「検察法案めぐる国民投票」、自縄自縛になるか

登録:2022-04-29 06:35 修正:2022-04-29 08:33
尹錫悦次期大統領が今月28日、忠清南道洪城郡の自動車部品認証センターで、イ・ドンミン忠清南道庁建設交通局長から内浦新都市関連のブリーフィングを受けている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 検察の捜査・起訴権分離法案の賛否を問うとして、尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領側が連日、国民投票を主張しており、政治的波紋が広がっている。与野党の合意破棄と内閣人事の失敗による危機打開のため、尹次期大統領側と国民の力が国民投票を推し進めているが、憲法上の付議の要件に該当せず、実現の可能性も非常に低いため、自縄自縛になりかねないという指摘もある。

 チャン・ジェウォン次期大統領秘書室長は28日、ソウル鍾路区通義洞(チョンノグ・トンウィドン)の政権引き継ぎ委員会前で記者団に対し、「現行の規定では(検察関連法の)国民投票は不可能だ」という前日の中央選挙管理委員会の説明について、「選管は合議制の機関なのに、事務局職員たちがそのように発言するのは越権だ」と述べた。韓国で国民投票法は、在外国民の参加を制限する第14条1項に対する憲法裁判所の憲法不合致決定によって、2016年から7年間効力を失った状態だ。同法が改正されない限り、6月1日の地方選挙でいかなる内容の国民投票も不可能だという中央選管の説明に、チャン室長が不快感を露わにしたわけだ。

 検察関連法に対する賛否は、憲法が国民投票要件と規定した「外交や国防、統一その他の国家安危に関する重要政策」(第72条)とも言いがたい。憲法裁判所は2004年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領弾劾審判でこれを厳格に解釈すべきだと判断した。憲法裁は当時、盧大統領が国民投票の形で再信任を問うのは憲法第72条に基づく付議でなく、「国民投票制度を自分の政治的立場を強化するための政治的道具として乱用してはならない」と明らかにした。尹錫悦次期大統領が大統領就任後、「検捜完剥(検察の捜査権完全剥奪)に関する国民投票」を地方選挙の時に強行すれば、違憲論争が巻き起こる可能性が高い。

 尹次期大統領側が、手続きの上でも内容的にも不可能な「国民投票カード」を取り出した背景には、「(政権交代後)巨大野党となる共に民主党の暴走」というフレームを強調し、6月の地方選挙で新政府に対する圧倒的な支持が必要だという点を強調しようという思惑があるとみられる。しかし、国民の力の内部でも半信半疑の声が上がっている。クォン・ソンドン院内代表は前日、検察庁法改正案が上程された国会本会議で反対討論の第一走者として、「国民投票にかければ、誰の主張が正しかったかについて確認できるだろう」と述べたが、無制限討論が終了した直後には記者団に「(国民投票は)引き継ぎ委の党役員が苦肉の策として出したアイデアではないかと思う」と述べた。尹次期大統領の意中を代弁するチャン室長の発言を、「少数与党」の限界を克服するための「中途半端なアイデア」程度に縮小したのだ。

 実際、実現の厳しさが予想される「国民投票カード」は、尹次期大統領側の自縄自縛になりかねない。6月1日に実施される地方選挙で国民投票が実施されるためには、「尹錫悦大統領」が投票の18日前までに投票案を公告しなければならない。大統領に就任するやいなや、国民の暮らしに関する懸案とかけ離れた検察関連事案をめぐり、事実上検察側に立って国民投票を行う政治的負担を抱えることになるのだ。0.73ポイント差で辛勝した尹次期大統領には、事実上の再信任投票になる可能性も排除できない。仁川大学のイ・ジュンハン教授(政治学)は、「尹次期大統領とチャン室長は支持層を結集し、地方選挙にも活用できる一石二鳥として国民投票を模索したかもしれないが、尹次期大統領の賛否を評価される『毒入りの聖杯』になり得る」とし、「国民の力が次期大統領の権力に振り回される姿をみせたことで、今後このようなことが繰り返される可能性もあるという印象さえ残すことになった」と語った。

イ・ジェフン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1040839.html韓国語原文入力:2022-04-28 23:33
訳H.J

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