本文に移動

コロナで死亡した7カ月の乳児を乗せた救急車はなぜたらい回しにされたのか=韓国

登録:2022-02-22 02:17 修正:2022-02-22 13:59
昨年12月14日午後、ソウル恩平区の市立西北病院で、救急隊員たちがコロナ患者を病棟に運んでいる=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 新型コロナウイルスへの感染が確認され、在宅治療を受けていた生後7カ月の乳児が、病院へ搬送される途中で死亡するという事件が発生した中、医療陣の感染と救急室の病床不足により救急医療システムが麻痺する恐れがあるとの懸念が出ている。在宅治療患者が50万人に迫る中、そのために救急搬送に遅れが出るなどの「救急医療の空白」を防ぐための対策が急がれると指摘されている。

 京畿道消防災害安全本部と中央災害安全対策本部(中対本)の21日の話を総合すると、今月18日午後8時33分ごろ、京畿道水原市長安区(スウォンシ・チャンアング)で生後7カ月の乳児が「ひきつけを起こしている」という通報が寄せられた。今月16日に感染が確認されたその乳児は在宅治療を受けていたが、救急隊が通報から6分後に駆け付けた際には心停止状態だったという。

 消防当局によると、救助隊員は心肺蘇生法を試み、周辺の10カ所以上の救急室に連絡を取ったものの、それらの病院の回答は「救急室内にコロナ病床はない」、「乳児は診療できない」、「救急室は現在運営していない」というものだった。救急車は現場をたってから約30分後の午後9時17分に、約17キロ離れた京畿道安山(アンサン)の大学病院に到着したが、子どもはすでに死亡していた。

 コロナの大規模な拡散が続いていることで、感染者や感染の疑われる患者を乗せて救急病床を探し求める救急車がたらい回しにされる事件が発生している。消防当局の関係者は、「オミクロン株が広がり、救急室への移送の遅延が発生している」と語った。コロナの救急患者を受け入れる病院がないため、感染が確認された妊娠女性が救急車内で出産する事態すら発生した昨年末の状況が再現される可能性もあるとの懸念も出ている。ただし今回の救急医療の空白は、前回とは少し異なると分析されている。昨年12月末には、稼働率が80%に達するほど重症患者病床が不足していた一方、20日午後現在の同稼働率は35.4%ほどで、まだ余力がある。

 問題は救急医療スタッフの集団感染だ。ソウル江東区(カンドング)のある大学病院は、民間医療情報ポータルサイトに「医療陣の感染により救急診療不可」と掲載されている。ソウルや首都圏の救急室が、医療陣の感染によって一定期間閉鎖されるケースが相次いでいるのだ。

 このため、医療スタッフが集団感染した際に救急医療を維持するための、医療機関の業務継続計画(BCP)の実施が必要と見られる。この計画には、予防接種を済ませた医療スタッフが感染しても、無症状・軽症の場合は3日間の隔離を経て勤務に復帰するとの内容が盛り込まれている。しかし、実際に適用される病院は多くない。忠南大学医学部のユ・インスル教授(救急医学科)は「濃厚接触でも起これば、医療スタッフからうつされたと患者に抗議される可能性があるため、依然として現場では負担に感じている」と述べた。

 医療スタッフだけでなく、救急室内の陰圧隔離病床なども不足している。コロナに感染している、または感染の疑われる救急患者は、救急室内の隔離病床で治療が行われてきた。しかし隔離病床の規模は昨年と同水準であるため、オミクロン株による感染者の多発によって感染した救急患者の入院が難しくなっている。ユ教授は「救急室は密集度が高いため、感染者が出るとそれそのものが閉鎖されるケースがある。コロナに病室が差し出されて以降は一般患者の入るべき病室が不足しているため、救急室にとどまる時間が長くなっている。一般患者も見なければならないため、コロナ患者を入院させ、隔離する病床も足りていない」と述べた。

 感染した救急患者に対しては、感染リスクを最小化しつつ救急診療を行う方法が早急に必要だ。ソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)は「オミクロン患者を陰圧隔離室で治療するというやり方より、救急室の高危険群を隔離治療するやり方の方が必要だ」と語った。政府もやはり、陰圧隔離病床でない場所にも感染者を入院させることを検討している。中収本の関係者は「マスクを外さずに診療を受けられる救急患者は、陰圧でなくても処置できるようにすることを考えている」と語った。

パク・ジュニョン、クォン・ジダム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1031986.html韓国語原文入力:2022-02-21 19:33
訳D.K

関連記事