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[コラム]オミクロンの台風、希望と絶望の間

登録:2022-01-26 06:30 修正:2022-01-26 08:22
オミクロン株が急速に広がり、今月25日の新規感染者数が8571人で過去最多を記録した/聯合ニュース

 昨年11月24日付けの同紙面に「ウイルスのタイムテーブルはウイルスが決める」と題するコラムを書いた。デルタ株にブレイクスルー感染まで、幾度となく新型コロナウイルスに裏をかかれてきたのだから、近いうちにコロナ禍以前に戻れるという期待はやめて、ウイルスと共存する暮らしを受け入れた方が良いかもしれないという話だった。韓国政府が今月1日から施行した「段階的日常回復(ウィズコロナ)」措置が、重症者の急増で暗礁に乗り上げる危機に直面していた状況だった。本当にコロナには終わりがないかもしれないという気さえした。

 言葉にしてしまうと現実になるというが、数日後、オミクロン株が世の中に自身の存在を知らせた。世界保健機関(WHO)が指定した13番目の変異であり、デルタ株に次ぐ5番目の「懸念される変異」だ。スパイクタンパク質に32種類の突然変異が生じたというニュースが皆を唖然とさせた。ところが、少し妙な反応も出た。デルタより強いものが現れたとして各国が先を争って国境を封鎖する中、一部感染病専門家の間でオミクロン株が「クリスマスプレゼント」になるかもしれないという楽観論が広がったのだ。オミクロン株が感染力は強いが、病毒性は低く、コロナパンデミックの終息時期を早めるかもしれないという話だった。

 もちろん、クリスマスプレゼントはなかった。オミクロン株が急速に広がり、米国や欧州の大半の国で連日、新規感染者数の最多記録が次々と更新された。感染者の急増で入院患者が増え、医療体制の逼迫が続いた。「感染者の津波が世界の保健医療システムを圧倒している」(WHO)とのため息も漏れた。これを受け、多くの国が防疫の手綱を引き締めた。オランダの場合、先月中旬から酒場や飲食店、カフェなどを閉鎖する厳しい封鎖に乗り出した。昨年7月に最も大幅に防疫規制を緩和した英国でさえ、マスク着用の義務化やワクチンパスなど強化された防疫措置を盛り込んだ「プランB」を稼動した。

 世界中がオミクロン株に緊張する理由は、恐るべき感染拡大スピードのためだ。国際統計サイト「アワー・ワールド・イン・データ」によると、米国の一日の感染者数は今月15日に80万人(7日移動平均値基準)のピークに達するまで、1カ月で6.7倍も増えた。今月5日にピーク(18万人)に達した英国も、1カ月で3.9倍に増えた。昨年末まで300人台で安定を保っていた日本は、今月に入り、オミクロン株の流行が本格化してから3週間で100倍以上に感染者が急増した。

 感染者の規模だけをみると災いに近いが、楽観的な見通しにも根拠がないわけではない。重症度がデルタ株に比べて著しく低いことが明らかになっているからだ。米国の致命率はこの1カ月で1.15%から0.25%に急降下し、英国も0.22%から0.18%に低下した。程度の差はあれ、オミクロン株の流行を経験している欧州のほとんどの国で致命率が下がっている。

 もちろん致命率が低いからといって安心できるわけではない。被害が小さいという意味で受け止めてもならない。短期間に感染があまりにも早く拡散しているため、重症者と死亡者の絶対的な規模は大きくならざるを得ないからだ。実際、米国の1日の死亡者数は、ここ1カ月で1300人台から2000人台に増えた。急増する患者に対応できず、医療体系が麻痺し、患者との接触による自宅隔離が増え、社会必須機能を維持することも難しい状況である。

 結局、オミクロン株の危険性は病毒性ではなく、拡散スピードにあるようだ。オミクロン株のこのような特徴は両面性を持っている。 まず、拡散スピードが速いため、ピークアウトまでにかかる時間が短い。英国や南アフリカ共和国などの前例を見ると、およそひと月弱のようだ。すでに英国は先月中旬から適用した「プランB」を27日から解除することにした。オミクロン株が新型コロナを「エンデミック」(周期的に発生する風土病)に変えるという見通しも示されている。しかし、流行の拡散からピークアウトまでの時間が短いというのは、それだけ被害が集中的に発生し得るという意味でもある。重症者と死亡者の急増や医療体制の崩壊、自宅隔離の激増による業務麻痺などがその例だ。

 オミクロンの被害を減らすためには、防疫・医療体制の再整備とともに、ワクチン接種率の向上が何よりも重要だ。米国と英国を比較すれば、示唆を得ることができる。流行がピークに達した頃、米国の100万人当たり集中治療室入院患者数は77人で、英国(13人)の6倍に達することが集計で分かった。専門家らは、3回目の接種(ブースターショット)に原因があるとみている。英国の3回目接種率は55%であるのに対し、米国は25%にとどまっている。最近、韓国国内の研究でも3次接種をすれば、オミクロンに対する中和能(ウイルスを無力化できる能力)が最大29倍増加すると分析されている。

 オミクロン株の流行は韓国ではどんな様相を呈するのだろうか。3回目の接種率(49%、60歳以上は85%)が比較的高いのは希望的な要素だ。国民がマスク着用とソーシャル・ディスタンシングを積極的に実践するという点も、拡散スピードを遅らせるのに役に立つかもしれない。しかし、既存の感染者数が他国と比べてかなり少ないというのは危険要素だ。再感染者は重症度が大幅に低下するという点で、韓国の重症化率が他国よりも高い可能性が高い。韓国の100万人当たりの累積感染者数は1万4000人で、英国(約23万人)の16分の1に過ぎない。

 オミクロン株との戦いでカギを握るのは、恐るべき拡散スピードを和らげ、感染者の発生曲線を最大限緩やかにしていくことではないかと思う。そうしてこそ、高危険群の被害を最小化し、医療体制など社会機能がマヒすることを防ぐことができる。もしかしたら「経験したことのない」規模の感染が数カ月間続く今回の危機が本当の「ウィズコロナ」の試験台なのかもしれない。

イ・ジョンギュ論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1028738.html韓国語原文入力:2022-01-25 18:50
訳H.J

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