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[コラム]「名門大学」や「一流大学」…序列化する韓国の「哀れな」差別表現

登録:2021-12-18 01:40 修正:2021-12-23 09:44

 「地雑大学出身なのに、よく翻訳家としてやっていけますね」

 映画翻訳家のファン・ソクヒ氏が自身のソーシャル・メディア・チャンネル「問いかけて答える」で受けた質問として紹介した内容だ。彼は『スパイダーマン』や『ボヘミアン・ラプソディ』などを翻訳してきた韓国を代表する映画翻訳家である。

 すでに一つの分野で優れた能力を認められた人に「地雑大学」(地方の雑多な大学)という差別表現を用いて出身学校を蔑むとは。これに関連した記事に対するネットユーザーらの書き込みは、苦笑を誘うものだった。「本当に哀れな人」、「自慢できるのは学歴だけの人生なんだろう」

「地雑大学」と「名門大学」は学歴主義に基づいた差別表現だ。最近は学歴を問わないブラインド採用が増えている=ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 しかし、私たちの周辺には思ったよりこうした「哀れな人たち」が多い。いわゆる「学歴主義」に陥った人たちだ。彼らにとって、社会が成績順に作った大学順位で上位の大学出身の人は尊敬に値するが、そうでない人は無視や嫌悪、差別をしてもいい存在だ。出身大学が誰かの能力のすべてであり、さらには誰かの人格まで語ると考える人をよく見かける。

 「名門大学出身のアナウンサー」「名門大学出身のエリート」などはメディアであまりにも聞き慣れた言葉だが、「有名で良い学校」という意味の「名門大学」という表現にも差別的態度が込められている。特定の大学に優越した地位を与えることで、他の大学を劣等なものと見なしてしまうからだ。文化体育観光部は「公共領域の差別表現及び代替語リスト」で、「一流大学」も大学を序列化する差別的表現の例に挙げた。

 学歴関連の表現だけではない。私たちが使う表現の中には、社会構成員を序列化する表現がかなり多い。特に、ソウルを中心にして他の地域を捉える表現は、韓国で地方に対する偏見がどれほど深刻かを物語る。「顔だけ見ると、とても洗練されていたよ。地方出身とは思えない」。この発言からは「ソウルではない地域の出身=ださい」という根拠のない論理がうかがえる。

 住居形態を基準にして序列化を助長する表現も多く登場する。一時、小学生の間で賃貸アパート(主に低所得層を対象にした賃貸専用のアパート)ブランドの「ヒューマンシア」や「賃貸(イムデ)アパート」を卑下する「ヒューゴ」(ヒューマンシア+乞食を意味するゴジ)と「イムゴ」(賃貸マンション+乞食を意味するゴジ)という言葉が流行っているという報道もあった。「そこに住む子と遊ぶな!」子どもたちが「住む所」で人を判断する大人を見て学んだ結果なのだろう。

 制度の変化で、出身校による採用の公正性が改善されているという嬉しいニュースも聞こえる。財団法人「教育の春」が今年9月に主催したフォーラム「公共機関ブラインド採用状況」では、雇用労働部の「公正採用政策の現場実態調査と政策課題分析」に基づき、340の公共機関のうち253の新規採用状況を分析した結果が発表された。これによると、公共機関および地方公企業に「ブラインド採用」が導入されてから2年半で、ソウル大学や延世大学、高麗大学出身の割合が8%から5.3%に減少した。一方、非首都圏大学出身の割合は同期間中、43.7%から53.1%に増加した。

 制度の変化だけで、差別の文化が一気に変わることはないだろう。大学入試において「地域均衡選抜選考」で入学した友達を侮辱を含め「地均虫(ジギュンチュン)」と呼ぶ人がいたように、ブラインド採用で入社した誰かに対して「制度のおかげで運良く選ばれた」と言う人がいるかもしれない。私たちの頭の中から、出身学校や住む地域、住居形態などがその人の能力であり、すべてだと見なす偏見と錯覚が消えない限り、学歴と地域、住居形態による差別は簡単には崩れないだろう。

キム・チョンヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/1023112.html?_fr=mb2韓国語原文入力:2021-12-14 12:37
訳H.J

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