本文に移動

限界に直面する韓国の医療現場「ひとまず日常回復の2週間停止を」

登録:2021-12-14 02:32 修正:2021-12-14 07:25
全国保健医療産業労組の組合員が13日午後、ソウル永登浦区の同労組本部で、「コロナ医療対応システム点検および現場証言」緊急記者会見を行っている/聯合ニュース

 「病院の現場は修羅場、戦場です。国立中央医療院は病床の回転率を上げるために、症状が少しでも好転すれば転院と退院を1日に複数回しなければならないのですが、看護師たちが転院業務まで担っているので、業務が大きく増えています。重症患者や高齢の患者の増加に伴って要求事項も増えているのに、病室やトイレの掃除、配膳業務まで補助人員なしで押しつけられているため、働き詰めで食事もまともにできないようになって2年になります。増える患者の臨終と遺体の管理までやっている看護師たちは、疲労とうつ症状でいつ現場を去るか分かりません。2年間、政府は何をしてきたのでしょうか」(国立中央医療院の看護師アン・スギョンさん)

 「コロナ専門病院であるソウル市立西南病院の204ある病床は感染者でいっぱいです。病院は感染者を見ているだけでなく、選別診療所、ワクチン接種、生活治療センターまで運営しており、最近の在宅治療の拡大により、病床の空きを在宅で待っている患者まで管理しています。このすべての仕事を既存の職員たちだけで何とかやり繰りしています。しかし、在宅待機の患者で、酸素飽和度測定器などの在宅治療キットを受け取れていない人は半数にものぼるのです。一人暮らしの高齢者は、在宅治療キットの使い方を聞いても分かりません。患者の具合が悪くなっても、自治体に病床を申請して、救急隊を呼べとしか言えないため、気が重いです」(ソウル市西南病院の看護師キム・ジョンウンさん)

 13日午後1時、ソウル永登浦区(ヨンドゥンポグ)の全国保健医療労組で行われた記者会見に出席した新型コロナウイルス感染症の診療現場の労働者たちの声には、涙と絶叫が混じっていた。労働者たちは声を一つにして、政府が病床確保行政命令を下しても、病床に配置されて患者の世話をすべき医療スタッフが足りないと訴えた。原州(ウォンジュ)セブランス基督病院労組のキム・ヒョンテ支部長は「政府は、病院の病床を4%動員すればコロナ患者を1万人見ることができると語るが、熟練した医療人材がいなければ、いくら多くの病床を確保しても医療サービスは提供できない。現在の現場は阿鼻叫喚だ」とし「政府は病床数に埋没し、押さえるべきポイントを間違えている。行政命令を見ても人材については何の話もないが、患者を治療し世話するのは人間だ」と述べた。

 保健医療労組はこの日の記者会見で、コロナ医療対応現場の証言を伝えるとともに、直ちに段階的日常回復を2週間中止することを提案した。そして医療人材を拡充し、公共と民間が協力するコロナ対応システムを改めて確立することを求めた。全国200あまりの医療機関の労働者が加入する保健医療労組は、段階的日常回復の開始以降、コロナ患者を見ている全国の病院の労組支部長による会議で問題点を聞き、このような提案をするに至ったと説明した。

 同労組のナ・スンジャ委員長は「専門家たちはコロナが3年以上続くと予想しているが、長期的な対策を立てる時間が必要だ」とし「すべての対応を保健医療全体の10%を占めるに過ぎない公共医療が負担するというやり方から、残りの90%を担う民間が共に対応する公共・民間総力対応システムへと転換すべきだ」と述べた。ナ委員長は「それでも病床不足問題が解決できなければ、スウェーデンのように民間病床を提供させることも積極的に検討すべき」と付け加えた。保健医療労組は、こうした準備過程で政府、病院、医師協会、看護師協会、市民社会団体などからなる「汎社会総力対応協議体」が設置されれば参加する、との立場を明らかにした。

 医師も、段階的日常回復を一時的に停止すべきだということで意見が一致した。大韓感染学会などの感染に関する複数の医学会はこの日午前、共同声明を発表し、その中で「政府は6日に私的な会合の人員制限などの措置を発表したが、対策が弱く、移動量の減少などにつながっていないと評価する」とし、「社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)の効果が出てくるまでには2週間以上の時間がかかり、直ちに流行規模を縮小するための対策が実施されなければ深刻な人命被害が発生する可能性がある。今は医療システムの対応力を確保するために(日常回復の)停止が必要だ」と指摘した。

 しかし政府は、防疫パス(接種証明・陰性確認制)を拡大適用した特別防疫対策がこの日から実施されたことから、3日ほど実施の効果を見守るとの立場を明らかにした。中央事故収拾本部(中収本)のソン・ヨンレ社会戦略班長はこの日午前のブリーフィングで「状況を見つつ、コロナ流行が悪化し続け、医療システムの余力が減少して危険だと判断されれば、特段の措置を検討する」とし「今週の月、火、水曜日に(防疫関連指標が)どうなるかを見つつ、高齢患者の比率と医療システムの余力を総合的に評価し(緊急措置を)議論する」と述べた。

 緊急措置の内容に関しては、追加的なソーシャル・ディスタンシング強化対策が含まれる可能性が高いが、このような対策は社会経済に影響を及ぼすため、決定は容易ではないとの立場をほのめかした。中収本のパク・ヒャン防疫総括班長は「全方位的な(防疫)措置を強化する緊急措置は、必要なら取るべきだが、社会経済的な被害、庶民層の被害が広範囲に及ぶため、社会的な議論が必要だ」と述べた。

 このように保健医療現場と政府当局に温度差がある中、防疫指標は悪化し続けている。中央防疫対策本部(防対本)はこの日のブリーフィングで、コロナ週間危険度分析の内容を発表した。12月第2週(12月5~11日)は全国、首都圏、非首都圏いずれも流行危険度が「非常に危険」だった。防疫当局が非首都圏をも最高段階の「非常に危険」と判断したのは初めて。防対本のイ・サンウォン疫学調査分析団長は「首都圏の医療対応力は限界超過が続いており、非首都圏もまもなく限界に達する恐れがあるため、在宅治療の拡大が必要だ」と危険度評価の理由を説明した。

 12月第2週目は感染者、重症患者、死者がいずれも過去最多だった。週間の1日平均感染者数は6068人で12月第1週と比べて1676人多く、週間の1日平均重症患者数は807人(第1週697人)だった。死者も401人で、直前の週(317人)から84人の増。クォン・ドクチョル福祉部長官はこの日午前の中対本会議での冒頭発言で「重症患者が900人に達するほど増加し、医療力量が限界に達している」とし「3度にわたる病床確保行政命令に続き、先週金曜日にも非首都圏の総合病院に対して行政命令を発したが、感染拡散が続けば、それに耐えられない『非常事態』となりかねない」と述べた。

イ・ジェホ、キム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1023121.html韓国語原文入力:2021-12-13 17:03
訳D.K

関連記事