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韓国、在宅治療が11日で2倍に…「基本」となる在宅治療、大丈夫?

登録:2021-12-01 02:49 修正:2021-12-01 07:37
18日、ソウル永登浦区の翰林大学江南聖心病院で、看護師が在宅治療者の状態をチェックしている=保健福祉部提供//ハンギョレ新聞社

 在宅治療を行っている新型コロナウイルス感染者が19日からの11日間で2倍に増加し、30日には1万人に迫った。コロナの拡散が続いているうえ、政府が在宅治療を基本原則に据えていることから、その数はさらに増える見通しだ。専門家は、在宅治療者の分類基準の細分化と、急に症状が悪化するケースに備える救急医療システムが必要だと指摘する。

 中央防疫対策本部(防対本)の集計によると、30日午前0時現在の韓国国内の在宅治療者数は9702人。19日の4603人と比べると2倍以上に増加している。在宅治療者の92.6%は、このところの患者の急増で病床不足にあえいでいる首都圏(ソウル5205人、京畿3288人、仁川491人)に集中している。

 政府は、コロナ感染が確認された場合は在宅治療を原則とする特別防疫対策を発表しており、在宅治療が不可能な場合に限って医療機関で治療が受けられると述べている。在宅治療者は酸素飽和度測定器などが入っている「在宅治療キット」を受け取って治療を行い、連携医療機関から非対面の健康モニタリングを受ける。医師の判断により追加措置や検査が必要とされた場合は、短期・外来診療センターが利用できる。同センターで感染者は対面診療、胸部レントゲン撮影、血液検査、抗体治療薬の投薬などの必要な治療が受けられる。短期の入院治療が可能な患者は1~3日間入院できる。緊急の場合は、あらかじめ指定されている医療機関に移送される。中央事故収拾本部のソン・ヨンレ社会戦略班長は「(在宅治療などに)町内の病院を参加させる計画」と述べた。

 政府の示す在宅治療の原則は、当面は主要な治療方式となる見通しだ。しかし一部からは、在宅治療に向けた準備が不足している状態であるにもかかわらず、病床不足に強いられるかたちで政府が在宅治療の全面実施を決めてしまったとの批判の声もあがっている。実際に政府は、26日から地方自治体に「在宅治療拡大実施」という案内を送ることで実施に突入したというが、ソウルや仁川の在宅治療者の外来診療を担当する短期・外来診療センターすら未だに整備できていない。嘉泉大学医学部のチョン・ジェフン教授(予防医学科)は、「政府の対策は、病床が足りないために慌てて進められたという認識がぬぐい切れない。円滑にシステムを整える時間が足りていなかった」と指摘した。

 専門家は、在宅治療を受けていた無症状・軽症の患者の症状が急に悪化するケースも多いため、まず救急搬送システムの強化などの対策が必要だと指摘する。在宅治療に本人の同意が必要であった従来は、新規感染者の8割以上が無症状・軽症であったにもかかわらず、緊急時の治療に対する懸念などから在宅治療を選択した人は57~58%のみだった。コロナ重症患者病棟を担当するソウル大学病院の看護師Aさんは、「在宅治療の途中で集中治療室に入院することになった人もいたが、特異病歴がなかったケースもある」と語った。別のソウルの上級総合病院の看護師も、「先月、在宅治療が活性化して以降、在宅治療者が酸素飽和度が低くなって救急室に運ばれてくるケースがかなりあった」と語っている。政府は、緊急の際に迅速に入院できるようにするため「救急ホットライン」を構築すると発表しているが、保護者がいないケースでは患者の緊急状況を確認する方法がない。

 在宅治療と入院の対象者を区分する基準も一部に調整が必要だ。政府は現在、入院要因のある人、感染に脆弱な居住環境にいる人、保護者のいない世話の必要な人(小児、障害者、70歳以上のワクチン接種者など)、70歳以上の未接種者に限って入院させる方針だ。嘉泉大学吉病院のオム・ジュンシク教授(感染内科)は「70歳以上は(症状が悪化すれば長期間の治療が必要になるため)世話の必要性とは関係なしに入院治療が必要で、高危険群と一緒に住んでいる人は、在宅治療ではなく入院させるべきだ」と述べた。

 救急医療システムの整備と人員の補充も喫緊の課題だ。忠南大学病院のユ・インスル教授(救急医学科)は「病床が不足している状態では、現実的に(在宅治療者のための)救急病床の確保は難しい。(院外のコンテナを利用した)モジュール型病床を増やし、そこに投入する人材ももっと必要だ」と述べた。首都圏の公共医療院のある看護師は「(今は)患者の病床を担当していた人員を在宅治療に投入しなければならない。病床を世話する医療スタッフの業務も増加しているため、病床の患者と在宅治療の患者のどちらにも集中することが難しくなっている」とし「医療現場への増員が必要だ」と述べた。

パク・チュニョン、クォン・ジダム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1021455.html韓国語原文入力:2021-11-30 18:29
訳D.K

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