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韓国「ゴールデンタイムの危機」…29の病院が発熱救急患者の受け入れ拒否

登録:2021-11-25 09:46 修正:2021-11-25 10:33
脳血管系の患者移送時間が1時間半ほどかかり 
患者の意識を失ったまま回復できず 
発熱患者の隔離などの理由で救急室の収容余力が限界に
119救急隊員たちがソウルのある救命救急センターに患者を移送する様子=イ・ジョングン記者//ハンギョレ新聞社

 ソウル恩平区に住む66歳のKさんは、19日午後に自宅でけいれんを起こし、突然倒れた。脳梗塞を患っており、家族は緊急事態であることを直感した。家族の要請で出動したソウル西大門(ソデムン)消防署所属の救急隊員たちは、救命救急センターに患者を移送するため、各病院に電話をかけた。 しかし、37.8度で微熱があるKさんを受け入れる救命救急センターはなかった。29の病院が医療環境などを理由に患者の受け入れを拒否した。結局、約1時間半後にようやく治療を始めたが、5日が過ぎた24日まで、Kさんは依然として意識不明のままだ。

 新型コロナウイルス感染症の重症者の増加で救急医療体制が逼迫する中、病院が発熱救急患者を収容できない状況が相次いでいる。患者移送時間が長くなるにつれ、治療の「ゴールデンタイム」を逃す恐れが大きくなった。

 24日のKさんの家族とソウル消防災害本部の話を総合すると、Kさんの家族は19日午後5時12分に119に電話をかけ、救急車を要請した。当時、カンさんの体温は37.8度で、意識が混迷していた。救急隊員と救急状況管理センターは直ちにソウル全域と仁川(インチョン)、京畿道地域の病院の救命救急センターに電話をかけたが、受話器からは「発熱患者は受け入れられない」という返事が何度も返ってきた。29カ所の救命救急センターが同様の立場を繰り返した。救急隊員らはこれ以上待てないと判断し、了承を得ていない状態で各病院に直接駆け付けた。救急医療法によってソウル西北部地域救命救急センターに指定されているトリック大学恩平聖母病院に行ったが、患者を隔離する場所がないとの理由で断られた。救急車はソウル鍾路区(チョンノグ)の江北サムスン病院に向かった。Kさんが治療を受けていた病院だった。午後6時30分、予定になかった救急患者の到着に、救命救急センター側は難色を示したが、Kさんは午後6時40分頃になってようやく診療を受けることができた。救急車を要請してから、1時間半ほど街頭でさまよったということだ。

 Kさんの新型コロナ検査結果は陰性だった。しかし、Kさんはその後、意識を完全に失い、これまで意識を取り戻していない。Kさんの家族は「病院では患者が30分以内に病院に到着しなければならなかったが、『ゴールデンタイム』が過ぎて脳が損傷したと言われた」とし、「酸素飽和度など多くの数値が今も悪い。最期が近いかもしれない」と伝えた。脳血管系の疾患は、脳細胞の損失などとの関係で早い移送が患者の回復や予後に相当な影響を及ぼす。江北サムスン病院と恩平聖母病院などは、救急室内の隔離空間の不足で患者の受け入れができなかったと説明している。

 Kさんと同じような移送遅延事の例が相次いで発生している。6月、81歳の発熱救急患者は救命救急センターに隔離病棟がないという理由で23カ所の病院から受け入れを拒否された。結局、国立中央医療院に入院したが、救急隊が出動してから救命救急センターに到着するまで3時間30分かかった。ソウル消防災害本部関係者は「最近、病院の救急隔離病床の確保が難しくなり、救急隊が病院前で1時間、2時間待機するケースもある」とし、「Kさんの事例のように平均約20カ所の救命救急センターに移送を要請し、断られる過程を経験している」と話した。

 これは統計でも分かる。「国民の力」のカン・ギユン議員室の資料によると、昨年1月から今年8月まで、一度でも救命救急センターでの診療を拒否されたことがある発熱患者は2959人だった。このうち、70歳以上が1384人(46.8%)だった。その結果、病院までの搬送時間も長くなった。共に民主党のパク・ワンジュ議員室の資料によると、新型コロナの感染拡大前の2019年には33分だった病院までの搬送時間が、昨年は34分、そして今年6月基準で39分に増えた。

 このため、感染状況での救急患者移送システムを大幅に改善すべきだという声が上がっている。韓国政府の指針により、感染の疑いのある患者に対して多くの医療機関が受け入れが難しい場合は、救急状況管理センターを担当する「指導医」(救急指導医)が直接圏域救急センターか重症救急診療センターに受け入れを要請する。要請を受けた医療機関は患者を優先的に受け入れた後、措置するよう定められている。

 しかし、このような指針が現実では作動しないという。現在、感染の疑いがある救急患者は救急センター内の隔離施設で診療を受け、新型コロナ検査を受けた後、一般病室に移送されている。救急センター内の隔離施設が大きく足りないため、病院が患者を受け入れられないわけだ。忠南大学病院のユ・インスル教授(救急医学科)は「政府の指針通り、感染疑いの患者を救急センターの隔離空間ではない場所にでもまず受け入れると、他の患者に影響を及ぼす可能性がある。患者が新型コロナの検査で陽性判定を受ければ、他の患者に感染が広がり、救急センターも閉鎖しなければならない」とし、「指導医も他の病院の患者を受けるよう要請する法的根拠がない」と述べた。ソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)は「救命救急センターの隔離施設とスタッフを増やすべきだ」と説明した。

 保健福祉部のソン・ヨンレ中央事故収拾本部社会戦略班長は、これについて「(救命救急センターの)隔離病床の活用度が過度に上がっており、滞積現象が生じる部分がある場合は、隔離病床を追加で拡充するなどの措置を取る」と述べた

パク・ジュニョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1020671.html韓国語原文入力:2021-11-25 02:34
訳H.J

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