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生産量統計もない中国に頼り切りだった韓国政府、ようやく尿素の新規輸入先探しへ

登録:2021-11-09 06:23 修正:2021-11-09 07:08
今月4日、光州市光山区のあるガソリンスタンドに尿素水品切れの案内文が貼られている=光州/聯合ニュース

 尿素水品薄事態に総力を挙げて対応に出た韓国政府が、中国に代わる取引先の確保にようやく乗り出している。軍の輸送機を送り、オーストラリアから「尿素水」2万7千リットルを空輸を予定している一方、ベトナムなどと約1万トン規模の「尿素」輸入のための交渉が大詰めを迎えるなど、中国に代わる供給先の確保に少しずつ成果を出している。

 しかし「木を見て森を見ず」の手探りの対応という声もあがっている。尿素生産地や生産量、輸出規模などの世界的な尿素動向を表す数値も十分把握していないことが明らかになったからだ。

1万トンの契約成立時、最悪の事態は免れる可能性も

 政府は8日、政府ソウル庁舎で尿素水の需給に関する汎省庁合同対応会議を開き、ベトナムから来週中に車両用尿素200トンを導入することが決まったと発表した。さらに、ベトナムとその他の国でも尿素水3250万リットルが作れる1万トン規模の尿素輸入に向けた交渉が進められていることも公開した。匿名を求めた国内の尿素水メーカーの関係者は「(車両用)尿素1万トンの契約が実現すれば、1カ月半程度使える尿素水を確保できるという意味だ」と述べた。契約が結ばれれば、今年末までは尿素品薄の大混乱は免れるものとみられる。ただし、政府関係者は「1万トンは文字通り交渉の対象になっている量」だとし、「導入時期や確定分などについては、今のところ予断はできない」と述べた。

 政府が大統領府政策室長の主宰するタスクフォースを設置して以来、中国に代わる「尿素」の新規取引先の確保に言及したのは今回が初めて。オーストラリアから輸入する予定の「尿素水」も当初の計画(2万リットル)よりさらに7千リットル多く調達することにしたと、政府は明らかにした。

 税制支援計画も同日発表した。現在5~6.5%が適用される関税率を0%に引き下げるというのが骨子だ。関税がなくなると、国内の輸入業者はより安い価格で尿素を国外から持ち込むことができる。ただし、この数カ月間で高騰した国際尿素価格に比べれば、関税引き下げがどれだけの尿素の確保につながるかは定かではない。企画財政部のイ・オグォン第1次官は「状況が安定するまで、しばらくは毎日点検会議を開き、尿素および尿素水の需給動向をモニタリングし、必要なすべての措置を積極的に講じる」と述べた。

尿素はどこにあるのか

 政府の新規取引先探しは、個別に国外企業単位で行われている。「木を見て森を見ず」の状況だ。国ごとの生産量のような総量データの確保に困難をきたしているのが原因だ。産業部と企画財政部はいずれも本紙の取材に対し、「全般的な尿素生産と貿易データは確保できなかった」と答えた。

 民間機関がまとめた資料では、農業用を含めた大まかな国別尿素の輸出入現状を知ることができる。本紙が入手した米国のニューヨークに本部がある「KNOEMA」の資料によると、2019年基準で尿素を多く輸出している国は、ロシア(698万トン)、カタール(513万トン)、中国(494万トン)、エジプト(441万トン)、サウジアラビア(317万トン)の順だった。1年間の世界の尿素輸出量の半分以上(56.5%)を、これら5カ国が占めている。中国は2015年までは1400万トン近く輸出し、世界最大の尿素輸出国だったが、その後輸出量が徐々に減り、2018年は200万トンレベルへと減少したのが目を引く。

 国連食糧農業機関(FAO)も個別国に対するアンケート調査を実施し、輸出統計を作成している。これによると、2019年現在、主な尿素生産国はインド(2446万トン)、ロシア(863万トン)、インドネシア(772万トン)、パキスタン(617万トン)、米国(613万トン)などだ。主要生産国に挙げられる中国はFAOのアンケートに回答していないため、同調査では中国の輸出生産量は分かっていない。

今回もKOTRAが新たな取引先探しの先頭に

 新たな尿素供給先探しの先頭に立っているのは、大韓貿易投資振興公社(以下KOTRA)である。世界各地で貿易館を運営しているKOTRAは、政府と政府関連機関のうち、海外産業事情に最も詳しい機関の一つだ。KOTRAに中国に代わる新たな供給先の確保の任務が与えられたのは今月4日。中国の尿素輸出制限措置の発表から3週間近く経ってからだ。匿名を求めたKOTRAの関係者は「産業通商資源部から代替取引先の確保要請があった直後、(KOTRA内の)輸出支援センターはKOTRAが運営する全世界の各貿易館に取引先確保の指示を出した」と明らかにした。

 KOTRAは2018年、日本の半導体材料輸出制限措置当時、代替取引先の確保に取り組むなど、新規取引先開拓の経験がある。KOTRAの別の関係者は「各貿易館が、ミラクル(奇跡)を生み出すという考えからあらゆる方法で(代替取引先を)探している。十分な量ではないが、すでに新規取引先を確保し、政府に報告した」と語った。ただし、KOTRAとKOTRAの報告を受けた産業部では、新規供給先などが公開された場合、物量と価格交渉が不利になる可能性があるとして、具体的な供給先は公開しなかった。

キム・ギョンラク、イ・ジヘ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/1018420.html韓国語原文入力:2021-11-09 02:36
訳H.J

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