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[レビュー]「強制動員被害の解決原則は謝罪・補償・記憶」

登録:2021-08-13 08:34 修正:2021-08-14 11:32
『強制徴用者の質問 日帝の強制労役被害者問題、どのように解決しなければならないか』内田雅敏著/ハン・スンドン訳/ハンギョレ出版、1万7000ウォン//ハンギョレ新聞社

 2018年10月30日、韓国最高裁(大法院)は、ヨ・ウンテク氏などの強制動員被害者らが日本製鉄(裁判当時は新日鉄住金)を相手取り起こした損害賠償請求訴訟で、ヨ氏ら原告にそれぞれ1億ウォン(約950万円)を賠償せよという判決を下した。ヨ氏らは1941~43年に日本製鉄の工場に強制動員され労役をしたが、賃金は得られなかった。最高裁の判決で、強制動員の被害者と遺族が日本企業を相手に賠償を受ける道が開かれたのだ。しかし、日本製鉄は賠償金の支払いを拒否し、現在裁判所は、日本製鉄の韓国国内の資産を差し押えている状態だ。日本政府は韓国を相手に輸出規制に出るなど、強く反発している。

 日本による強制動員被害者に対する賠償問題は、必ず解決しなければならないが、その過程は容易ではない難題のうちの一つだ。『元徴用工 和解への道』は、日本で強制動員問題の専門家であり「日本の良心的な知識人」と呼ばれる内田雅敏弁護士が、強制動員問題の争点を分析し、これを解決するための案を提示する本だ。

 1965年の韓日基本条約・請求権協定において、強制動員に関する大きな争点は二つだ。日本の植民地支配が合法だったか不法だったかということと、韓日請求権協定で強制動員被害者の損害賠償請求権が消滅したのか否かだ。最高裁判決は、日本の植民地支配は不法であり、そのため、強制動員被害者の損害賠償請求権も消滅しなかったとみなした。日本は、植民地支配は合法であり、請求権も請求権協定第2条(両締約国及びその国民の財産、権利及び利益と請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決されたことを確認する)により解決されたと主張している。

 著者は「日韓請求権協定は米国の圧力のもとに、韓国側が、日本の植民地支配の清算の問題を追求しきることなく、不本意ながら応じたものなのです」としながら、日本側からみるならば、“安値”で植民地支配の清算問題を処理したものだと語る。また、「植民地支配の清算のような歴史問題の解決には、加害者が加害の事実と責任を認め、被害者に謝罪することが不可欠です。しかし、日韓請求権協定ではそれが一切ありませんでした」と強調する。著者は、そのため1965年の日韓基本条約・請求権協定の見直しをすべきだと指摘する。また、請求権協定で放棄されたのは国家の「外交保護権」(外国にある自国民の利益を本国が外交手続きを通じて保護する権利)であり、被害者個人の請求権は放棄されなかったという論理も合わせて提示する。

 著者は、請求権協定の根本的な問題点を批判しながらも、強制動員被害の解決方法としてはもう少し“現実的な”解法を提示する。加害企業が被害者との合意を通じて自発的に補償金を支払う「和解」方式だ。これは、中国人強制動員被害の解決に適用された方法で、著者はこの過程で主導的な役割を引き受けたことがある。

 日本は、アジア太平洋戦争が長期化し労働力が不足すると、韓国人だけではなく中国人も連行し、強制労働をさせた。約4万人の中国人が日本各地の多くの企業に配置され、過酷な労働に苦しみ、その結果、約7000人が事故、拷問、栄養失調などにより日本で死亡した。日本の敗戦後、しばらく忘れられたり隠蔽されたこの事件は、中国人被害者と遺族らの損害賠償請求訴訟により表面化した。

 代表的なものとしては「花岡和解」が挙げられる。鹿島組(鹿島建設の前身)の花岡川の改修工事に動員された11人の生存者と遺族が、1995年6月に鹿島建設に対し1人あたりそれぞれ500万円の損害賠償金支払いを要求し、東京地方裁判所に提訴した。中国人被害者らが日本の裁判所に提起した初の訴訟だった。裁判所は請求は棄却しながらも、両者に和解を勧告した。結局、2000年11月に和解が成立し、鹿島建設は強制連行と強制労働に対する責任を認め、被害者と遺族に謝罪した後、和解金として5億円を出費する。1998年1月には西松建設を相手取った損害賠償請求訴訟が提起されたが、やはり棄却される。しかし、裁判所は判決文の末尾に付け加えた「付言」を通じて、西松建設に被害者救済の努力をすることを勧告し、2009年10月に両者の和解につながる。2016年6月に成立した「三菱マテリアル和解」も似た過程を経た。著者は、韓国人強制動員被害者の問題も「西松建設、三菱マテリアルが和解に踏み切るに際し、手掛かりとした判決『付言』の精神―すなわち、被害の重大性を考えると当事者間の自発的な解決が望まれる―に則って、和解によって解決」することを提案する。

 著者は「ドイツ型解決」にも合わせて言及する。2001年、ドイツでは、国家が約50億マルク、そして強制労働をさせたフォルクスワーゲンなどの企業数十社が約50億マルクを支払い、「記憶・責任・未来」基金を設立した。そしてこの基金から、ナチス時代に強制連行や強制労働にあった被害者約150万人に補償した。韓国内の一部でもこれと類似の「日本政府・日本の加害企業+韓国政府・韓国の請求権協定受益企業の4者による基金設立案」が提起されてもいる。

 著者が提示する具体的な解決方式に対しては、賛否があり得る。最も根本的な解決方法は、日本が植民地支配の違法性を公式に認め、積極的に謝罪と賠償に乗り出すことだろう。しかし、著者が重ねて強調した強制動員問題の真の解決のための以下の3大原則は、再確認してみる価値がある。「1、加害事実及びその責任を認め謝罪する。2、謝罪の証しとして経済的な手当(賠償・補償)をなす。3、追悼事業を行い、同時に将来の戒めのため歴史教育を行う」。また著者は「労務強制動員問題の本質は、被害者個人の人権問題です。したがって、いかなる国家間合意も、被害者が受け入れられるものでなければなりません」と主張する。

京都にある「丹波マンガン記念館」の展示場。300メートルの長さの坑道の中に設けられた展示場には、強制動員被害者の当時の作業姿がマネキンで再現されている=京都/聯合ニュース

アン・ソンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/1007563.html韓国語原文入力 :2021-08-13 05:00
訳M.S

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