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[コラム]韓国保守政党が掲げる「小さな政府」という落とし穴

登録:2021-07-22 09:03 修正:2021-07-22 12:37
2011年12月27日に開かれたハンナラ党の非常対策委会議に出席した朴槿恵前大統領と、現国民の力代表のイ・ジュンソク氏(一番右)。2012年の大統領選挙で朴前大統領が公約した「小さな政府」を今度はイ・ジュンソク代表が再び掲げている=イ・ジョンウ先任記者//ハンギョレ新聞社

 野党第一党「国民の力」のイ・ジュンソク代表が、女性家族部・統一部廃止を主張したことをきっかけに、「小さな政府論」が浮上している。イ代表の言う「小さな政府」が政府省庁の数を減らすということなのか、政府機能の変化まで模索するということなのかは不明だ。ただ「小さな政府論は軽い政策ではない」と述べたことから、来年3月の大統領選挙で主要な政策公約として掲げようとしているのは明らかだ。しかし、国民の力とその前身である保守政党が選挙のたびにほぼ毎回(朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の共和党を除いて)「小さな政府」「小さな大統領府」を掲げていたことを考えれば、イ代表の発言は全く新しいことではない。

 国民の力が毎回「小さな政府」を公約に掲げてきた理由は明確だ。「政府は税金ばかりたくさん取り立てるが、国民のために何をしているのか」という国民感情にたやすく乗ることができるからだ。金持ちから税金を多く徴収することに対しては「ポピュリズム」と批判するが、本当のポピュリズムとは大衆の怒りに便乗するこのような選挙用の公約だ。パンデミックの状況で「政府の規模と役割を減らそう」と言うのは、戦争の渦中で「国防部は縮小し、代わりに一線の軍兵力を増やそう」と言うのと同じくらい言葉遊びに近い。

 イ・ジュンソク代表の言葉どおりこれが「軽い政策」でないなら、過去に保守党出身の大統領が掲げた「小さな政府」公約が現実でどのように失敗したのかを考え、そこから教訓を得ることが先だ。李明博(イ・ミョンバク)大統領は「小さな政府、大きな市場」を国政基調として掲げ、大統領府と政府規模を縮小すると約束した。大統領府秘書室の職員数は減ったが、政府の高位公務員団と大統領府首席秘書官・秘書官の数はむしろ増えた。李明博政権の大統領府で政務首席を務めたパク・ヒョンジュン現釜山市長はのちに「政権ごとに、政権初期には『帝王的大統領制』に対する国民の不信のためにスリム化した秘書室、定員と予算の削減を追求する。しかし、正確な政策判断と力量強化のためには大統領室の定員と予算の拡大が必要だ」と率直に明らかにした。(イ・スクチョン、カン・ウォンテク共編『2013年大統領の成功条件』)

 小さな政府を規模ではなく機能としてみても状況は変わらない。朴槿恵(パク・クネ)大統領時代の大統領府秘書室の規模は以前と同じ程度だったが、首席秘書官と実権を持つ秘書官の権限ははるかに強力なものだった。長官が大統領に会うのが「めったにできないこと」だったという事実は、国政壟断事件が起こって初めて国民に知らされた。

 「小さな政府」の成功事例とされる1980年代の米国のロナルド・レーガン政権は、教育・福祉予算を削減し、人件費などの経常費支出を減らした。しかし国防予算は大幅に増やし、政権期間中の政府の総予算規模は2倍近くに膨らんだ。レーガン元大統領の軍備拡張が、経済難に直面したソ連を圧迫し、1991年のソビエト連邦崩壊に一役買ったのは事実だ。それならば戦略的に国防予算を増やしたレーガン政権は「小さな政府」なのか。国防の代わりに教育と福祉・環境予算を増やせば、それは「大きな政府」なのか。

 小さな政府を保守のアイデンティティと考えるのは時代の流れに合わず、韓国の現実に合ってもいない。個人主義の伝統が強い西欧とは異なり、韓国社会には公共の安全とサービスに対する要求がはるかに強いということを認める必要がある。この4年間、どんな事が起きても政府のせいだとして保守メディアが攻撃しても、世論にある程度受け入れられたのは、このような背景が大きい。なぜ毎回、保守政権が「小さな政府」を掲げて発足しても、結局は「大きな政府」に戻るしかないのか、その理由もここにある。いま韓国が直面している最大の課題は何であり、どのように解決するのか、これが大統領選挙の核心争点であろう。パンデミックの克服であれ、経済復興であれ、またはセーフティネットの拡大や脱原発のような対立事案の解決であれ、次期政府はこれを成功裏に乗り越えなければならない。そのためには規模が問題ではなく、「やるべきことをしっかりと行う強い政府」が必要だ。問題解決に向けては、政府省庁を統廃合することもあり得るし、新しく巨大な融合省庁を作ることもあり得る。まず「小さな政府」という罠から抜け出さなければならない。

 加えて、「調整者の役割を果たす大統領」が必要だ。いま、韓国社会のほぼすべての懸案で葛藤と利害が鋭く絡み合っており、説得と妥協を経ずには一歩も進展は期待できない。過去の政権と同じく、文在寅(ムン・ジェイン)政権の大統領府も葛藤の調整と統合という側面では成功したとは言いがたい。調整者、説得者として、大統領の国政運営はどのように変わらなければならないのか。実益のない「小さな政府」論争より、この二つの事案をどう実践するかをめぐって争う方が、はるかに生産的だ。

パク・チャンス先任論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1004467.html韓国語原文入力:2021-07-22 02:37
訳C.M

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