性的暴行に抵抗し、加害男性の舌を噛んだとの理由で有罪判決を受け、その56年後に正当防衛の認定を求めて70代の女性が請求していた再審を、裁判所は棄却した。
釜山地裁刑事5部(クォン・ギチョル裁判長)は18日、強制わいせつ被害者のチェ・マルジャさん(75)が正当防衛の認定を求めて請求していた再審について、「再審事件を対象とする公判手順の経過など、事由をあまねく検討した結果、理由がなく棄却する」との決定を下した。
同地裁は決定文で「無罪を認めるに足る新たな証拠が発見されるか、少なくとも重傷害罪より軽い傷害罪として認めるに足る新たな証拠が発見されなければ、(再審は請求)できない。記録から認められる事実、事情、法理に照らしてみると、チェ氏が提示した証拠は、無罪などを認めるに足る新たな明白な証拠に当たるとは考えられない」と述べた。
正当防衛について、法律の解釈と適用の過程で誤りが見つかったというチェさんの主張に対し、同地裁は「再審は、確定した事実関係を再審査する例外的な非常救済手続きであり、事由も限定的だ。確定判決後の新たな証拠の出現を内容とするのであって、法律の解釈や適用の誤りが発見されたことを内容とするものではない」と判断した。続いて、検察の強圧的な捜査があったとの主張に対しても「客観的で明確な資料が提示されていないことなどを考慮すると、証拠が足りない」と付け加えた。
ただし同地裁は「請求人は心のしこりをほぐしてほしい、両性間の平等価値を宣言してほしいという思いで法廷に立った。裁判官は、請求人の再審請求は受け入れられないが、請求人の勇気と叫びは共同体の構成員一人ひとりに大きな影響とインスピレーションを与えるだろう」と述べた。
チェさんの弁護人は「確定判決を覆すのは容易ではないが、棄却は予想できなかった。再審要件を保守的に判断したようだ。決定文を正確に検討し、即時抗告する予定」と述べた。
1964年5月6日、当時18歳だったチェさんは、性的暴行を試みた加害者N氏(当時21歳)の舌を噛んだ。検察は同年9月、N氏の舌を1.5センチ切断した容疑(重傷害罪)でチェさんを起訴し、裁判所は1965年1月12日、チェさんに懲役10カ月、執行猶予2年を言い渡した。この事件は、正当防衛を争った代表的な判例として、最高裁判所が1995年に刊行した『裁判所史』でも、「強制キス舌切断事件」として紹介されている。
チェさんは昨年5月6日、「悔しさを晴らし正当防衛と認められ、無罪判決を受けることを望む」とし、「性暴力被害者の正当防衛認定のための再審請求書」を裁判所に提出した。