本文に移動

[寄稿]南北関係、2018年の春・2021年の寒波

登録:2021-01-11 03:44 修正:2021-06-28 18:14
2018年4月27日、南北首脳会談で、文在寅大統領と金正恩委員長が通訳なしに板門店の徒歩橋を散策している=板門店共同取材団提供//ハンギョレ新聞社

 すべてが凍てついた。南北関係も冷え込んでしまった。実際には、南北関係は長いあいだ凍てついていた。昨年1年間はろくな接触もできておらず、南北間のすべての通信連絡チャンネルも途絶えた。2018年の南北首脳会談の成果として残っていた南北共同連絡事務所すら爆破された。キム・ヨジョン朝鮮労働党第1副部長とキム・ヨンチョル副委員長が対南業務を「対敵事業」へと転換すると宣言してもいる。今や金正恩(キム・ジョンウン)委員長が労働党第8回大会の事業総括報告で、南北関係が「板門店宣言発表以前の時期」に戻ったと最高水準において確認している。

 2018年の「春」はなぜ3年後に凍りついたのか。

 米国の政治学者チャールズ・オズグッドは、1962年の著書『戦争と平和の心理学』で「緊張緩和のための漸増相互主義」という紛争解消法を提案している。漸進的で相互的な緊張緩和措置を交わし、緊張を緩和しようという常識的な提案だ。その始まりは譲歩だ。紛争の一方の当事者が、小さいが一方的な緊張緩和措置を取ってはじめて、紛争解消の過程は開始されうる。相手方が前向きに反応して相互的措置を取れば、最初の当事者は二度目の緊張緩和措置を取れるようになる。そうなればまさに「平和の好循環」が始まる。

 「春」はまさにそのようにやって来た。まず声をかけたのは文在寅(ムン・ジェイン)大統領だった。2017年12月、韓米両国は「合同軍事演習を延期する問題を検討しうる」と公言した。平昌(ピョンチャン)冬季五輪の安全な開催に向けて、北朝鮮の協力を求めたのだ。金正恩(キム・ジョンウン)委員長はすぐに応えた。冬季五輪が「成果的に開催」されるよう必要な措置を取ると新年の挨拶で表明したのだ。このような善意の表現は、冬季五輪での美しい協力へとつながった。平和の好循環は、このようにして始まった。

 次は北朝鮮が一歩前へ踏み出した。2018年4月の南北首脳会談に先立ち、「核実験と大陸間弾道ロケットの試験発射を中止する」との決定を下したのだ。北朝鮮の融和的措置は南北首脳会談において、南北関係の画期的改善と朝鮮半島平和体制の構築への合意につながった。金正恩委員長が南北首脳会談で朝鮮半島の非核化に合意したのも異例だが、北朝鮮は直後の5月に豊渓里(プンゲリ)核実験場を爆破し、行動で示した。こうした行動は6月の朝米首脳会談へとつながり、平和的な朝米関係、朝鮮半島平和体制、朝鮮半島非核化などへの合意がなされた。韓国国防部と米国防総省は1週間後、同年8月に予定されていた「乙支フリーダムガーディアン演習のすべての計画活動を中止」すると決定し、もう一つの措置で応えた。

 「春」はこのように平和に向けた先制的措置と、それに対する回答の循環として作られた。しかし、そこまでだった。平和の好循環は、それ以上拡張されなかった。そして「冬」へと逆戻りし始めた。

 何か大きな問題があるということが世間に認識されたのは、2019年2月の朝米首脳会談の決裂においてだった。しかし、その前から不吉な前兆が多くあった。南北首脳会談で合意された様々な関係改善措置は実行されていなかった。開城(ケソン)に南北共同連絡事務所は設置されたものの、開城工業団地の再開も実現せず、金剛山観光や鉄道・道路の連結も進んでいなかった。2018年中に終戦宣言と平和協定の締結を進めるという合意も進展せず、2018年と2019年が過ぎ去った。「相手に対する一切の敵対行為を全面中止」することとなったものの、守られなかった。キー・リゾルブ演習とフォールイーグル演習は終了することになっていたが、名称が「同盟」へと変わり、演習の規模が変わっただけで続けられた。「連合防衛態勢を持続」するとし、平和体制の構築に反対する旗を掲げた。これだけでなく、文在寅政権は2019年と2020年に史上最大規模の軍備増強を継続した。

 昨年出版されたボブ・ウッドワードの『怒り』(原題:Rage)は、それらに対する金正恩委員長の「怒り」を明かしている。金委員長は2018年の「挑発的な合同軍事演習」について「私は本当に気分を害したし、この感情をあなたに隠したくはない」とまでドナルド・トランプ大統領に送った親書で吐露している。北朝鮮は、核兵器と大陸間弾道ミサイルの試験を中止し、核実験場の閉鎖やミサイル試験場の解体など、中軸となる武力開発の中止措置を取ったにもかかわらず、韓国と米国はこれに相応する緊張緩和措置によって応えていないという不満だった。実際には不安の発露だったことだろう。

 チャールズ・オズグッドの提案は、冷戦時代の米国とソ連を念頭に置いたものだった。ほぼ同等な軍事力を持つ両国のうちの一方が先制措置を取っても安保には問題がないのだから、緊張緩和措置を先に取ってもよいのではないかということだった。朝鮮半島においては、先制的緊張緩和措置を取る余裕のある文在寅政権とバイデン政権がやるしかない。

//ハンギョレ新聞社

ソ・ジェジョン|国際基督教大学政治学・国際関係学デパートメント教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/978085.html韓国語原文入力:2021-01-10 16:10
訳D.K

関連記事