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[コラム]危機が不平等を拡大するという公式

登録:2021-01-05 04:05 修正:2021-01-05 07:35

 「コロナが早く終わって、以前の生活に戻ることです」

 Aさんの新年の願いも大多数の人々と変わらない。Aさんはソウル麻浦区(マポグ)で10坪の小さな居酒屋を営んでいる。コロナ禍の初期だった昨年春までは、大きな変化は感じなかったという。8月下旬に第2波が始まり、売上げは半分に落ちた。11月に営業時間を夜9時までとする措置が実施されてからは30%にまで減った。1年で最高の書き入れ時である12月は最悪の1カ月となった。客は多くてもテーブル1つか2つが埋まる程度で、時には1人もいない日々が続いている。「7時半くらいまでに客が来なければ『あぁ、今日は終わりだな』と思います」。以前は午前1~2時に店を出ていたが、今は8時に閉店することもある。

 客がいないからといって固定費がなくなるわけではない。店舗の賃料200万ウォン(約19万円)はきちんと払わねばならず、材料費や各種の公共料金も減らすには限界がある。2人のアルバイトは結局辞めさせた。まだ貯金を取り崩して赤字の穴埋めをしているが「数百万ウォン程度はあっという間に消える」。近いうちに政府が実施するという小商工人向けの融資を受ける考えだ。

 コロナ禍が終われば、すべてが元どおりになるのだろうか。「近ごろは出前やホームパーティーとかが多いので、以前と同じというわけにはいかないと思います。コロナがひとつの転機のように感じます」

 新型コロナウイルス感染症というこの馴染みのない病気は多くの人々に苦痛をもたらしたが、ある人にとっては、その重さはさらに重い。昨年春、新型コロナウイルスが本格的に拡散し始めた際には、いわゆる「コロナ時代」についての展望や分析があふれた。それらのうち現実となった一つの憂鬱な予測は、コロナが不平等を拡大するだろうというものだった。コロナが高所得層、正社員、男性に対してよりも、低所得層、非正規労働者、自営業者、女性に対して、より苛酷だろうという懸念だった。

 コロナが「不平等な災害」だという事実は、露骨に指標に表れている。昨年第3四半期の上位5分位(所得上位50%)の所得は下位1分位(所得下位10%)の所得の4.88倍で、前年の第3四半期(4.66倍)より格差が広がっている。雇用も、飲食業や小売業のような対面サービス、臨時・日雇い職、自営業者で大幅に減少している。

 資産市場の活況は実体経済の闇と対比した時、より劇的に見える。昨年の成長率は通貨危機以来22年ぶりにマイナスを記録したものの、株価は史上最高値を更新した。住宅売買価格の上昇率は過去14年で最も高かった。景気低迷を防ぐための低金利と流動性が株価と住宅価格を押し上げているのだ。資産価格が上昇すれば、資産を保有している人とそうでない人との格差はさらに広がる。企業の中でも半導体、プラットフォーム、オンラインショッピングのような非対面関連分野は大いに好況を享受している。

 そのうえ、このような困難と恩恵の偏りがコロナ以降も固定化するかもしれないという見通しが、日増しに力を得ている。コロナがもたらす経済構造の変化は、誰かにとっては飛躍の機会となり、誰かにとっては生存の脅威となるだろう。

 政府は昨年、補正予算を4次にわたって編成し、それなりに危機克服のため努力してきたと自ら評している。しかし、被害階層の悲鳴が大きくなり、支援を求める世論が高まってようやく、仕方なしに財政を供給することを繰り返したという批判も出ている。今はいつになく分配者としての政府の役割が求められている。コロナ禍がいつ終わるのかが依然として不透明な中、先制的かつ果敢な財政支出は、かなり長い期間にわたって政府の最重要課題となるだろう。

 既存の政策の地平を超える試みが必要かもしれない。コロナという試練の中で、韓国社会が得た成果の一つは、実際に実施された全国民災害支援金の支給をはじめ、基本所得、基本資産、社会連帯税など、様々な経済社会政策が公論の場に登場したということだ。「ポストコロナ」時代には、こうした提言についてのより積極的な議論と実験が行われなければならない。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は昨年6月「我々は通貨危機やグローバル金融危機を経て、その度に所得格差が広がった歴史的経験を持っている」「危機が不平等を拡大するという公式を必ず打ち破る」との決意を示している。今こそ「公式」を打ち破るためのより多くの包容政策と想像力が必要だ。

//ハンギョレ新聞社

アン・ソンヒ|経済部長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/977224.html韓国語原文入力:2021-01-04 17:49
訳D.K

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