ドナルド・トランプ米大統領が主要7カ国(G7)首脳会議を9月頃に延期すると共に、韓国も招待する意向を示したことで、韓国政府の悩みがさらに深まっている。最近、米中対立が激化する中、米国が主要7カ国会議を活用し、“反中国戦線”の結集を図った場合、韓国の参加は韓中関係において大きな負担になりかねないからだ。
トランプ大統領は9月頃「G7会議」を開催するとし、参加規模も友好国を中心に広げると述べた。彼は主要7カ国の代表性に触れ、「とても時代遅れな枠組み」だとしたうえで、韓国、オーストラリア、ロシア、インドの4カ国を新たに招待すると述べた。オーストラリア政府はただちに歓迎の意思を示した。
米国は今年、G7の議長国であるため、G7のメンバーではない国を招待できる。トランプ大統領の発言が、今年限定で韓国などを招待し拡大会議を開くためなのか、それとも主要7カ国首脳会議をなくし、主要10カ国または11カ国首脳会議を進めるためなのかは、確かではない。トランプ大統領が主要7カ国会議を「時代遅れ」だとして、「G10やG11」を直接取り上げたことから、G7に代わる新しい会議の新設の動きも排除できない。
主要20カ国・地域(G20)に属する韓国にとっては、今回のG7に出席し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をめぐる国際協力などを積極的に活用した場合、韓国外交と国際的地位が高まる肯定的な契機にもなりうるといえる。大統領府関係者は「我々にとって悪い話ではないかもしれない」と述べた。韓国がG7に招待されたのは今回が初めてではないが、外交関係者たちは「異例」と見ている。韓国は2008年にG8(G7+ロシア)首脳会議の時に初めて参加したが、当時はオブザーバーだった。ただし、外交部当局者は「まだ米国から正式に招待されたり、米国側の説明を聞いたわけではない」と述べた。
問題は、米中が鋭く対立する中で米国側から出た提案という点にある。米国は今回のG7会議で、中国問題を取り上げる意向を明らかにした。両国の狭間で選択を迫られる状況は避けたい韓国政府としては、困惑せざるを得ない。米国が推進する「経済繁栄ネットワーク」(EPN)と中国が作った「香港国家安全法」など、韓国は米中からそれぞれ“支持”と“参加”の圧力をかけられている。大統領府関係者は「中国と対立が生じる可能性もあるため、その点について調整しながら、米国側とも協議していく」とし、慎重な態度を示した。
専門家らは、韓国の外交の原則を立てることが急がれると指摘している。韓東大学のパク・ウォンゴン教授(国際地域学)は、「G7に参加するかどうかよりも重要なのは、我々がいかなる立場を示すかという問題だ」と強調した。パク教授は「経済や安保、人権など米中関係の争点別に原則を決めて対応する必要がある」とし、「例えばG7会議で明らかに中国を排除する方向で議論が行われるなら、韓国政府は『自由主義的国際秩序の原則』を明確にし、問題を提起しなければならない」と指摘した。
米中の狭間で外交的困難に直面しているが、G7という世界的な行事を積極的に活用しようという意見もある。国立外交院のキム・ハングォン教授は「経済大国が参加するG7は、韓国にとって負担であると同時に、チャンスでもある」とし、「米国などは韓国に立場を示すことを求める可能性が高く、韓国と同じ立場の中堅国も注目するだろう」と述べた。また「争点に対して国民も合意できる原則を決め、戦略的曖昧性ではなく、韓国の立場を明確に示す準備をしなければならない」とし、「G7が今後米中関係を解決していく上で、重要な試金石になるかもしれない」と述べた。