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相部屋で看病人との接触が多い療養所、感染症管理が脆弱

登録:2020-03-09 01:27 修正:2020-04-09 07:24
多数の感染者が出た慶尚北道奉化のプルン療養院//ハンギョレ新聞社

 慶尚北道を中心として、療養病院や療養施設(療養所)で散発的に新型コロナウイルス(COVID-19)への集団感染が発生したことで、これらの施設に対する防疫が保健当局の最重要課題として浮上している。根本的に数人が同じ部屋で過ごす相部屋である上、医療陣ではなく看病人にケアを依存しているため、相対的に感染予防に脆弱にならざるを得ないという指摘が出ている。

 中央防疫対策本部(防対本)のチョン・ウンギョン本部長は8日の定例ブリーフィングで「高齢者が集団で生活する療養病院と療養施設をどのように感染から守るかが最大の課題であり、(今後の拡散を分ける)カギとなっている」と述べた。集団施設は他にもある中で、保健当局が療養病院と療養施設を特に注視しているのは、重篤な状態になる可能性が高い高齢基礎疾患者が多数いる施設だからだ。先に9人の死者が出た清道(チョンド)デナム病院でも、基礎疾患などで免疫力が弱まっている高齢の患者たちの被害が大きかった。

療養病院と療養所の新型コロナ感染状況//ハンギョレ新聞社

 特に慶尚北道奉化(ポンファ)のプルン療養院は、51人がCOVID-19の陽性判定を受けたことで、新天地大邱(テグ)教会と清道デナム病院に次ぐ「第3の集団感染地」として浮上した。入所者56人に従事者60人が勤務しており、116人が集まる施設で全体の半数近くが感染したわけだ。5日にプルン療養院で陽性判定を受けた後、金泉(キムチョン)医療院に移送されて治療を受けていた78歳の女性患者は、7日に肺炎で死亡している。療養施設のうち、プルン療養院に次いで2番目に確定者が多い慶山(キョンサン)の第一シルバータウンでは、7日に9人の入所者を含む17人もの感染が確認され、保健当局を緊張させた。2018年現在で、韓国の療養施設(3390カ所)と療養病院(1560カ所)は4950カ所に上る。

 療養病院と療養施設が感染症に脆弱なのは、何よりも「相部屋」の影響が大きいというのが専門家たちの説明だ。嘉泉大学吉病院のオム・ジュンシク教授(感染内科)は「療養病院によっては、1部屋に10~20人も入れているところもある。何しろ少ない医療陣が多くの患者をみているから、基本的な手の衛生も管理が難しいのが実情」と話す。防対本のクォン・ジュヌク副本部長もプルン療養院の感染をめぐり「2メートル以内の近接した距離が保たれる生活密集施設の中でも、(療養院などの)社会福祉施設がかなり脆弱なのは事実」と強調している。健康保険公団による統計によると、昨年12月現在、療養病院の場合、1~3人部屋の病床は2万696床なのに対し、4人部屋以上の病床は25万5953床にのぼる。

 さらに急性期病院とは違い、療養病院や療養施設は医療陣ではなく看病人(家族の代わりに患者を看護、介護する人。患者やその家族に直接雇われるのが一般的。韓国の看護師の業務範囲は日本のそれよりも狭く、排せつの手伝いや体ふきなどは家族や看病人が行う)との接触が多いため、外部感染要因もより大きくならざるをえない。オム教授は「医療サービスを提供する主な人材は看病人だが、十分な教育や訓練を受けているとは考えにくく、感染管理には限界が生じざるをえない」と指摘する。積極的な治療が行われる所ではないため、症状が悪化した場合、対処も難しい。患者の状態を十分に把握できず、上級総合病院などに運ばれた時は、すでに手の施しようがなくなっている場合が少なくないということだ。

 保健当局と地方自治体は、これらの施設に対する厳格な立入管理を行い、さらなる感染拡散を防ぐ方針だ。中央災難安全対策本部(中対本)のキム・ガンリプ第1総括調整官は7日の定例ブリーフィングで「療養病院、療養施設などの感染リスクを最小化するためには、厳格な立入制限措置がなければならない。11~12日にかけて徹底した現場点検を行う」と述べた。慶尚北道のイ・チョル知事は、療養施設を含めた573カ所の社会福祉施設に対し、予防的コホート隔離を行うと同日明らかにした。9日から22日までの2週間にわたって、外部の面会と入所者・従業員の外出を禁止し、外部からの流入を徹底的に遮断するということだ。

パク・スジ、キム・ヨンドン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/931687.html韓国語原文入力:2020-03-08 21:41
訳D.K

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