本文に移動

「ホルムズ派兵」に傾いていた韓国政府…再び深まる悩み

登録:2020-01-06 05:23 修正:2020-01-06 13:29
4日(現地時間)米国ノースカロライナ州にあるフォートブラッグ特殊作戦部隊基地で、米軍第82空輸部隊が中東地域を担当する米中部司令部に向かう民間航空機に乗るために移動している=米国防総省提供/AFP・聯合ニュース

 米国がイラン軍の実力者である革命防衛隊コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官を攻撃して殺害した後、中東の緊張が高まっており、来月アデン湾海域に任務交代のために派遣される清海部隊の作戦範囲を拡大する方式で「ホルムズ派兵」を検討していた韓国政府の悩みが深まっている。米国とイランが「戦争も辞さない」局面に駆け上がっている状況において、ホルムズ派兵はイランとの関係悪化はもちろん、韓国軍が戦争に巻き込まれる状況に繋がることもあり得る。

 今回の事態は、米国が韓国に継続的に「ホルムズ海峡共同防衛」に参加することを要求していた状況で起きた。政府関係者は5日、「米国とイランの対立が悪化し、韓国政府の悩みは深くならざるを得ない」として「ただし、派兵に関して話がさらに先に進んだということはない。状況を注視している」と話した。ホルムズ海峡は世界各国の主要な原油輸送路で、イラン軍が事実上統制している。

 現在、清海部隊第30陣の姜邯賛(カン・ガムチャン)艦がソマリアのアデン湾海域で海賊退治作戦を行っており、6カ月単位の任務交代の日程上、来月に王建(ワンゴン)艦(4400トン級)と入れ替わる予定である。アデン湾からホルムズ海峡までは直線距離で1800キロメートルで、王建艦だと遅くとも3日で到着できる距離である点などを考慮して、政府はこの時に合わせて清海部隊の作戦範囲をホルムズ海峡まで拡大する案を軸に検討してきた。

 米国とイランの衝突の可能性が高まり、韓国の「派兵」に対する憂慮と批判の世論も強まるものと見られる。紛争地域に韓国軍が行くことになると、イランとの関係悪化や中東地域の韓国人が危険にさらされる状況を考慮せざるを得ない。現在イラクに約1600人、イランに約290人、イスラエルに約700人、親イラン武装勢力のヒズボラの拠点であるレバノンに約150人の韓国国民が滞在している。

 しかし政府は、在韓米軍の防衛費分担金交渉や北朝鮮核問題に対する韓米協力などを考慮して、米国の要請を100%無視するのも難しい。外交部当局者は「ホルムズ海峡は原油輸送や商船運航において極めて重要な地域であるため、安全のために国際社会の努力に貢献しなければならないとの原則的立場には変わりがない」としながらも「具体的な案に対しては多角的な検討が必要で、まだ決まったことはない」と述べた。

 今回の事態は朝米非核化交渉を始めとする朝鮮半島情勢においても変数になるものと見られる。中東地域の「一触即発」の状況では、ドナルド・トランプ米大統領の外交の重心が中東に傾かざるを得ず、朝米交渉が後回しになり滞るのではないかとの分析が出ている。パク・ウォンゴン韓東大学教授(国際地域学)は「中東全体の不安定性が高まり、米国が非核化交渉など朝鮮半島の情勢に積極的に介入することは難しくなるだろう」として「中東の緊張が高まるたびに、米国はアジアでは現状維持レベルの管理を行なってきた」と話した。米国が中東に集中して朝米交渉の膠着局面が長引く場合、北朝鮮が強硬な対応に乗り出す可能性も排除できない。金正恩(キム・ジョンウン)委員長は最近の労働党全員会議で、米国の態度変化の有無によっては対応の方針を変えることがあり得るとして「新たな戦略兵器」に言及もした。

 ただし、今回の攻撃を米国の北朝鮮に対する警告と見なすのは過剰な解釈との分析が出ている。パク教授は「トランプ大統領が今回の事態を大きくしたのには、弾劾局面突破という性格がある」として「トランプ大統領は金正恩北朝鮮国務委員長とは関係が良いため、強硬策の対象としてイランを選択した。北朝鮮に対する警告と見るのは難しい」と述べた。

ノ・ジウォン、キム・ソヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/923266.html韓国語原文入力:2020-01-06 02:40
訳M.S

関連記事