北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が1日、4日間にわたり行われた労働党中央委員会第7期第5回全員会議報告で、「経済建設と軍事力強化の並行」を新たな道として提示し、「近く新しい戦略兵器を目撃することになるだろう」と明らかにした。金委員長はその一方で、「核抑止力の強化の幅と深度は米国(の立場)にかかっている」と述べ、交渉の扉を完全に閉じていないことを強調した。このような金委員長の発言は、年末年始に北朝鮮が長距離ミサイル試験発射などの行動に乗り出すという予想と違ったものだったため、まだ幸いだった。もはやボールは米国に渡った。ドナルド・トランプ米大統領は口先だけで「金正恩委員長と良い関係を保っている」と繰り返すのではなく、北朝鮮を非核化交渉のテーブルにつかせる具体策を示さなければならない。
金委員長の全員会議「報告」は、毎年1月1日に発表された新年の辞に代わるものと見られる。年末に約1千人が出席した労働党全員会議を4日間も開催したのも、非常に異例のことだ。それだけ北朝鮮が非核化交渉の膠着局面で「新たな道」を模索するという強い意志を示したものと見られる。したがって、「近く新しい戦略兵器を公開する」という金委員長の発言は単なる脅しではなく、遠くない未来に現実化する可能性が高い。専門家によると、新戦略兵器とは多弾頭大陸間弾道ミサイル(ICBM)または新型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の可能性があるという。多弾頭長距離ミサイルであれ、新型潜水艦発射弾道ミサイルであれ、新たな戦略兵器試験は朝鮮半島の軍事的緊張を著しく高め、朝米交渉をさらに困難にすることが明らかなだけに、北朝鮮は挑発的な行動を自制しなければならない。
一方、北朝鮮が「(核)抑止力の強化の幅と深度は米国の立場によって上向きに調整されるだろう」と述べたことは注目に値する。米国の対応次第では非核化交渉に戻る可能性があることを示唆したものと見られるからだ。トランプ大統領はこれに対し、「私は彼(金正恩委員長)が約束を守る人だと思っている。我々は素晴らしい一年を送ることになるだろう」と述べたと、米マスコミが報じた。強硬発言で対応しなかったことは肯定的だが、このような抽象的な言葉だけで非核化交渉を進展させるのが難しいという事実は、一年間の軌跡ですでに確認された。
11月の大統領選挙を控えているトランプ大統領は、その時まで北朝鮮の核問題がさらに悪化しないことだけを望んでいるように見える。しかし、北朝鮮核問題をいつまでも“当たり障りのない言葉”で現状維持していくわけにはいかないことを、今からでも自覚しなければならない。韓国政府が提案した「東アジア鉄道共同体構想」を米国が支持することで、対北朝鮮制裁を迂回(うかい)するなど、より現実的で具体的な策をトランプ政権は示すべきだ。
今回の金委員長の報告で、南北関係に関する言及がなかった点も目を引く。だからといって、韓国政府が手をこまねいている場合ではない。先月、韓中首脳が声をそろえて朝米間の対話モメンタムを強調したのが効果をあげたように、米国の前向きな行動を説得し、北朝鮮を対話に引き出そうとする努力をさらに傾けなければならない。