全員会議の結果に「米国」21回も登場
米国の対北朝鮮敵視政策を指摘し
「敵対的行為と核の脅威の恐喝が増大」されるのに
「経済の成果と福楽だけを見て未来の安全を放棄できない」
経済制裁や韓米合同軍事演習など
米国が「対北朝鮮敵視政策」を止めれば
北朝鮮も態度を変える可能性もほのめかす
金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が2019年最後の日である12月31日、党中央委員会第7期第5回全員会議の最後に、経済制裁と韓米合同軍事演習など米国の「対北朝鮮敵視政策」が続く限り「近く朝鮮民主主義人民共和国が保有するようになる新しい戦略兵器を目撃することになるだろう」と宣言したと、労働党機関紙の「労働新聞」が元旦、1~5面にわたって報道した。朝米関係の行方はもとより、北朝鮮の追加の武力行為も米国の態度変化にかかっていると、“ボール”を米国に渡したということだ。これと関連し、ドナルド・トランプ米大統領は31日(現地時間)、「金委員長は非核化の約束を守ると信じている」とし、挑発的行動の自制を求めた。
「労働新聞」は、昨年12月28日から31日まで労働党中央委員会本部庁舎で行なわれた党中央委第7期第5回全員会議の決定書採択の事実とその内容を報じた。全員会議の決定書の発表をもって新年の辞に代えたのは極めて異例のことだ。1986年、金日成(キム・イルソン)主席が翌年(1987年)の新年の辞の代わりに最高人民会議の施政演説(12月30日)を行った事例があるが、金委員長が内部の政治行事で新年の辞の挨拶に代えたのは、執権後最初の新年の辞を発表した2013年以来初めてだ。
全員会議の決定書で明らかになった北朝鮮の立場は、ひとまず米国主導の制裁がしばらく続くため、これに耐えられるよう独自の力を蓄えなければならないということだ。さらに、国家の安全保障に向けた「国防力の強化」をもう一つの中心軸に掲げた。国防力強化の主軸は「戦略兵器体系」だが、2017年完成を宣言した「核武力」を含め、2019年5~11月、北朝鮮が披露した戦略武器“5種セット”までを網羅する概念とみられる。
今回の決定書をめぐっては、北朝鮮がメッセージをかなり調整したという分析もある。「年末の時限」を前後にして、北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの発射など武力挑発をする可能性まで出ていた状況で、米国の態度によって北朝鮮の進む方向が決まるという“開かれた結論”が出たことは、状況を最悪につき進めることを望まない北朝鮮の立場を示すものと言える。
金委員長が全員会議で下した決定内容は、「対米メッセージ」の発信に重点が置かれている。「米国」が21回も登場する。全体約1万8000字のうち、想定された四つの議題の中で、「造成された国内外の形勢のもと、我々の当面した闘争方向について」という一つ目の議題だけに約1万4800字が割かれた。組織問題(人事)や党中央委員会スローガン集の修正と補充、党創建75周年記念問題などは、残りの約2500字に簡単に盛り込まれた。
金委員長は2019年2月末、ベトナムで開かれた2回目の朝米首脳会談が「合意文」なしに物別れに終わって以来、数カ月間「苛酷で危険な激難」があったにもかかわらず、北朝鮮は「先端兵器」や「戦略兵器」体系の開発など、「自主権」と「生存権」に向けた「国防力の強化」を成し遂げたと述べた。こうした国力の強化が「周辺の政治情勢の統制力を高め」、「敵には甚大かつ厳しい不安と恐怖の打撃」、すなわち抑止力を発揮できるという主張だ。
金委員長は現在の「米国との長期的対立」は避けられない状況であることを認めた。朝米関係を「自力更生と制裁との対決」と規定し、「制裁圧迫を無力化させ、社会主義建設の新しい活路を開くための正面突破戦を強行しなければならない」と強調し、これを政治的、外交的、軍事的に裏付けるための「外交戦線をさらに強化するための方策」、自主権と安全を保障するための「攻勢的な措置」を強調した。これらの措置の具体的な内容をすべて明らかにしたわけではない。ただし、「誰も侵せない無敵の軍事力」、「いかなる勢力であれ、我々を相手にしてあえて武力を使う気になれないようにする」のが目標だとし、近く「(北朝鮮が)保有することになる新たな戦略兵器を目撃することになるだろう」と述べた。表現が曖昧で抽象的だが、「核の抑止力」を意味すると推測することもできる。元政府高官は、「戦略兵器だとしても(核という)具体的に挑発的な発言はしているわけではないが、その可能性をほのめかしている。状況の悪化に負担を感じているようだ」とし、「対外環境が国内経済状況に及ぼす影響も懸念しているようだ」と述べた。ク・ガブ北韓大学院大学教授は、「対内的に長期戦に備えるものと見られる」としたうえで、「中国とロシアの国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁緩和決議案も影響を及ぼしたようだ」と指摘した。
北朝鮮は、自分たちが新しい戦略兵器を開発することになった主な理由が、米国の対北朝鮮敵視政策のためだと強調した。対話局面が造成された2018~2019年、北朝鮮が先制的に核・ミサイルのモラトリアム(中止)を宣言し、豊渓里(プンゲリ)の核実験場を廃棄したにもかかわらず、米国が「大統領が直接中止を公約した」韓米合同軍事演習を依然として実施し、韓国に先端兵器を販売しているだけではなく、10回以上独自制裁を取るなど、「共和国を完全に窒息させて圧殺するための挑発的な政治的、軍事的、経済的悪だくみを一層露骨化」したのに、「守る相手もいない公約に我々がこれ以上一方的に縛られる根拠がなくなった」という論理だ。
特に北朝鮮は、米国が「国家の根本利益に反する要求」を突き付け、「強盗のような態度」を示していると主張している。これは米国が前回のハノイ朝米首脳会談の時から持続的に強調している「大量破壊兵器の凍結▽非核化の最終状態の定義▽ロードマップなどに対する包括的合意」と追加の非核化措置がない限り、制裁の緩和は考えられないという主張を指すものと見られる。こうした措置は、事実上「(北朝鮮に)先に非核化を行うべき」と要求するも同然ということだ。
ただし、北朝鮮は自分たちの戦略兵器開発について“条件”を掲げた。第一に、「米国が対朝鮮敵視政策を推し進めるなら、朝鮮半島の非核化は永遠にないだろう」。第二に、「米国の対朝鮮敵視が撤回され、朝鮮半島に恒久的で強固な平和体制が構築されるまで、国家安全のための必須かつ先決的な戦略兵器の開発を引き続き」行うという具合だ。これは、逆に言えば、米国の対北朝鮮敵視政策が解除された場合は、再び戦略兵器の開発などを中止する可能性があるという意味だ。金委員長は「米国の核の脅威を制圧し、我々の長期的な安全を担保する強力な核抑止力の経常的な動員態勢を常時かつ安定して維持する」とし、「我々の抑止力の強化の幅と深度は、米国の今後の朝鮮に対する立場によって上方修正されるだろう」と付け加えた。すべてが米国の態度にかかっているという点を再確認したわけだ。
金委員長は米国の態度変化を求め、「米国が時間を引き延ばせば延ばすほど、朝米関係の決算を躊躇すれば躊躇するほど」、「お手上げでやられるしかない」「行き詰まり状態に陥る」などと警告した。口先だけで“対話”を掲げ、“時間稼ぎ”をするなという意味だ。金委員長は「経済建設に有利な対外的環境が切実に必要なのは事実だが、決して華やかな変身を望み、これまで命のように守ってきた尊厳を売るわけにはいかない」とし、「衝撃的な実際の行動に移る」ことを予告した。制裁緩和の必要性を認めながらも、米国の制裁による最大の圧迫には決して屈しないという意味だ。韓国政府高官は「今年は危機と機会が依然として共存する」とし、「今年、韓米合同演習を実施するかどうかが試金石になるだろう」と予想した。