日本政府が、福島第1原発の汚染水の処理方法について、海洋放出または水蒸気の大気放出の2案へと処理方向を絞っている。
経済産業省内に設置された汚染水処理対策を議論する有識者小委員会は、福島第1原発汚染水を処理する実行可能な方法として、海洋放出▽水蒸気にして大気に放出▽上記の二つの案を併用、の3案を公表した。最終結論が出たわけではないが、事実上「汚染水の海洋放出」に向かっていると見られる。
特に有識者小委は、これまで検討してきた地下埋設案などは除外した。有識者小委は2016年から汚染水処理方法を検討してきており、同日公表された取りまとめ案は、小委の事務局が整理したものだ。取りまとめ案は、汚染水の放出時期と期間については「政府が責任を持って決定すべきだ」と記すにとどまった。しかし、処理量を考慮すると、少なくとも10年はかかるものと展望している。
日本政府が事実上、汚染水の海洋放出へと舵を切ったことについて、日本国内でも懸念の声が出ている。読売新聞によると、福島県いわき市漁業協同組合の委員長は「海の放出は時期尚早だ。漁業の後継者にも影響を与える」と述べた。日本政府は有識者小委が汚染水処理の日程などについて最終意見を出し、これをもとに基本方針を決めた後、東京電力の株主と国民の意見を聞く手続きを踏む予定だ。
福島第1原発では2011年の放射性物質漏れ事故後、原発に地下水が浸透し、今も放射能汚染水が1日170トンほど絶えず発生している。現在約170万トンが貯水タンクに保存されている。しかし、日本政府は保管できる敷地が2022年末には限界に達するとし、汚染水を海に放出する方向で検討してきた。
日本政府は、多核種除去設備(ALPS)と呼ばれる装置を用いてトリチウム(三重水素)以外の放射性物質(62種)を基準値以下に浄化したため、汚染水ではなく処理水と呼んでいる。しかし、昨年9月に福島第1原発の汚染水のうち、ALPSによる浄化作業が終わった89万トン(全95万トン中)を調査したところ、80%を超える75万トンで依然として排出基準値を超える放射性物質が含まれている事実が明らかとなり、波紋が広がった。