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「ベトナム戦民間人虐殺、韓国国防部の答弁は間違いだ」

登録:2019-09-26 22:38 修正:2019-09-27 07:45
2015年4月6日、国会政論館でベトナム虐殺被害者のグエン・ティ・タンさんが当時の状況を説明している=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 「私たちは何の武器ももっておらず、何の抵抗もしなかった私たちの家族が韓国軍により殺害されるのを目撃し、韓国軍の銃と手榴弾を避けてかろうじて生き残りました。私たちは被害者であり、同時に目撃者であり生存者です」

 グエン・ティ・タンさん(59)は、韓国軍によるベトナム戦民間人虐殺被害者だ。満7歳の時にベトナム・クアンナム省のフォンニィ・フォンニャット村で、韓国軍に家族を奪われ左わき腹に銃弾を受けたが生き残った。その日一日だけで74人の村人が虐殺された。韓国軍は1964年9月から1972年までに31万2千人余りをベトナムに派兵したが、この期間の韓国軍によるベトナム民間人虐殺は80件余り、被害者数は9千人余りに達すると推測される。

 4月4日、グエン・ティ・タンさんを含む103人の被害者は、虐殺被害に対する真相調査と公式謝罪、被害回復措置を要求し、韓国政府に請願書を提出した。「数回の契機があったにもかかわらず、韓国政府は依然としてベトナム戦民間人虐殺の事実を認めておらず、謝罪や名誉回復のための措置もまったく取られていない」ということだ。ベトナム戦民間人虐殺被害者のベトナム人が、大韓民国の国家機関に提起した最初の請願だった。

 公式回答期限の90日を遥かに過ぎた今月9日、国防部が一歩遅れて請願に対して答弁した。「国防部の保有資料では、韓国軍による民間人虐殺関連内容は確認できず、韓国側の単独調査でなくベトナム当局との共同調査が先行しなければならないが、韓国とベトナムの政府間共同調査条件がまだできていない状況」という内容だった。

 市民社会団体は反発した。礼を尽くした種々の表現にもかかわらず「韓国軍がなぜ自身の家族を殺したのか、なぜ私を撃ったのかを明らかにしてほしい」という被害者の要求を、韓国政府が公式に拒否したということだ。韓国-ベトナム平和財団、ベトナムと韓国を考える市民の会など60の市民社会団体は26日午前、ソウル市龍山区(ヨンサング)の国防部前で記者会見を行い、政府がより積極的に歴史問題の解決に乗り出さなければならないと要求した。

1968年2月12日、ベトナムのフォンニィ・フォンニャット村の悲劇を、米軍海兵隊のボーン伍長が撮影した=資料写真//ハンギョレ新聞社

 これらの団体は、国防部の答弁の問題点を大きく二つ指摘した。第一に、「ベトナム戦民間人虐殺事件は戦争犯罪の性格を帯びる事件なのに、このような大規模戦争犯罪が韓国軍の戦闘史料にそのまま記載されている可能性はきわめて低い」と指摘した。国防部が「保有している内容を調べたが虐殺の事実はない」と主張するのは、国家犯罪に対する完全な理解のない答弁だという話だ。しかも、国家情報院が裁判所の判決にもかかわらず、3年にわたりベトナム戦民間人虐殺事件の調査資料の“目録”さえ公開していなかった状況で、国防部が「関連記録がない」と回答したことを信頼できないという主張も出てきた。これらの団体は、この他にも韓国政府がベトナム当局との共同調査以前に韓国政府が保管している文書、米国が保管している文書を対象に、1次的な真相調査を進めることは十分可能だと主張した。

 これらの団体はまた、韓国政府に対し「被害者中心主義」原則に従えと要求した。「日本の植民地時代の不法行為に対して責任を問う中で堅持する被害者中心主義が、なぜベトナム戦争時代に韓国軍により被害をこうむったベトナムの人々には副次的なことになるのか」と糾弾した。それと共に、少なくとも請願した103人が述べた事件に対して民間の専門家が参加する政府公式調査機関の設置▽調査の結果、韓国軍の違法行為が存在したと見る可能性が確認された場合、被害者に対する公式謝罪、および該当地域での慰霊事業など、被害回復措置の実施などを政府に要求した。

イ・ユジン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/911019.html韓国語原文入力:2019-09-26 13:47
訳J.S

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