1971年7月9~11日、ヘンリー・キッシンジャー米ホワイトハウス国家安保補佐官が中国を訪問し、中国の周恩来首相に会った。キッシンジャー氏はパキスタン訪問の際、腹痛を装って、極秘裏に北京入りし、共同でソ連に対抗するために米中和解に進む案を周首相と話し合った。この訪問は翌年、リチャード・ニクソン米大統領の訪中や1979年の米中国交正常化、1989年のソ連の没落を経て、世界唯一の超大国米国の登場とそれに続く中国の浮上へとつながり、世界を完全に変えた。
ドナルド・トランプ大統領の登場は、この流れを逆戻りさせた。彼の当選直後2017年の初めに、米国では「逆ニクソン(reverse Nixon)」、「逆キッシンジャー」などの用語が流行った。今回は、米国がロシアと手を組んで中国を追い込もうという構想だった。しかし、ロシアが米大統領選挙に介入し、トランプの当選を助けたという「ロシアスキャンダル」が起こり、トランプ・プーチン同盟は実現しなかった。結局、ロシアのプーチン大統領と手を結んだのは、中国の習近平国家主席だった。中国とロシアは、もはや準軍事同盟を形成し、米国に対抗している。今月23日、独島上空で行われた中ロの合同飛行訓練とロシアの戦闘機の領空侵犯はその結果だ。
米国は「インド太平洋戦略」という網で中国を包囲しようとしている。2017年11月にトランプ大統領が初めて公開した同戦略は、日本の安倍晋三首相のアイデアとして知られる。安倍首相は、対中国牽制にインドを引き入れ、韓国の地位を低下させようとした。同戦略は、初期には中国の一帯一路(中国とユーラシア諸国を連結する経済圏構想)に対抗する経済連合の性格が強かったが、今年6月1日、中国とロシアを「現状変更の脅威」と明示した米国防総省の「インド太平洋戦略報告書」が発表されてから、軍事戦略の性格が強くなった。東アジアで影響力を広げている中ロと覇権を防御しなければならない米国の軍事的緊張が高まるのは必至だ。
数十年間、朝鮮半島周辺の秩序を形作ってきた体制が、最近すべて崩壊している。1971年から続いた米中和解の秩序は、最近、米中の貿易・技術覇権戦争によって終わった。1965年の韓日基本条約や韓日請求権協定で作られた「65年体制」は、安倍首相の韓国に対する経済報復で崩れている。これとともに、米国の覇権の下、韓国と日本を結び付けた「サンフランシスコ体制」(1951年サンフランシスコ講和条約以降、米国が日本を核心パートナーとし、冷戦時期東アジアを管理した体制)も揺れている。
日本は8月2日、韓国をホワイト国(安保上の輸出審査優遇国)から除外する輸出貿易管理令改正案を閣議で処理するとされる。今月初め、半導体生産用の3つの主要な材料の輸出を規制して韓国を揺るがした日本が、もはや事実上、韓日貿易の全分野に影響を及ぼす約1000品目の輸出を制限できるよう、法を改正することになる。韓国を安保上信頼できない国とし、輸出規制に乗り出したという点で、日本は韓日関係を後戻りできない道へと追い込んでいる。ただし、ホワイト国を除外した後も、シンガポールや台湾などが活用する「非ホワイト国向けの一般包括許可」を韓国も活用できるか、品目別許可方法の告示を通じて韓国産業に核心的な品目をこの一般包括許可対象から除外するかなどによって、韓国企業が被る打撃は変わる。日本は、韓国の反応と世界の世論などを見極めながら、輸出規制の具体的なレベルを決めるだろう。
新しい変動要因となるのは米国の動向だ。韓日の対立とロシアの独島領空侵犯などに対する米当局者たちの態度は、“リップサービス”にとどまっている。この過程で、24日に韓国を訪問したジョン・ボルトン米国家安保補佐官は、在韓米軍の防衛費分担金の大幅引き上げと韓国海軍のホルムズ海峡への派兵などを要求する明細書だけを残し、帰国した。
米国は韓国をはじめとするこの地域の国に、インド太平洋戦略に積極的に参加し、中国を牽制する軍事的役割を果たすよう圧力をかけている。しかし、同盟の役割は果たさず要求だけが多い米国に、どれほど多くの国が協力するかは不透明だ。安倍首相でさえトランプ政府を信じ切れず、昨年の訪中後、中国との和解を緻密に推進しながら、安米経中(安保は米国、経済は中国)の道へと進んでいる。米日貿易協定を通じて、米国産農水産物の関税引き下げなど、日本の大幅な譲歩と防衛費の増額を圧迫するトランプ政府への対応だ。
韓国も米国だけを見ているのではなく、中国やロシア、日本などとの賢明かつ積極的な外交に乗り出さなければならない。ボルトン補佐官の“明細書”と安倍首相の貿易報復を、“米国の役割が壊れた世界”という現実に気づき外交安保の枠組みを完全に組み直す覚醒のきっかけにしなければならない。