本文に移動

[寄稿]このシステムはどの政権が変えるのだろうか

登録:2019-04-09 23:10 修正:2019-04-10 07:12
ソウル市江南区狎鴎亭洞のある不動産屋の前を市民が通り過ぎている/聯合ニュース

 文在寅(ムン・ジェイン)政府は「労働尊重社会」を掲げたが、昨年の国際労働組合総連盟(ITUC)の国際労働権利指数調査で、韓国は5年連続で最下位等級を受けた。すなわち、韓国は「労働基本権が保障されていない国」、すなわち労働権が守られるという保障のない国であり、ラオス、サウジアラビア、トルコ、フィリピンなどと同じ部類に属している。実際、韓国の労組組織率や団体協約適用率は、経済協力開発機構(OECD)加盟国中でほとんど最下位水準に留まっている。

 先日、大統領の口であるキム・ウィギョムが在職中に賃貸店舗投資をして国民の批判を受け退任した。歴代政府で住宅政策の核心的役割を受け持ったチェ・ジョンホ国土交通部長官候補者は、国土部の公務員として仕事をしながらギャップ投資、特別分譲当選などで莫大な収入を得ていたことが明らかになった。チョ・ドンホ科学技術情報通信部長官候補者も子供を“皇帝留学”させ、不動産投機疑惑を受けた。

 「労働権最下位」と「不動産投機」は別のことのように見えるが、実際はコインの両面だ。教育と不動産への熱病は、労働市場での安定と幸福、そして社会福祉で老後保障がされない現実を逆に表現している。労働者の無権利状態、危険な産業現場で死んでいく非正規職青年たちの姿は、子供の教育に死活をかけるよう誘導する強力な信号だ。これは、労働者の権利向上と再分配に対する社会全体の無関心として現れる。労働が尊重され、社会的安全網が構築されれば、中下層までが子供の教育と不動産に“狂う”理由がない。

 すなわち、学閥資格証、基礎資産の蓄積を通した不動産投資機会の獲得は、“甲”になるための関門であり、ここに入れなければ建物オーナーと雇用主の横暴の下“乙”の境遇で苦労しながら暮らさなければならず、その子供も結局は非正規職労働者として生き、恋愛と結婚をあきらめる可能性が高い。それで「スカイ(SKY)キャッスル」への進入のために、私教育市場とアパート分譲権転売という戦場で戦うことになる。私教育市場は、「労働者にならない」ための戦場で、アパート分譲権転売は“キャッスル進入”のための戦場だ。

 このような戦争は、70年代に作られた。開発独裁は、労働者の権利主張を抑圧すると同時に、各種の企業向け特別優遇と低い租税率、個人貯蓄と教育機会を通した家族単位の投資を誘導した。住居、教育、医療、老後の福祉は、家族責任で処理させ、開発情報に容易に接近できた公職者、エリート層の多くは家を売買し続けて中上流階級になった。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長//ハンギョレ新聞社

 金大中(キム・デジュン)政府以後に大きく増えはしたが、依然として韓国は国内総生産(GDP)に占める公共社会福祉への支出比重がOECD最下位水準だ。“民主化”勢力も、労働者の集合的権利増進を通した所得分配、租税負担率向上と福祉支出の画期的拡大を基礎に、中下位階層が教育と住居などの再分配領域で私的負担を減らせるシステムを構築しようとするよりは、スカイ(SKY=ソウル大、高麗大、延世大)卒業証書という文化資本と不動産に投資できる基礎資本をテコに“キャッスル”に進入しようとした。

 ろうそく集会が大衆の暮らしを変えられなければ、それは失敗した革命になるだろう。開発独裁、財閥主導成長、“教育-不動産家族投資システム”改革は、1987年民主化以後の最大の時代的課題だったが、金大中・盧武鉉(ノ・ムヒョン)両政府も経済論理に押されて、結局は李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)の退行を呼び起こしてしまった。その結果、学校は相変らず労働者の“権利”と公共的責務の代わりに、入試“成功”だけを主に教えるので、自身が労働者という自覚さえない青年たちは“投資家”の隊列に加わろうとして、それが難しいことが分かれば“小確幸(実現可能な小さい幸せ)”の哲学に共感することになる。

 一家の家長になった公職者やエリートたちが、投資情報に接しても無視することは容易でないだろう。しかし、そのシステムを活用して大きな利益を得た人が権力まで占めるならば、国民はそんな風に生きなければならないという信号と解釈するだろう。そして労働尊重と包容社会はむなしい声となる。

 もちろん数十年にわたり累積したこのシステムを変えることは容易でないだろう。しかし、2016~2017年のろうそく集会は、朴槿恵(パク・クネ)の権力壟断に対する怒りとともに、不当に獲得された富と地位が「弱者の権利を踏みにじる」制度的武器にならないようにしようとしたのではなかったか?高い国民的支持を受けて発足した「ろうそく政府」が、こうした教育-不動産家族投資システム改革を試みないで、逆にそのシステムをすばしこく利用して成功した人々を要職に抜てきするならば、いったい私たちはいつどんな政権にシステムの変化を期待できるのか?

 青年と国民の暮らしが変わらないのは、経済が沈滞しているためではない。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/889366.html韓国語原文入力:2019-04-09 18:52
訳J.S

関連記事