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[寄稿]人もいないのに鉄道だけ敷いてどうなる?

登録:2019-02-12 21:57 修正:2019-02-13 08:37

 少子化・高齢化、亡国的入試戦争、住居貧困なども20年におよぶ国家“非常事態”であり、首都圏と地方のすべてを含む韓国社会の持続可能性に関連した緊急課題であるが、こうした事案は“票”につながらないという理由で“緊急措置”の対象に含まれず、事態は悪化する一方だ。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長//ハンギョレ新聞社

 政府は国土均衡発展と地域経済活性化のために22の事業、約20兆ウォン(2兆円)規模の予備妥当性調査免除事業を発表した。文在寅(ムン・ジェイン)政府は、均衡発展のために地域の革新クラスター造成に大きな力を傾けている。ところで文在寅政府も、李明博(イ・ミョンバク)政府が地域経済活性化という名目で推進した開発主義基調の事業には予備妥当性調査免除政策をそのままに維持している。

 “予備妥当性調査”免除は、一種の非常事態に対処する緊急措置だ。国家的に緊急に要求される事業に対して、経済性と手続きを省略して推進する一種の政治的決定だ。地域均衡発展と地域経済活性化は、緊急措置を取るべき領域であることは事実だ。ところで地域崩壊だけが非常事態であり緊急措置の対象であろうか?少子化・高齢化、亡国的入試戦争、高い自殺率、住居貧困も20年におよぶ国家“非常事態”であり、首都圏と地方のすべてを含む韓国社会の持続可能性に関連した緊急課題であるが、こうした事案は“票”につながらないという理由で“緊急措置”の対象には含まれず、事態は悪化する一方だ。すなわち、地域の崩壊は地域だけの問題でなく事実上国家の持続可能性の問題、首都圏の生活の質の低下と実は同じ現象だ。財閥を後押しし、ソウルの住居価格を守り、首都圏の重要大学を後押しした結果がこのように現れたのだ。

 ところで、鉄道、空港、道路建設に予備妥当性調査を免除すれば、地域均衡発展ができるのだろうか?李明博政府の4大河川事業に注ぎ込んだお金は、どこに住む誰に流れ込み、どの程度の地域雇用を創り出したのだろうか?社会間接資本投資は、果たして地域経済を活性化し首都圏集中を緩和したのか?空っぽの空港、車が通らない道路を維持するのにかかる費用は誰が負担するのか?首都圏集中を抑制する政策を持たずに地方の発展が可能だろうか?

 皆が知っているように、地域の崩壊は首都圏にお金と人が集中するためだ。十分に青年エクソダスと呼べるほどの現象が、20年にわたり進行中だ。働き口と教育が最も重要な要因で、公共サービスと文化の不均衡もエクソダスの重要要因だ。高速鉄道と道路が敷かれれば、ソウルの人が地方に下っていくのが楽になるだけで、地方の中小病院、デパート、店は門を閉める。文在寅政府のスタートと共に始まったソウルの不動産価格暴騰で、地域社会の金持ちがソウルのアパートの買い占めに出たので、地方の金脈はさらに乾いた。

 すなわち、数百兆ウォン(数十兆円)の地方のお金が首都圏に吸い込まれ、働き口はほとんど首都圏のみで手に入れられることを考えれば、予備妥当性調査免除20兆ウォンというお金を地方に注ぎ込んでも“焼け石に水”に過ぎないだろう。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府以後の公企業の地方移転の趣旨は良かったが、革新都市にはアパートばかりが畑の上にぽつんと立っている。今、韓国の地域社会は青年が生きられない所で、若い夫婦が子を産んで育てにくいところだ。

 地方で優秀で創意的な人材を手に入れることができるならば、企業も地方に降りて行かないだろうか?大学と企業が革新産業中心のクラスターを構築し、地方の実業高校、理工系大学生に無償で革新創業教育をさせ、その後の就職時に恩恵を与えれば、地域の青少年が強いてソウルの大学に上がってくるだろうか?良質な公共病院があり、帰村支援政策を展開すれば、青壮年も帰省しないだろうか?韓国の首都圏集中は、主に教育と働き口のために生じたことなのに、教育問題、特に大学の質的向上問題には一つも触れないで地域社会が生き返るだろうか?

 ろうぞくの力によって執権した文在寅政府は、過去の政府とは質的に異なる地域政策を展開するだろうと期待した国民の失望が大きい。地域の均衡発展を開発主義土建経済方式で進めるのは、国家を新しくすることとは距離が遠い。しかも、お金と人の首都圏流入を事実上助長する政策を展開して均衡発展を語ることは、一層つじつまが合わない。

 こうした事業に予備妥当性調査を免除をするのは、所信ある公務員と専門家たちを説得し難い。当面の選挙では得するかも知れないが、さらに大きな荷物を残す可能性が大きい。最も大きな問題は、まさに政界と公権力に対する不信だ。そして土建事業は必ず深刻な腐敗、莫大な取引費用、葛藤処理費用を産む。

 青年たちが地方に降りて行くようにする政策でこそ成功できる。革新中小企業支援、高水準の地域専門大学と4年制大学育成、産学連係、良い公共インフラの構築なしでは、首都圏へ向かう青年たちのエクソダスは続くだろう。

キム・ドンチュン聖公会大NGO大学院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/881863.html韓国語原文入力:2019-02-12 19:12
訳J.S

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