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北朝鮮の青年たち「核兵器は誇らしいが、飢えて死ぬかもという危機感」

登録:2019-02-26 22:26 修正:2019-02-27 08:03
2017年4月13日、平壌の黎明通り竣工式が終わった後、住民たちが新たに建設された高層アパート団地を見物している//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮で幼年期を過ごし、後に脱北した20~30代の青年たちにとって「核兵器は誇りであり自負心の象徴」だが、同時に彼らは「対北朝鮮制裁により飢えて死ぬかもしれない」という危機感を感じていることが明らかになった。脱北青年10人にインタビューした結果だ。北朝鮮で1990年代の“苦難の行軍”前後に生まれたり幼年期を過ごした世代は、いわゆる“市場世代”または“8090世代(1980~1990年代に生まれた世代)」と呼ばれる。

 キム・ウンジュ韓国女性政治研究所長は26日、韓国保健社会研究院で開かれた「第2回統一社会保障セミナー」でこのような内容を入れた「都市で生活する子どもたち-平壌に暮らす8090世代の生活と意識」というタイトルの報告書を発表した。報告書は、平壌と南浦(ナムポ)、会寧(フェリョン)などの大都市と、国境線付近の小都市に住んでいた20~30代の脱北青年10人(男性5人・女性5人)を深層インタビューした結果を含んでいる。

 報告書によれば、都市の8090世代にとって核兵器は「北朝鮮を米国の脅威から守れる唯一の道」であり「最後の砦」のようなものだった。だが、対北朝鮮制裁によって銀行取引が遮断され、労働者の外国派遣の道も閉ざされ、平壌では「飢えて死ぬかもしれない」という危機感が広がったという。特に、対北朝鮮制裁は「裕福な階層や貧しい階層よりは、少額の投資金を持って市場に投資した中間階層に最も大きな被害をもたらした」。

 北朝鮮で“苦難の行軍”以後に市場が拡大する姿を直接目撃した8090世代にとって、こうした経済的変化は一層敏感に受けとめられたとみられる。1980年代と1990年代に生まれたいわゆる“市場世代”は、両親とともに幼年期に経済的窮乏を体験し、成人になった彼らの前には資本主義社会と特に変わりがない“市場”が置かれた。彼らは、市場でさまざまな人生経験をする。キム・ウンジュ所長は「8090世代にとって北朝鮮の現実は、社会主義と資本主義の間のどこかに位置しているようだ」と解釈した。配給制の崩壊と市場の登場は、北朝鮮の住民たちにも資本主義の分配メカニズムである“市場”なしには生存できない社会になったという認識をもたらしたということだ。現在の北朝鮮には約500カ所の公式市場が存在する。

 金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に対する彼らの態度は、きわめて好意的だったという。金委員長は“エピソード”または“美化”政治のおかげなのか、北朝鮮の住民たちに「暖かく包容的で信頼できる指導者」という印象を植え付けたという。インタビューに参加した青年たちは、金正恩の「恐怖政治」に対しては「権力層だけを対象にしたもので、北朝鮮の住民とは関係ない」としながら「(親戚たちが)金正恩の権力を脅かすので、避けられない行動だった」と擁護する態度を見せもした。

 キム・ウンジュ所長は「(青年たちは)北朝鮮は独裁国家だが、非正常国家ではないと抗弁する。北朝鮮の対住民相互監視システムは、外部世界からは非正常的に見えるかもしれないが、北朝鮮の住民たちには正常で完ぺきだ。したがって、北朝鮮社会内部での変化は不可能で、変化は唯一、金正恩国務委員長によってのみ可能だろう」と指摘した。

ファン・イェラン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/883612.html韓国語原文入力:2019-02-26 14:42
訳J.S

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