自由韓国党が尋常でない。18日午後、大邱(テグ)・慶尚北道合同演説会場も、キム・ジンテ候補を支持する太極旗部隊が大手を振るった。「朴大統領を酷い目に遭わせ、キム・ジンテまでいけにえにするつもりか」、「キム・ビョンジュン、クォン・ヨンジンは辞退せよ」という横断幕が登場した。キム・ビョンジュン非常対策委員長には「お前らの党に行け」という絶叫と悪罵が投げつけられた。
今後に残った合同演説会の雰囲気も似たものになりそうだ。17日に生中継されたインターネット討論会のリアルタイムコメントでもキム・ジンテ候補に対する支持意見が最も多かった。
こうした流れが実際に票につながれば、27日の全党大会でキム・ジンテ候補がファン・ギョアン、オ・セフン候補を押し出して当選する波乱が起きるかもしれない。
キム・ジンテ候補は、1980年の「光州(クァンジュ)5・18」に北朝鮮軍特殊部隊が介入したと主張する極右論客のチ・マンウォン氏を国会に招請した当事者だ。彼が代表に当選すれば、チ・マンウォン氏の主張を自由韓国党が追認することになる。
いったいどうしてこんなことが起きているのだろうか。釜山地方区のチャン・ジェウォン議員は「自由韓国党の“急進右傾化”は保守の没落を意味している」として、次期総選挙と大統領選挙での敗北を強く警告した。相当に一理ある憂慮だ。しかし、いったいなぜ自由韓国党は“急進右傾化”するのだろうか?
自由韓国党議員の「5・18妄言」により、世論調査で自由韓国党の支持率が下落したという報道が続いている。「5・18妄言」に失望した国民が、自由韓国党への支持を撤回したという解釈だ。本当にそうだろうか。
内容を覗いて見るとちょっとおかしい。地域別では「大邱・慶尚北道」、年齢帯別には「60代以上」の支持率が大幅に下がった。「大邱・慶尚北道」と「60代以上」は、いわゆる保守の強力な基盤だ。「5・18妄言」に対する失望ではなく、反対に「党指導部の生半可な謝罪」に対する失望ではないか?
民意は時々非理性的に動く。1992年の大統領選挙を控えてさく烈した草園河豚料理店事件の時、嶺南(慶尚道、釜山、大邱、蔚山地域)の民意がそうだった。27年が過ぎた。首都圏の大多数の有権者は、もはや地域感情に敏感ではない。
しかし「大邱・慶尚北道」と「60代以上」は、地域感情に敏感な面もある。正確な民意は分からない。だが、とにかく何か「おかしなこと」が起きていることだけは間違いない。
「おかしなこと」は、自由韓国党組織強化特別委員会が公開オーディションを通じて組織委員長に選出したチョ・ヘジン、リュ・ソンゴル元議員に対して、市道党が復党を許さなかった時から始まった。市道党が中央党の決定に異議を提起したのは前例がないことだ。
実際には自由韓国党だけではない。共に民主党の党員資格審査委員会は、無所属のイ・ヨンホ、ソン・クムジュ議員の復党および入党申請を受け入れなかった。党員たちの反対世論のためだ。かつて党の指導部が事前整地作業を経て無所属議員を迎え入れていた慣行が崩れたのだ。
共に民主党で熱心な支持者たちの感情的対立から始まった党内葛藤が静まらないのも、同じ理由で説明できる。イ・ジェミョン知事と京畿道知事候補競選を闘ったチョン・ヘチョル議員の支持者が、イ・ジェミョン知事はもちろんイ・ヘチャン代表まで攻撃した。
チョン・ヘチョル議員が党内葛藤を放置したのではないかという疑いをかけられた。チョン・ヘチョル議員は「全く事実ではない。自発的に動く党員と支持者を、私には説得する方法がない」と話した。以前なら想像もできない現象だ。
自由韓国党と共に民主党で同時に起きた「おかしなこと」の背景には、共通点がある。党指導部や国会議員がもはや党員や支持者を統制したり説得できなくなったということだ。
逆に、党員と支持者の世論が党指導部と国会議員の言動と行動にますます強い影響を及ぼしている。
政党の主人が変わっている。党論を決める主体が総裁から最高委員に、最高委員から国会議員に、国会議員から党員たちに、党員たちから支持者に移っている。
政党内部の権力が下へ移動することは、党内民主化の次元で肯定的な面がある。しかし、政治的に訓練されていない支持者は、世論操作と扇動に脆弱だ。それでなくともニュースの偏食で確証偏向がますます強まっている。放置すれば対話と妥協の政治は足を踏み入れられなくなる。
権力の分散は情報化時代の自然な流れだ。誰にも止められない。政党でもこれを現実として受け入れ、適応しなければならない。だが、世論操作と扇動は遮断しなければならない。ともすれば“急進右傾化”や“憎悪商業主義”で民主主義が崩れるという代価を支払うことになりかねない。本当に難しい課題だ。