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[寄稿]協力的非核化の成功条件

登録:2018-10-01 05:59 修正:2018-10-01 08:19

朝米両国は、これまでの膠着局面から教訓を得る必要がある。首脳合意と実務交渉の違いもあるが、さらに重要な理由がある。「協力的非核化」を合意しておいて、依然として「強圧的非核化」の慣性から抜け出していないからだ。強圧の慣性が協力のうしろ足を引っ張れば、前に進むことは難しい。

 南北首脳会談で膠着を解決し、韓米首脳会談で理解を高めた。南北米いずれも「完全な非核化」の目標を再確認しており、北朝鮮は「トランプ政権1期目の任期中」という時限を提示した。これから目標に向かって走れば良い。越えなければならない山は少なくないだろう。優先順位を調整して技術的な方法に合意することも容易ではなかろう。ただし、それに先立って、より重要なことがある。認識の転換だ。非核化は、これから強圧から協力に転換しなければならない。

 朝米両国は、交渉を再開するにあたって、この膠着局面から教訓を得る必要がある。首脳合意と実務交渉の違いもあるが、さらに重要な理由がある。「協力的非核化」を合意しておいて、依然として「強圧的非核化」の慣性から抜け出していないからだ。これからも同じだ。強圧の慣性が協力のうしろ足を引っ張れば、前に進むことは難しい。非核化を実現し、朝鮮半島の冷戦秩序を解体できるこの歴史的機会を「哲学の貧困」で失うわけにはいかない。

 協力は戦術ではなく戦略であり、技術ではなく哲学だ。協力は一方の努力で成し遂げられるものではなく、相互関係によって成り立つ。敵対関係では持続可能な協力は不可能だ。北朝鮮の非核化は他の国の非核化事例とは異なる。核開発が比較できないほどのレベルに達しているため、当然非核化に必要な信頼の量にも差が出ざるを得ない。「協力的非核化」のためには関係の変化に対する朝米両国の確固たる認識が必要であり、行動の変化も伴わなければならない。

 協力はやり取りするものだ。(相手に)与えずには何も得られない。「一方的な譲歩」だと批判する「何も与えてはならない論」の核心は、「協力の拒否」だ。相互関係の変化を否定する一方的な力の論理であり、冷戦秩序を守ろうとする現状維持の論理だ。非核化の方法論も同じだ。北朝鮮はすでに「非核化の実践的措置」を取っている。極めて初歩的なものかもしれない。しかし、それが初歩的なら、初歩的な相応措置で協力の水準を高めれば良い。

 何をするのかについても同じだ。「言葉対言葉、行動対行動」は協力の基礎である。もちろん、やり取りする過程が必ず「等価」である必要はない。機械的相互主義は不信の反映だ。信頼を築くには「柔軟な相互主義」が必要だ。現在の制裁状況でも韓米両国が取れる信頼の実践的措置は多い。出し惜しみする理由はない。

 強圧から協力に転換する入り口に「制裁」が立ちはだかっている。「制裁の目的」は何か?戦略物資の流入を防ぎ、拡散を防止して、北朝鮮の態度変化を促すことだ。少なくとも「国連決議案」において、制裁は「外交の復元」のための手段だった。今は外交の時間ではないのか。制裁の目的を達成したら、制裁の強さも変わらなければならない。それでも制裁を維持すべきだと主張するなら、それは制裁の目的が異なるものにあるという意味だ。

 米国は「制裁の逆説」を考えなければならない。一部では制裁の維持が交渉に有利だと主張する。それでさらに制裁を強化しなければならないと要求する。もちろん、制裁は北朝鮮経済に否定的影響を及ぼす。貿易の減少が国内経済に響かないはずはない。しかし、制裁の強化と北朝鮮の非核化決定は別問題だ。北朝鮮は「非核化に向けた核武装」を図り、核武装の完成を機に交渉に乗り出した。制裁の強化と非核化の決定時期が重なるものの、因果関係が不十分だ。解釈する方式によってはいくらでも他の結論を出すことができる。

キム・ヨンチョル統一研究院院長//ハンギョレ新聞社

 制裁には(肯定的影響よりも)否定的影響の方がはるかに大きい。米国が制裁を維持すれば、結局、北朝鮮は米国の意図を疑うだろう。疑いは不信を招き、不信は非核化の速度を遅らせる。強圧的非核化の「失敗した仮定」が「協力的非核化」の成功を妨げている。制裁の名分が弱くなると、当然国際的な協力も緩む。国連ではすでに対北朝鮮制裁をめぐる立場に違いが生まれている。果たして今後、国際社会の合意を維持することができるだろうか。

 北朝鮮は核から経済への転換を選択した。転換を促進した要素がまさに制裁の緩和だ。経済発展のためには、国際社会に門戸を開けなければならない。改革と開放はコインの両面だ。国際社会は北朝鮮の決断を歓迎し、これを朝鮮半島における冷戦秩序を解体する機会にしなければならない。北朝鮮と米国は「過去の失敗を繰り返さない」ことに合意した。もう、強圧の論理から離れよう。過去の失敗と果敢に決別する時だ。

キム・ヨンチョル統一研究院長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/863848.html韓国語原文入力:2018-09-30 19:05
訳H.J

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